ECHOES 我堂千冬の非日常 1

プレイログ
トラウマ。目覚め。力。あなたはリゾナンテ、エコーと呼ばれる霊的な力で自らの魂を表現できる個体です。しかし、腐敗した世界では、あらゆる力が危険を呼び寄せます。このソロRPGで、奇妙な冒険を体験しましょう。

ゲームについて

ECHOES」は、「Loner」のハックで制作されたソロRPGです。イタリア語で書かれています。
「ジョジョの奇妙な冒険」みたいな物語を遊ぶのに特化していて、世界観は「現代社会」、主人公は「トラウマによって異能に目覚めた”共鳴者(リゾナンテ)”」ということになっています。また、キャラメイクの時に主人公の分身であり異能の源である「エコ」を作成します。

このプレイログについて

ECHOESはEmanuele Boninによって製作され、CC BY 4.0下で公開されています。
公開URL: https://killrain81.itch.io/echoes
このプレイログはCC BY 4.0の条件に基づき、ぱむだによって作成されています。ぱむだはこのゲームの製作者であるEmanuele Bonin、killrain81とは無関係です。

PC作成

ECHOESの主人公は、トラウマによって覚醒し、異能の源である「エコ」を発現させた「共鳴者(リゾナンテ)」です。
コンセプト・能力(2つ)・トラウマ(なぜエコに目覚めたか)などはランダム表があるので、これで振って作ります。
また、エコの能力や外見、はては名前にもランダム表が用意されています。まずは振っていきましよう。

31836f7f2e715420ee49e9b2a6756802

我堂千冬は、公立高校に通う女子高生です。詐欺と隠密に長けていると出たので、手癖と素行がとんでもなく悪いのに周囲にはそう思われない要領の良い少女ということにしました。
エコ名は「ムーディ・ソウル」、動物型で「金属を盗む・強襲する」という能力を持っています。しかし、これには「騒音を立てる」という弱点があります。隠密を身上とする女子高生にとって、これは盗みが便利になることが問題にならないくらいの致命的な弱点かもしれません。

本来Loner系ゲームのキャラメイクはまず最初に「目的とゴール」「ネメシス(宿敵)」を決めるのですが、今回は「トラウマ」である自然災害をきっかけに「ムーディ・ソウル」に目覚めるところからゲームをプレイしていこうと思います。その内容によって決まる項目も出てくることでしょう。

ジャーナル

物語の導入

放課後の雑踏は、我堂千冬にとって狩場であり、舞台だった。
優等生らしい清楚な制服に身を包み、友人たちと当たり障りのない会話を交わしながら、彼女の意識は人々の懐に、その一点に集中している。ターゲットは、ブランド物の財布をこれ見よがしに揺らす中年男。すれ違いざま、千冬の指はまるで生き物のように滑らかに動き、交通系ICカードを抜き取った。誰も気づかない。完璧な手際。これが彼女の日常であり、生きるための技術だった。

だが、その完璧な日常は、昨日、音を立てて崩れた。
いつものように獲物を物色していた千冬の肩を、一人の男が掴んだのだ。

「見事な手際だ。だが、俺には通用しない」

男は千冬のスリを見抜いていた。警察に突き出す代わりに、彼は一枚の名刺を差し出した。「話がある。明日、この場所に来い。一人でだ」とだけ言い残して。

そして今日、約束の時間。

男に指定された都市部の高層ビル、その最上階のオフィスフロアは、まるで巨大な柩のように静まり返っていた。床から天井まで続く窓ガラスが、燃えるようなオレンジ色の空を映している。静寂の中、昨日出会った男が、夕日を背にして立っていた。

「よく来たな、我堂千冬」

男の声には、千冬の秘密を知る者の響きがあった。
「お前のような才能は、ただのスリで終わらせるには惜しい。俺たちの組織に来い。その力…いや、その『技術』には、相応しい使い道がある」

組織? 力?
男の言葉は要領を得ない。
千冬は警戒を解かず、いつでも逃げ出せるように退路を確認する。男が何かを続けようと一歩踏み出した、その瞬間だった。

ゴウッ、と地鳴りが腹の底を揺さぶる。
最初は微かな振動だったが、瞬く間に暴力的な揺れへと変わる。足元の床が波打ち、立っていることすらままならない。

「地震…!?」

悲鳴と同時に、窓の外の景色が大きく傾ぐ。オフィス内のスチール棚がけたたましい音を立てて倒れ、書類が吹雪のように舞い上がった。

ミシミシ、バキィッ!

