Boar Hunter 猪の伝承 1

プレイログ

フィンスターヴァルドの暗き森を徘徊する黒い影。
半分は人間、半分は猪、その正体は謎に包まれている。
装飾が施された銀の槍は、粗暴な獣の牙としてはあまりにも高貴すぎる。
剛毛に覆われた首にかかる金のメダルが、彼の人間の血筋を示している。

Boar Hunterは、タロットを用いて物語を紡ぐソロジャーナルです。システムは「Princess with a Cursed Sword」と「Badger+Coyote」を合わせたものです。
半猪・半人の奇妙な存在である主人公は、人と獣の境界をさまよいながら、暗い森で危険な狩りに興じます。

キャラクター作成

◆ 彼はどうやって半分猪、半分人間になったのか?

わたしはかつて、英雄の乗騎として選ばれた誇り高き”騎猪”だった。
英雄が敗れたとき、わたしの命も潰えるはずだった。だが、英雄を打ち倒した忌まわしき悪魔は、死した英雄の誇りと、わたしの忠誠にもっとも悍ましき罰を与えた。
英雄の肉がわたしの毛皮の下に埋め込まれ、醜悪で不格好な人の姿に近づいていくのを、わたしはただ見守ることしか出来なかった。
こうして、わたしの呪わしき生が始まった。

◆ 彼はなぜ人間を狩るのか?

英雄なき世界で、悪魔を崇める弱き心は猖獗を極めている。
この肉体に英雄の魂はなく、わたしが握る槍に清廉なる英雄の技は宿っていない。
それでも、わたしは悪魔を讃え、悪事に手を染める人間たちを葬り続ける。それこそが、わたしにできる英雄への唯一の弔いであると思ったからだ。
今、このフィンスターヴァルドには3人の悪魔司祭が潜んでいるという。かれらの喉を掻き切り、穢れた血を大地に流すことこそが、今のわたしのなすべき唯一のことだ。

◆ 彼のどの部分が猪なのか?

英雄の首は斬り落とされ、持ち去られた。そのため、頭部は完全に本来のわたしの……猪のものだ。首から下はほぼ人の形だが、まばらに毛皮で覆われ、両足は蹄になっている

◆ 彼は話すことができるか?

長き生を生きる中で、たどたどしくはあるが話せるようになった。知性なら大抵の人間より上という自負があるゆえに、この不自由な言葉で侮られるのは忸怩たる思いがある。

旅の記録

Boar Hunterでは、主人公の猪男(ボアハンター)がフィンスターヴァルドをさまよう記録を、残酷な童話を記すかのように三人称でつづります。
フィンスターヴァルトのいくつかの場所で、ボアハンターは村人、障害物、狩猟団、あるいは自身の獲物に遭遇します。必要なときは「課題への直面」を行い、その遭遇によって起きたことを記録します。
「課題への直面」には、トークンの数字を参照します。トークンの数字は低いと獣に、高いと人間に近づきます。初期値は3か4を選ぶことができます。今回は3から開始します。

ボアハンターは、「3人の標的」を全て殺害するか、トークンが1もしくは6に達することで終了します。

1:Six of Wands

分厚く葉をつけた重たい梢から、暗い月光がわずかに流れ込んでいます。
腐った落ち葉が重なる地面に伏せた猪男の尖った鼻面が、刃物のような下生えを掻き分けて匂いを確かめ、ふんふんと動きました。
猪男……ボア・ハンターは立ち上がり、銀の槍の石突をどん、と地面に突きました。

「人のにおいがしない。連中はこっちには来なかったようだ」

くぐもった声でもごもごと言い、ボア・ハンターは歩き続けます。
地面の上で蹄に打ち抜かれてねじ曲がった小枝の下から、潰れかけた毒虫が這い出し、触角をゆらゆらと揺らしているのを、ボア・ハンターはついに見もしませんでした。

2:Two of Coin

ボア・ハンターの目の前を、一本の矢がすさまじい勢いで飛び去り、大木の幹に深々と突き刺さりました。
その一瞬でボア・ハンターは素早く獅子を用いて地に伏せ、銀色の瞳をぎらぎらと光らせて周囲の影に神経を張り巡らせます。

「ボア・ハンターだ……」

押し殺した囁きが、鋭い耳に届きます。声は高く澄んでいて、子供といってもいいほどの歳のようです。かれが、矢を射かけてきたのでしょうか?
ボア・ハンターは腹の下に潜り込ませるように槍を構え、じり、じり、と脚に力を蓄えます。

次の矢が放たれた瞬間に、ボア・ハンターの鋭い洞察は完全に射手の場所を見つけてしまうでしょう。

そう思った瞬間、弦が震える音が響き、矢が射ち出されす。
ボア・ハンターは蛇のように雑草に潜り込んで数歩の距離を一瞬で跳び、突き出した槍でその人物の着ている服を巻き込むように貫いて樹の幹に縫い留めてしまいました。

