ANAMNESIS プレイログ 「兄と二人、掌に太陽」

プレイログ

ANAMNESIS
20231016
影(17星の正位置)
願いが叶う、明るい見通し、希望、インスピレーション

第1幕
目が覚めた、というよりむしろ急に見知らぬ場所に出現させられた気分。視界に入るもの全てが目新しくて、記憶を辿れば辿るほど混乱してくる。ここが何処なのかわからない、という以前にわたしが誰なのかもわからない。唯一わかるのは、ここが家じゃないってこと。外なんだから当たり前だけどね。
何もかもわからないけれど、不思議と不安はない。空が明るくて、街が美しいから。きっと大丈夫。わたしは大丈夫。

6-8(力の正位置)
「大丈夫だよ。」
わたしの思っていたことが、わたしの後ろから聞こえてくる。そこでようやく、わたしの他にもう一人居ることに気がついた。
力強くて、頼りになる声。そう、いつもわたしを勇気づけてくれる、双子の兄。
そうだよねと同意したら、強く頷いて背を押してくれた。彼がいるなら、わたしは大丈夫。

ページ-18(月の正位置)
兄の顔を見て、兄とよく似た顔を思い出す。母の顔。大事な兄の顔を見て安心したいのに、そこに母の顔が浮かんだ途端に思考に靄がかかる。漠然とした焦燥、不安。

4-19(太陽の正位置)
振り払おうと手をぐっと握って、開いた掌を見る。そこには太陽の刺青が掘られていて、それを見て思い出す。そうだった、こうして太陽を握るのはわたしの癖、わたしだけの成功のおまじない。
不安なこともあるけれど、今はきっと大丈夫。隣にはわたしの兄がいて。掌にはわたしの太陽があるから。

第2章
兄と二人、掌に太陽。わたしは街を歩く。
見慣れないという印象は、一歩足を進める度に薄れていく。

ページ-16(塔の逆位置)
左手に公園が見えてくる。知っている、この公園に今はもうないけれど、昔ジャングルジムがあって……怖かったから、なくなってほっとしたんだ。
この公園に来たことがある。わたしは一度、ここのジャングルジムから落ちたことがあった。そのとき遊んでたのはわたしと、兄……?思い出そうと公園を見ていたら、兄に腕を引かれる。そっか、わたしだけじゃなくて、兄もここが怖いんだ。わたしがここで怪我をしたことがあるから。ごめんねって歩き出せば、兄は安心したようににっこりと笑ってくれた。

6-19(太陽の逆位置)
そんなわたしたちを軽蔑するみたいな声が聞こえる。へんな事なんてひとつもないのにね。きっと、あの人たちにはこの街が真っ暗で楽しくないものに見えているから、楽しそうなわたしたちに良い感情を抱けないんだ。

5-8(力の正位置)
そうやって街の人を見ていたら、女の人と目が合った。彼女のこと、わたしはなんにも知らないのに、わたしはなぜか「先生」だと思った。「先生」は街の人の中にいるけれど、わたしたちをわらったりなんかしない。たくさんの人がわたしをわらっても平気。こうやってわたしをちゃんと見てくれる人も居るんだから。

第3章
足を止める。見覚えのない場所だけれど、帰ってきたという感覚があるから、きっとここがわたしの家なんだろう。無意識がわたしの服のポケットから鍵を取り出させる。

9-15(悪魔の逆位置)
扉を開けてすぐ、玄関にはたくさんの靴が並べてある。スニーカー、革靴、ピンヒール。見た目が気に入ったらどうしても手に取ってしまうけれど、結局、今履いているこの靴ばっかり履いている気がする。

騎士-20(審判の逆位置)
靴箱にも靴のコレクションがぎゅうぎゅうに詰まっていて、かわいそうだから全部取り出してあげる。そうしたら、奥の方から靴を入れるには少し小さい箱が見つかった。わたしのたからものを暴かないと見れないところ。きっと中には大事なものが入ってるんだろう。なんだかわくわくして、そっと箱を開ける。中に入っていたのは、血で汚れた包丁だ。
視界がまわる、まわる。取り乱しちゃって、落ち着かせようと声をかけてくれているはずの兄の声も聞こえない。
嬉しかったの、やっと叶うって思ったの。掌にあるのは希望の太陽で、止まれの赤なんかじゃない。

4-7(戦車の逆位置)
否定しなくちゃ、だってここは明るい世界のはずなんだから。それらしい言い訳を探すために部屋中ひっくり返す。服、アクセサリー、食器、本。『ジキル博士とハイド氏』
赤く染まっているから、きっと何度も読み返した。
欲を抑えようとしていたわたしと、それを叶えてくれようとする兄。ブレーキのない兄の勇気は向こう見ずだから、兄といるのは楽しくっても、兄に呑まれちゃいけなかったのに。

第4章
王-19(太陽の逆位置)
全部思い出した。忘れたかった記憶、わたしの暗黒。
母と二人、暮らしていた。二人きりになっちゃったから母のこころは不健康で、母はそれをわたしのせいにした。きっとわたしのせいにしないと、理由がないと耐えられなかったんだと思う。でも、わたしも子どもだったから、そんな母の苦しみを全部受け止められなかったんだ。手をぐっと握り込むのはわたしが我慢するときの癖。これを耐えれば大丈夫って、そう思うしかなかったから。
苦しみの消化には、兄が一役買ってくれた。兄。ずっと孤独だったわたしにの隣に兄がいてくれたらって空想したことがあった。その空想が、いつしか現実を侵食して、兄はわたしの隣に居た。兄はわたしの深層心理の代弁者だった。母に寄り添いたいと思うわたしのこころの奥底には、わたしを苦しめる母が憎いと思うわたしが居て、兄はそんなわたしに気づいてくれた。わたしの代わりにそれを吐き出して、わたしを導き、わたしの背中を押してくれた。
そうしてわたしは、母を殺したんだ。

9-2(女教皇の正位置)
思考が冷える。掌の太陽はとっくに乾ききっている。急速に呼び起こされる理性に抗う暇もない。
こうしなきゃわたしは救われなかった。でも、わたしのしたことは間違ってた。そうだよね、ごめんなさい。
わたしの言葉に、誰も返事を寄越すことはない。だって最初から最後まで、わたしはひとりだったから。それなのに、ぽっかりとこころに穴が空いちゃったみたいな、片割れを失ったような寂しさがある。

2-20(審判の正位置)
それを埋めたくて窓を開ける。室内に吹き込む風は新鮮で、淀んだワンルームを洗ってくれた。それを感じながら、ぼうっと空を眺めてみる。日はとっくに暮れていて、輝く月の光に目を焼かれながら宇宙を思い描く。
もっとはやく、宙の広さに気がついていれば良かった。そうしていれば、わたしの悩みなんてほんと些細なものだって思えて、母のことも許せたかもしれないのに。

第5幕
9(隠者の正位置)
そのうちわたしの所業は明るみに出て、わたしは裁かれるんだろう。でもそれでいい。

わたしは◾︎◾︎。親殺しの犯罪者。

しっかりと償おう。わたしには時間がたっぷりあるから。ゆっくりと、ひとりで考える。いつかまた、太陽が昇るその日まで。

ほら、サイレンの音が聞こえる。

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