嫌な音がビル全体から響き渡る。天井のパネルが剥がれ落ち、鉄骨の軋む音が断末魔のようにこだまする。床に亀裂が走り、窓ガラスには蜘蛛の巣状のヒビが一気に広がった。

「くそぉ……!」

千冬は咄嗟に入り口へと駆け出す。だが、男は千冬の前に立ちはだかった。その顔から先ほどの余裕は消え、焦りと、そして千冬への異様な執着が浮かんでいる。

「待て! この状況…まさかお前が…!? お前だけは逃がさん!」

男が懐から取り出したのは、鈍い黒光りを放つ拳銃だった。崩落の恐怖の中、その銃口だけが冷たいリアリティを持って千冬に向けられる。

(あたしのせい? そんなわけ、あるかよ……!)

死ぬ。
地震で死ぬか、撃たれて死ぬか。絶望が千冬の思考を塗りつぶそうとした、その時。

ギャリギャリギャリギャリ!!

耳をつんざくような、甲高い金属音が鳴り響いた。それはまるで、何百もの金属片を一度に擦り合わせたような不協和音。鼓膜が破れそうなほどの音圧に、千冬も男も思わず顔をしかめる。

そして、信じられない光景が目の前で起こった。

男が握る拳銃が、まるで風化した砂の城のようにボロボロと崩れ始めたのだ。銃身が歪み、部品が剥がれ落ち、グリップは砂鉄となって男の手からこぼれ落ちていく。

「なっ…!?」

男が驚愕の声を上げるのと、千冬が自分の右手に違和感を覚えたのは、ほぼ同時だった。
開かれた彼女の掌の上に、まるで転送されてきたかのように、一丁の拳銃が形作られていく。崩れた銃の残骸が、意志を持ったかのように集まり、再構築されていく。まだ少し形がいびつで、熱を帯びている。

何が起こったのか、千冬自身にも理解できない。
ただ、目の前には銃を失い呆然とする男。そして、背後からは、ビルが完全に崩れ落ちるであろう、決定的な崩壊の音が迫っていた。

シーン1:ビル崩落

あたしはまだほんのり熱を帯びた拳銃を握り締めたまま、崩れて行く廊下をひた走っていた。
何が起きたのか、頭で分かってるわけじゃない。確かに言えるのは、とりあえず撃たれて死ぬのだけは避けられたということだ。でも、絶体絶命なのに変わりはない。

激しく揺さぶられたビルはぽっきり折れても不思議じゃないくらいだったが、さすがは地震大国日本の高層ビル。堅牢な建物はあの異常な揺れにも耐えたみたいだ。
だが、耐えたのはいわば外の「ガワ」だけ……床が裂けて破断し、同じように壊れた天井からは死の瓦礫が雪崩を打って降ってくる。

ゴシャアン——

あたしの目の前にすさまじい音を立てて落下してきたもの、何だと思う?

「しょ、書類棚……!?」

ニトリで売ってるようなぺらぺらしたやつじゃない。金属製の、キングジムのおっもいファイルが鈴なりに詰まってるやつだ。こんなのが頭の上に落ちてきたら死んでしまうわ!

質問:男は追いかけてくるだろうか?

オラクル:3-5/いいえ。

はあ。追いかけてはこないみたいだ。死んだのかな、あいつ。追われながら逃げるより、ただ避難するほうがよっぽどマシだ。
とはいえ、よかった探しをしてる場合じゃない!
このビルが崩落すればあたしは間違いなくお陀仏だ。しかし、天井を突き破って目の前の床に刺さっている、この金属製の棚を迂回する時間があたしにあるだろうか……?

質問:エコの力で金属製の棚を分解できるだろうか?