「うわあっ!」

少年の悲鳴が響き渡ります。ボア・ハンターは槍を突き出したまま、唸り声交じりの低い声で吐き捨てました。

「いかにもボア・ハンターだが、だからといって矢を射かけられる筋合いもないな」

3:Queen of Wands

ボア・ハンターは槍に手を掛け、少年に呼びかけます。

「わたしを見たこと、軽々には口にするまいな」
「あっ……」

少年の喉からか細い声が漏れ、髪をまとめていた帽子が落ちます。女の滑らかな肌に緩やかに波打つ長い髪がこぼれ、怯えた光が揺らぐ瞳に宿ります。

「小娘か……」

猟師の装いで隠していましたが、それは年頃の娘のようでした。ボア・ハンターは烈火のようにぎらつく瞳を娘に向けて、冷ややかに言いました。

「きさまのような小娘がこの暗い森に身を潜め、狩りをすること、何か事情があってのことだろう。だが、わたしにはきさまらの事情で殺されてやるつもりはないのだ。次に同様のことがあれば、その細首ねじ切ってくれよう」

槍が抜かれ、少女の軽い体が腐った落ち葉の上に投げ出されます。ボア・ハンターはぼろぼろの外套を重たく翻し、銀の槍を携え、暗闇に消えていきました。

4:Seven of Swords

大きな足跡が濡れた地面に残っているようです。ボア・ハンターは地面に這いつくばり、鼻を利かせます。

「足跡は、大人の男だ……さっきの小娘ではないな。かすかに煙の臭い……この森に潜む悪魔崇拝者だろうか?」

そうだとすれば、殺さねばなりません。ボア・ハンターは身を低くして、その足音を追い、歩き出しました。

5:The Magician

大アルカナのダイスロール…5/彼の起源。

大人の足跡は、不思議なかぐわしい煙の香りを引きずりながら、深い森の危険な叢へと続いていました。ボア・ハンターは自然と身をかがめ、耳を澄ましながら、より濃い暗闇へと踏み込んでいきます。

「この匂いは何だ?」

花のようであり、煙のようであり、干した草のようでもある。それはとても高貴で、触れがたいものの匂いのようにボア・ハンターは感じました。
藪の中を進むボア・ハンターの鋭い耳に、不思議な歌声が届きます。

「歌……違う……これは……まじないの歌だ……」

ボア・ハンターは、まるで人間のように頭を立てて立ち尽くしました。
それはとても懐かしい歌でした。かつて、ボア・ハンターを乗騎とした英雄。あの愛すべき男が愛した湖の精霊の姫が、流水のごとき髪を梳きながら歌っていた恋の歌……。
ボア・ハンターは次の瞬間には駆け出して、藪の向こうに飛び込んでいました。

「何者だ!お前は……」

藪の向こうのねじくれた大樹には、一人の男が寄りかかっていました。男の肩には不思議な水の塊が、小鳥のように泊まって震えていました。あの歌は、この水の塊から流れていたもののようです。
男は白い顔に不気味な笑みを浮かべ、ボア・ハンターを見ました。

「精霊の歌をたしなむとは、雅な猪であることだ」
「……」

ボア・ハンターは槍を油断なく持ったまま、男を睨みつけます。

「この歌は……もしや、その水の塊は……」
「精霊の姫の成れの果て……そう言ったら、どうする?」

かつての英雄が愛した麗しき美姫の姿はそこになく、ただ哀れに震える不定形の水の塊が浮かぶばかりです。ボア・ハンターはその言葉の意味するところのおぞましさに打ち震え、獣毛に覆われた堅牢な瞼の下の瞳を険しく光らせました。

「魔法使いの欺瞞に、騙されてやるつもりはない」

ダイスロール(人間):1…成功

ボア・ハンターは見抜いていたのです。精霊の歌を歌うばかりの魔法生物が、英雄の愛した麗しの姫であるはずがないと。
魔法使いはせせら笑い、木の幹からゆっくりと離れました。

「騙せるとも思っていなかったさ。ただ、確かめに来ただけだ」
「猪頭の怪物の正体をか?」

皮肉でもなく、ボア・ハンターは吐き捨てます。
魔法使いはマントをゆっくりとはためかせてワンドを持つ手を見せながら、薄笑いを消さずに言い放ちました。

「この森を徘徊するものが、古き伝説そのものであったということを」

6:Page of Wands

魔法使いは炙られた脂のごとくにいびつな残影を残して消え失せ、そこにはボア・ハンターだけが残されました。

「わたしが伝説そのものであると……何をいまさらのことを?」

ボア・ハンターは輝く槍の穂先に映る自分の姿を見つめました。

「……そうか。今の世を生きる人の子にとって、わたしは悍ましく、卑しい怪物としか思われないのか。輝かしき英雄でもなく……誇り高き祝福の獣でもなく」

蹄のある足がふらりと進みます。
ボア・ハンターはひどく消沈し、拠り所のないような揺らぐ気持ちを抱えていました。かれにとって、自分は今でも、世界を愛し、人の子を守り、数多の戦いを駆け抜けた英雄が最も愛した乗騎の猪であったのです。
伝説そのもの……魔法使いがあえてそう言ったことによって、今はそうではないわが身を、ボア・ハンターは突き付けられていました。

