このプレイログについて
「The Way Found In Dying」は、Second Guess Systemを使用して作られたソロジャーナルです。侍同士の果し合いを題材にしています。
プレイログ
一
8…雨が降り、地面が滑りやすくなる。
折からの雨は止み、土の香気が漂う河原にはうっすらと靄が漂っている。
白い汗止めを額に巻き、銀鼠のたもとを翻して、若い侍が一人、石礫を踏んで草履をずりり、と滑らせ、足場を確保して腰の刀の柄に手を置いた。
「逃げずに来たのは褒めてやろう」
「それはまた、ありがたい話よな」
おれは皮肉交じりに吐き捨てて、口にくわえた青葉の小枝をぷっ、と吐いた。
「父の仇……と言っていたか。いかにも、きさまの父を殺したはおれよ」
「その口閉じよ、それ以上は語らせぬ!」
侍の鋭い一声に、おれは笑みを深めた。
「きさまの喉に許すは、末期の吐息のみよ」
「おお、こわい」
死合いが始まろうとしている。おれは鼻歌でも歌わんばかりの佇まいで濡れた土を踏みしめ、刀の柄に手を近づけた。
advantage 5
二
5…相手は不意を突いて一撃を決めてくる。
居合使いだ――
そう頭が判断し終えるより、奴の刀が振り抜かれる方が早い。肩口を割こうとした刃から身を捻って離れるが、飛沫いた血は確かに目に焼き付いた。
「無様なり――父と同じくした朱眼流が練技、見忘れたとは言わせぬぞ」
「ずいぶん前の話でねえ。忘れちまったもんは仕方ない」
痛みをこらえて鼻で笑い、おれは刀をすらりと抜く。
誰の眼にも焼き付く業物の刃の輝きも、この失態に翳っているような気がする。
advantage 5→4
三
2…強烈な打撃でノックバックを与える。
若いだけあって手数が多い。時折織り交ぜられる大技を見極めて最小限の動きでかわしながら、おれは奴の隙を見極めた。
落ち着いて相対すれば、見極めるほどのものでもない――下段に構えた刀を跳ね上げ、刃で受けさせると、おれはそのままやつに突撃し、肩から胸板を叩き潰すような勢いで体当たりを仕掛けた。
「ぐはっ!」
絞られた肺から震える息を吐きだして、侍は後方に吹っ飛んだ。
advantage 4→5
四
18…敵は明らかに疲労と苦痛を感じている。
体勢を崩しているところへ突っ込んで立て続けに斬りかかるものだから、奴は防戦一方に回って息を整える暇さえないようだ。ついにはがら空きの籠手への一撃が骨まで達して、苦痛の声が響く。
「うぐっ、きさま……」
「ちょっと休ませて、ってか?」
皮肉を込めて笑いを浮かべる。
休み。負傷の緊張と衝撃で更に消耗している奴にとっては、何よりも代えがたく欲されているもののはずだ。だが、そんなことが言えるはずもないだろう。
advantage 5→6
五
10…アドレナリンに駆り立てられる。
この死合いは、忘れえぬ戦いを思い出させる。
言うまでもなく目の前の若侍の父、虎堂源佐(こどうげんざ)との一戦だ。
奴は強かった。そして、おれはそれを上回った。あのたった一瞬だが、それでも間違いなく。
全身に熱い血が巡る。
この刃、ますます研ぎ澄まさねば、死した敵にも礼を欠くというもの。
advantage 6→7
六
20…反撃で脇腹を切り裂く。
「きさま……ッ!」
若侍――源左の息子が、震える声を迸らせる。
「それがしを見て、笑うな! 笑うなァァァッ!」
底をつきかけた体力を振り絞り、その白刃がおれの喉元を割かんと殺到する。
おれは刃を一度音高く打ち鳴らしてその切っ先を躱し、翻した一太刀で奴の脇腹を割いた。
「がっ……!」
いよいよもって勝利が目前に迫っても、舌なめずりをする気にはなれない。おれはただ冷め、冷え切っていく感覚をこの雨上がりの河原に巡らせて、血だまりを踏み刀を構え直した。
advantage 7→9
七
12…致命的な一撃を加える機会を得るが、ためらう。
源座の息子はぐらりとよろめき、濁った瞳でおれを見た。
脱力しかけた腕がだらりと垂れ、慌てて柄を握り直す。
その致命的な隙を、おれはただ静かに見つめていた。
「ぐ……なぜ打ってこぬ!」
痛みに傾いだ体で構えを取りながら、若者はわめき散らす。
おれは血刀を構え、応えた。
「名前を聞いてねえからなあ」
「……! 名前、だと……」
「朱眼流師範、虎堂源佐。その息子の名、聞かずに討つはさすがに無作法よ」
「侮ったものよな……!」
怒りに唸り声をあげ、源佐の息子は吐き捨てた。
「わが名は虎堂清衛門、朱眼流が剣士なり!」
advantage 9
八
14…怒りと共に敵に突撃する。
「虎堂清衛門、覚えたり」
血刀を手に突撃してくる清衛門を前に、俺は静かに呼びかけた。
「きさまはここでひとり、誰にも知られず死なねばならん。なぜなら――」
後の先。必殺の切っ先を俺は運足ひとつですり抜けるように躱して、まるですれちがいざまに肩を叩くかのような気軽な所作で刀をその喉笛に突き刺した。
絶叫が響き渡る。舞い散る血の霧の中、俺はただ佇んで続ける。
「おれが語る朱眼流は、源佐との一戦のほかに要らぬからな」
己の未熟は黄泉路で悔やむが良いだろう。おれが付き合う義理もなし。
刃の血泥を屍の衣服で拭い、納刀して、おれは夕風の中を歩きだした。
advantage 9→10
プレイ後雑感
これSecond Guess Systemなんですが、またツイスト(出目被りでイベント発生)が起きなかったですね……
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