オラクル:4-1/はい。

じゃらっ、じゃらっ、じゃりんじゃりんじゃりんじゃりん……

突然響き渡る、耳につく金属音。鼓膜が限界まで震えて苦痛なくらい近くで響いている。こんな騒ぎの中でも、あらゆる騒音をぶっちぎってうるさい。あたしは思わず耳を押さえて悲鳴を上げた。

「うるさい! 何なのよ!?」

そのとき、しゅるるっ……と、冷たいものがあたしの手首をこすった。くたびれたシュシュをつけている左手首をなぞるように、ひんやりとした長いものが這い上がる。
蛇。
そうだ、蛇だ。
緑色の鱗は金属質の光沢を持ち、不規則に刃のような鋭い棘が生えている。それがあたしの手を這いあがっているというのに、あたしは不思議と、その棘で自分が傷つくことはないのだという確信があった。
その尾から下がった歯車のような部品が弾みながら回るたびに、甲高い金属音が響き渡る。

盗んでいるのだ——

あたしは目を見開いた。
蛇の尾の歯車が回るたびに、目の前の金属製の棚は見る見るうちに分解されて崩れ、床の裂け目の下に大量の書類とファイルをばらまく。
崩れ去った棚を構成していた金属は、あたしの傍らに現れている。形状を変えて、より大きく、より頑丈に——そして、とても薄く、広く、優美に。

「は、ハンググライダー……!?」

壁が大きく崩落して、夕焼けに照らされる都市部の遠景が一望できた。あちこちが土煙を上げ、火の手が上がり、救助隊のサイレンがいたるところから響いている。
見慣れた町の恐ろしい非日常。
それを一度、脇に置いてしまいたくなるほどに——
この状況は、常軌を逸していた。
外壁が破壊されたのを幸いに、廊下から悠然とはみ出すようにして、薄い薄い金属製の、三角形の巨大な翼——ハンググライダーが出現していたのだ。それは気まぐれな強風を浴びて、翼に当たる部分は風を含んでぼこんぼこんと膨らんでは凹んでいた。

「こんなの作って、どうしろっての」

あたしは左手に巻きつく蛇に、震え声で尋ねた。
蛇は答えない。ただ落ち着き始めた金属音を、ゆっくりとじゃらん、じゃらん、と鳴らし続けるだけだ。
崩落の音が響く。
あたしは覚悟を決めた。どっちにしたって、このビルにいては助からない!
後生大事に握り締めていた拳銃を、破れかぶれで思い切り放り投げる。

「ええい、なむさん!」

女子高生らしからぬ掛け声とともにあたしはハンググライダーに飛びつき、ビルから飛び出した。

質問:眼下に恐るべきものが見える。それはどんなもの?

オラクル(名詞):5-5/主張
オラクル(形容詞):1-3/発展させる

解釈:別のリゾナンテがエコを用いて「縄張り」を主張しあっている。凄まじい力のぶつかり合いだ。この災害もそのせいで起きたのでは?

あたしの体は秋風が吹き荒れる空に投げ出されて、美しい夕陽の残照に包まれる。こんな状況じゃなければ、人生観が変わるくらいの体験だ。
もちろん、そんな余裕なんかない。急ごしらえのハンググライダーを使っての、高層ビルからの決死の大脱出。ほとんど、99%は決定づけられた「死」に抗うために、今のあたしは死に物狂いなんだ——

ここで、街を巻き込んで戦っているリゾナンテを作ることにしよう。

NPCリゾナンテ1:
名前:伊勢川 瞬示(いせがわしゅんじ)
コンセプト:スタントマン
能力(2つ):監視/威圧
トラウマ:自然災害
目的と動機:何かを完成させる
ネメシス:マルセル
意志力:○○○○○○

エコ名:マッド・ハート
エコの形状:不定形
エコの能力:複製する/磁力
エコの弱点:特定の条件下では効果が即座に消える

一人は体格のいい若い男だ。不定形のエコを操っている。

NPCリゾナンテ2:
名前:マルセル
コンセプト:古物商
能力(2つ):解体/威圧
トラウマ:交通事故
目的と動機:どこかを航行する
ネメシス:伊勢川瞬示
意志力:○○○○○○

エコ名:ラジオ・ムーン
エコの形状:動物型
エコの能力:転送する/次元
エコの弱点:遅い

もう一人は陰気で謎めいた男だ。動物型のエコを操っている。

質問:この二人はどのような関係だろうか?