やるせない思いのまま、今ひとときは邪悪な司祭たちを追うことも忘れて、ボア・ハンターは歩き続けました。
そして……。

「ここは……?」

ボア・ハンターの足が止まります。
ここはフィンスターヴァルドの暗き森が、険しい山の裾野へ差し掛かる場所のようでした。山を背にしてますます暗く圧迫感のある、高い木々の重たげな梢を押しのけるようにして、そこには石造りの塔がそびえていました。

7:Knight of coin

「フィンスターヴァルドに。このような塔が?」

ボア・ハンターは白銀の槍を手に、ゆっくりと塔に近づきます。

「止まれ!」

凛々しい声と共に、分厚い落ち葉を踏みしめて、一人の人物がボア・ハンターの前を遮ります。輝く鎧を着た、頼もしい印象の長身の女性です。女性は古傷にえぐれた厚い瞼に皺を寄せ、見定めるようにボア・ハンターを睨みつけています。

「わが主の居城である。それ以上近づくこと罷りならぬ」
「きさまの主だと?」

ボア・ハンターは唸るように言いました。

「闇深きフィンスターヴァルドにこのような塔を築いて住まう者が、ただの貴人であろうはずもない」
「ただの貴人……か。猪頭の怪人に問われると、答える言葉に迷うものである」

鎧の女性は冗談を言った様子もなく、険しい眼光を更に鋭くします。

「わたしはボア・ハンター。悪魔崇拝の悪人を狩る狩人だ」
「ならばわが主が関与するところではない。速やかに立ち去り、その責を果たすがよい」

にべもない鎧の女性を前に、ボア・ハンターは佇みます。

「この闇の森で、わたしは打ち倒すべき敵を探し続けている。きさまの主は、我が力となりうるのではないか?」

ダイスロール(人間):1…成功

鎧の女性はしばらく考え、やがてボア・ハンターにゆっくりと歩み寄ってきました。その眼光は鋭く、戦意がしなやかな筋肉に満ちていますが、ボア・ハンターを傷つけようという意思はないようです。

「わが主は世俗を離れ、知識の渉猟を日々の生業としておられる。だが、この森は近頃騒がしく、その尊き思索をたびたび妨げるのだ」
「なればこそその騒ぎ、わたしが鎮めてくれようと言っているのだ」

ボア・ハンターは鋭く言い放ちました。

8:The Hanged Man

大アルカナのダイスロール…5/彼の起源。

塔の騎士は、オディラと名乗りました。
オディラはボア・ハンターを伴い、塔の狭い階段を上って、主の居室を目指します。

「きさまの主は、魔術師なのか?」

尋ねるボア・ハンターを、オディラは振り返りもせず、言い切ります。

「知識と魔術は異なるものだ」
「学者ということか」
「……」

階段の行き止まりにある扉を、オディラは恭しくノックしました。

「わが主、テンダーハートよ。客人をお連れしております」
「客人? わたしにかね?」

ドアの向こうから、どこか幼くすら響く、若く甘い女性の声が答えました。

「入りたまえ、オディラ。君が客人を連れてくるなんて、珍しい話だ」

そのドアが開かれ、テンダーハートの姿が見える直前から、ボア・ハンターは雷に打たれたように佇んでいました。
テンダーハート……その懐かしき名。

「賢者テンダーハート……!」

ボア・ハンターは喘ぐように叫び、オディラを押しのけてふらふらと室内に踏み込みました。
黒い髪を肩の上で切りそろえた、短躯の女性です。彼女の姿に、賢く静かなまなざしに、ボア・ハンターは胸が焦がれるほどに見覚えがありました。

「あのとき貴女を救えなかったこと、この百年悔やみ続けておりました」

ボア・ハンターは赦しを求めるように床にひざまずき、うなだれます。
ベッドに腰かけたテンダーハートはやや面食らったように瞬きし、こうべを垂れるボア・ハンターの、針のようにとがった毛が連なる頭を見下ろしていました。

「その姿……もしやとは思うが」
「わが主は悪魔の呪いに潰え、わが肉体は英雄の手足を備えることとなりました」

その言葉にすべてを察したらしく、テンダーハートは黙り込んで俯きます。

「そうか」

旧知を亡くし、その惨い末路を知ったテンダーハートの瞳は、苦痛に翳ります。

「われわれはかの英雄に、あまりに多くを背負わせすぎたのかもしれないな」

ジャーナルの中断

トークンはまた変動していません。次回はテンダーハートの塔から物語が再開するでしょう。

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