オラクル(動詞):5-2/収集する

解釈:どうやら二人は同じ何かを集めているようだ。それの奪い合いになったのだろう。

ここで主人公であるあたしと、重要人物らしいNPC2人のことが明らかになったわけだ。
物語を紡いでいく役者はそろったと言ったところだろう。

c9cc77336a55318b09c1b2c71c75a17a

さて……
あたしが目にしたのは、驚くべき光景だった。

サイズもまちまちの無数の鋼球が宙にびっしりと浮かび、灰色の壁を作っている。その壁を吹き散らそうとするかのように、刃の羽根を持つ巨大なフクロウがつむじ風を上げながら壁に突撃し、鋭いくちばしと爪で鋼球の壁を崩す。
それだけじゃない。
フクロウの周囲には黒い球形の闇が浮かび、そこから吐き出された黒いビームに薙ぎ払われた壁には深い傷がつく。貫通した壁の向こうに、一人の男の姿が見えた。

「くそっ、ここまでやってもダメだってのかよ!」

無数の鋼球を掌の先に浮かせ、操っているのは、眩いほど鮮やかな黄色のスーツを着た長身の若い男だ。男が手を振り上げてフクロウをびしりと指差すと、鋼球はじゃらじゃらと鳴りながら壁を崩す代わりに一斉に整列して二列のレールになり、男とフクロウの間を真っ直ぐにつないだ。

「手加減はなしだ。ブッ殺すぜ、マルセル!」

男が高らかに挑発の声を上げる。
男に「マルセル」と呼ばれた、空高く舞い上がったフクロウを追いかけて、鋼球のレールがぐぐぐっ、と曲がる。
逃げたわけではない。フクロウは空の上で体勢を整え、翼を高々と舞い上げて打ち下ろすように振るう。空気を叩く音が響くと共に、フクロウは空気を滑って急降下してくる。
その周囲に幾つもの黒い球体が浮かび、微細に歪み、闇のビームがほとばしろうとする——

「《マッド・ハート》ッ! 鳥撃ちの時間だぜ!」

黄色いスーツの男が叫ぶと共に、握りこぶし大の鋼球が男の掌の先に現れた。
それは二本のレールに押し出され、わずかにゆるゆると進んだ次の瞬間、灰色の影すら残さないほどの高速で鋼球のレールの上を滑って射出される。長い射出経路で勢いを失わず、むしろその長さの分だけ、殺人的な勢いを得たかのように——

ボッ……

重く耳に届く衝撃音と共に、撃ち出された球体がフクロウを貫いた。
フクロウの周囲に浮かんでいた黒い球体が一瞬で掻き消えるが、フクロウは落ちない。青い羽毛を舞わせながら大きくふらつくものの、次の瞬間には翼を広げて体勢を持ち直している。大きく掲げられた翼が地上に影を落とし、黄色のスーツの男の驚愕の顏すら呑み込んだ。

「なっ……俺のガウス・ガンを防御しただと!? カタツムリだって欠伸するくらいノロマなてめーがっ……!」

——さて、地上のこんなやり取りをよそに、あたしはいよいよ着地の時が近づいてきている。

質問:あたしは無事に着陸できるだろうか?

オラクル:3-3/はい、しかし……(どんでん返しカウンターに+1)

「っだあああああ……ッ!」

地上が近づくと共にイチかバチかでハンググライダーから手を離す。あたしの体は空中に放り出されて今度こそ完全に自由落下を始め、全身の内臓が縮むような凄惨な慣性を味わいながら、あたしは鼻をつまんでぎゅっと目を閉じる。
そして、あたしはそのまま街の中心部を貫いて流れる河川に落下した。
激しい水柱が上がり、ばちばちと水滴が水面を叩く。
必死に水を蹴って体を進め、ほどなく河川敷に濡れた体を引き上げて、あたしはぜえはあと息を切らしていた。どこかに飛んで行ったハンググライダーが衝突したらしく、激しい金属が遠くから一度だけ響いて、あとは静かになる。

「た、助かったぁ……?」

耳に溜まった水を出すために頭を傾けてとんとんと振り、間の抜けた呟きを漏らしていたあたしを、土手の上から見下ろす男がいた。

「おい……女子高生。何者だ、てめーは?」

じゃらり、と音を立てて、一列に並んだ鋼球が浮遊する。それを従えるように、土手の上にはさっきの黄色いスーツの男が立っていた。
あたしは地面に手を突いてよろよろと身を起こし、濡れた髪を後ろに払った。

「女子高生ってことがわかってんなら十分じゃあないの? 流行ってんのよ、放課後にハンググライダーでビルから飛び出すの……韓国アイドルがハマってるって言ったからさァ~」
「ああー……?」

黄色いスーツの男は乱れた髪をかき上げるように額に軽く触れ、顎を持ち上げて、居丈高にあたしを見下ろす。

「ふざけてんじゃあねえぞ、クソアマ。質問に答えられねーなら……」
「あのぉー、あなた、なんなんですゥ? あなたは、あたしがこうやって決死の覚悟で落ちるところをただ見てただけで……助けてくれたわけでも何でもないのに、絡むのだけはいっちょまえに」

あたしは図太く言い放ちながら空を見た。この男と戦っていた、あの青いフクロウはいない……撤退したのだろうか?
男は苛立ったように口角を引きつらせていたが、ふとあたしの反応に引っ掛かったようにぴくりと眉を上げた。

「おい、女子高生……てめー、今、なんで空を見た?」
「え? なんでって……そりゃあ」

あたしは湿ったシュシュで濡れて貼り付く髪を強引に後ろにまとめながら、答えた。

「さっき、あなたが戦ってたんでしょうが……」
「……ッッッ!」

男の表情に緊張と戦意が滲み、その唇に愉しむような笑みが浮かんだ。
クッ、と男が喉を鳴らして笑うと同時、その後ろに異形の影が音もなく浮かんだ。
なかば崩れたような、粘着性の高い黄色い何かで作られた、巨大な立体のハート……そして、その周囲を土星の環のように取り巻く、まちまちのサイズの鋼の球。

「マルセルの『エコ』が見えてたってことは……てめーも『リゾナンテ』ってわけだな!」
「りぞなんて……? あんた、何言ってんのよ……? それに、そのハート……」
「三文芝居は切り上げ時だぜ、ガキィ!」

男の哄笑が響き渡り、整列をやめた鋼球がばらりとその周囲に浮かんだ。
ぎっ、ぎっ、と軋むような音がかすかに響くと同時、いくつもの球体が弾かれたように撃ち出される。

質問:あたしは鋼球を回避できるだろうか?(不利)

オラクル:3-6/いいえ。

ドギュッ、と重い音を立てて、鋼球があたしの脇腹の下に潜り込むように打ち込まれた。あたしの肺が勝手に絞られてありったけの息を吐き出し、激痛と衝撃にそのまま地面を転がる。

「あっぐ、ううう……っ!」

濡れた髪をびたりと振り回しながら地面に手を突き、あたしは勢いよく立ち上がる。
くそっ、なんなんだ、こいつは?

次のシーンは、この黄色いスーツの男(伊勢川瞬示)との戦いになるだろう。「ECHOES」では次のシーンの内容をランダムに決められるが、今回は言うまでもなく「ドラマチックなシーン」が「危険な場所」で繰り広げられることにになる。
また、現在「どんでん返しカウンター」が1になっている。これが「3」になった瞬間、物語の緊張感は極限に達し、大きな変化がもたらされる。

シーン2:マッド・ハート

「痛ってえええっ……クソ野郎! よくもあたしに!」
「しらばっくれて通用すると思うなよ、女子高生! この場に現れた『リゾナンテ』が無関係なわけが無えーッ! 徹底的に叩いて潰すッ!」

絶叫するあたしを見下ろして、黄色いスーツの男は冷酷に宣言する。普段のあたしなら被害者ヅラで通行人にでも助けを求めているところだが、大災害の直後のこの街でそんなことをしても望み薄だ。自力で切り抜けるしかないということだろう。
男が指揮をするように両手を振り上げると、金属の球体が男の周囲を緩く取り囲んで浮遊する。球体は、ばらつきこそあるが、どれもそんなに大きくはない。パチンコ玉からピンポン球程度のサイズ感だ。フクロウを撃とうとしていたような、あの拳大の球はどこにも見当たらなかった。

あたしは無意識に左手を掲げ、五本の指を真っ直ぐに男に向けた。金属の棘を持つあの緑の蛇がどこからともなく現れてするすると腕を伝い、手の甲の上に顔を出す。
浮遊する鋼球を従えた男が、にやりと唇を歪めた。

「それがてめーの『エコ』ってわけか!」

質問:ガードレールを盗んで、盾を作ることはできるだろうか?

オラクル:2-3/いいえ、しかし…

あたしの手から解き放たれた蛇……男の言葉を借りれば『エコ』が、河川敷と土手を部分的に区切るガード―レールへと飛んでいく。真っ白だったガードレールに亀裂が走り、分解が始まるともにまたあの凄まじい騒音が響き渡る。

ギャリギャリギャリ!

「くそっ、なんだこの音は!」

響き渡るすさまじい音が苦痛なのはあたしも同じだが、男に構わずダッシュをかけて土手を駆け上がる。騒音に苦しみながら男が次々に放つ鋼球を紙一重で躱し、蛇が分解を続けているガードレールへ飛びつくように近づく。
その間にも騒音はますます大きく響き渡り、耳を通り越して目の奥がずきずきと痛み始めている。
あたしの手元に白い壁が、手のひら大の大きさまで出来上がりつつあったが、それを取り落とすかのように地上に放り出してあたしは声を上げた。

「もういいから、この音を止めなさい! 《ムーディー・ソウル》ッ!」

叫んでから、驚く——ムーディー・ソウル? それがこの蛇の名前だということか? こんなにも当たり前みたいに、あたしはその名前を呼んでいた……。まるで、魂につけられた名前を思い出したみたいに。
蛇はあたしの手元に戻り、ガードレールの分解は完全に止まった。
それと同時に——

かん、かん、からん……

澄んだ音を立てて、浮遊する鋼球が次々にアスファルトに落ちていく。
青ざめた顔で両耳を塞いだ男が大きく後退して、憔悴した眼であたしを睨んでいた。

「くそっ……《マッド・ハート》!」

男が耳を塞ぐ手を離し、高らかに叫ぶと共に、鋼球は一斉に浮遊してまたあたしを狙う。
あたしは先ほど取り落とした作りかけの盾を拾い上げてキャッチャー・ミットのように胸の前に構え、突撃してくる鋼球をなんか受け止めて弾き返した。それでも勢いを殺しきれず、後ろによろけて転びかける。

(鋼球を取り落とした……何か理由があったはず。集中が乱れたから……?)

踏みとどまって姿勢を持ち直し、完全に歪んでしまった金属片を投げ捨てながら、あたしは男を睨みつけて左手を掲げ、くっ、と掌を下に向けた。
あたしの腕を伝って這い上った《ムーディー・ソウル》が、金属の棘を逆立てて鎌首をもたげた。
輝く金属の蛇に並んで真っ直ぐに男を見据え、あたしは静かに口を開く。

「《ムーディー・ソウル》……これがさっき、殺されかけたあたしを助けてくれた。あんたの言葉を借りるなら……あたしの『エコ』ってことになるのね」
「ハッ、何を言い出すかと思えば……覚醒したばっかりだって? だから見逃せって言ったって通用しないぜ、女子高生!」
「これを使って戦うなんて言われても、わけがわかんないけど……あんたにこれだけ追いかけ回されて、一つだけ分かったことがあるわ」

きん、きん、がり、がり、きゅりきゅりきゅり……

何処からか響き始める金属音。
分解が始まっている。
あたしはうろたえる男を見据え、人差し指だけを立ててびしりと突き付けた。

「あんたにとって、あたしは『最悪』の相手だってことよッ!」

男の口がひくりと歪んだ。それが大きく開き、腹から吐き出された怒声を迸らせるより前に——
あたしは全力で魂を尖らせ、無数に浮かぶ鋼球へ意識を向けた。

(金属を……『盗む』! それが、あたしのエコ……《ムーディー・ソウル》の能力……ッ!)

キン、と甲高い音が響くたびに、男の周囲から鋼球が消えていく。まだ響き始めるその金属音に男は内心穏やかではないようで、必死に周囲を見回していて鋼球が減っていくことに気づいていないようだ。

「あんた、苦手なんでしょ? この『金属音』……大事な『集中』が乱れるくらいにねッ!」
「クソアマがぁ……この『音』を立てるのがその蛇の能力ってわけかよ? だとしたら……」

男が手を突きだし、鋼球をぞろりと整列させる。

「てめーの息の根と一緒に、この音も止めてやるッ!」
「《ムーディー・ソウル》ッ!」

あたしは高らかに、そのエコ——魂の名前を呼んだ。
男から少しずつ盗み取った金属が、遥か頭上で形を成している。あの騒音は盗む金属の質量に比例するようで、極小の金属球をかすめ取るだけではあのかすかに耳障りな音が響くだけのようだった。
だが、少しずつ盗み取ったそれも、集まればそれなりの質量になる——

「ああ? 何だ、何も起きねえ——」

男の嘲笑を聞き終えるより早く、風を切るような落下音が響き始めた。

ひゅうう、ぅぅ……

「なっ……!?」

男がうめき声を上げて、空を振り仰いだ瞬間。

ごわんっ!

耳につく大きな音を立てて、空から落下した金属製のタライが男の頭を打ちのめした。

質問:男はこのタライで戦闘不能になるだろうか?

オラクル:6-1/はい。

男はタライを頭にくらってふらふらとその場をよろつき、どしんと尻もちをついた。手を地面について倒れ込むのは避けたようだが、衝撃で揺さぶられた頭をぐらぐらと揺すっていてすぐに立ち上がる様子は見せない。
ふ、と、その場を支配していたプレッシャーが消えた。
あんなにあった鋼球が音もなく空気に溶けるように消えて、あのどぎつい黄色のハートもいつの間にか見えなくなっていた。

あたしは《ムーディー・ソウル》が肩に小さな頭を乗せてくるのを感じながら、男に大股に近づいた。
とどめを刺すとか、そういうのじゃない——男のスーツのポケットを軽く叩くように触って、次の瞬間には使い込まれた財布を手にしている。

「伊勢川瞬示、22歳ねえ」

運転免許を引っこ抜いて確認し、財布に戻す。大した額が入っていたわけでもないが、今現金に手をつける気にはなれなかった。財布を閉じてばたんと振り、男の膝の上にぽんと放り投げる。

「自分を殺そうとした男の運転免許証見るのって、不思議な気分かもね」
「う、ぐ……てめえええ……」
「おっと」

唸って立ち上がろうとした男——伊勢川瞬示に左手を突きつけ、《ムーディー・ソウル》が開け放った大きなあぎとを見せつける。伊勢川は怯んだように唸り、立ち上がるのを一度断念したようだった。

「別にあんたを殺そうなんて思ってないよ。ただ、聞かせてほしい」
「ああ……?」
「エコのこと、リゾナンテのこと。そして、あんたがあたしを襲った理由」

あたしは至って真剣に言って、引き戻した《ムーディー・ソウル》の頭をちょん、と指先で撫でた。

「無関係じゃいられないってことくらいは、さすがにわかったからね」

伊勢川は不機嫌に呻いて、その場にどっかりと胡坐をかいた。

《マッド・ハート》との対決を終えたので、このシーンは終わりでいいだろう。次のシーンがどのようなシーンになるかは、ランダムで決めることにする。

次のシーン…4/ニュートラルなシーン。何か新しいことが起きる。

シーンの場所…6/役に立つ場所。PCのためになるものがある。

得体の知れない男との情報の共有にうってつけの、緊張感を保ったシーンになりそうだ。

ジャーナルの中断

LONERとジョジョっぽい異能バトルがこんなに相性抜群だとは…
キャラメイクの表も程よく想像しやすくてとてもいいですね。イタリア語にひるまずにぜひ遊んでいただきたいです!

コメント

タイトルとURLをコピーしました