このプレイログについて
COLD DECISIONS: THE CULT OF NAMENLOSは、カルト的な性質を持つコミュニティを運営し、偉大なる存在の復活までコミュニティを維持するゲームです。
ジャーナル
【wave0】
…1/Epiphany of Salvation
私の父と母は、啓示を受けた存在だった。
「いずれ来る偉大なる者ゴルムオロクの覚醒のために奉仕する」
口癖のように繰り返していた言葉の意味は、幼い私には分からなかった。けれど、その日はやってきた。
父と母はゴルムオロクの覚醒に備えた最初の生贄として身を捧げ、それまで育ててきた教団を私に託したのだ。
ゴルムオロクの石像の前に血だまりを広げ倒れ伏している両親をまたぎ越えて、私は信者たちの前に立った。
「救済の日は近い。祈祷し、奉仕し、希望せよ」
[服従]4
[狂信]4
[秘密]4
[資源]4
私の教団の[徳]は、このような数値になっている。どれか1つでも0になれば、覚醒の時を待たず教団は瓦解する。その日まで教団の体裁を保ち、祈りと生贄を捧げ続けることが私の役目だ。この教団は、父と母が私に残してくれた、暴力と罵倒以外の、唯一の贈り物だ。
【wave1】
…55/厳冬
私の教団が最初に受けた洗礼。それは、廃村で孤立した教団がしのぐには厳しすぎる酷寒だった。
この地域の冬は寒い。ここで生まれ育った私はそれをよく知っていたはずだが、それにしてもこの寒さは異常だった。
年寄りたちから死んでいく。あるいは、疫病の症状が出た者はすぐに見とがめられて外に追い出され、雪交じりの風の中で凍え死んでいく。
信者の熱を冷ますに十分な、冷たい風だ……何とかしなければ。私は焚火に当たりながら考え込んだ。
[服従]4
[狂信]4→3
[秘密]4
[資源]4
Closure/籠りの儀式
私は信者たちを集め、燃料を節約するために大きな建物で寝泊まりすることを提案した。疫病が一度流行れば全滅ではないか……そんな声もあったが、敬虔に祈りを捧げ続ければゴルムオロクの威光は疫病を退けると説明して納得してもらった。
「それに、おじちゃんたちと一緒にお泊りしたいの」
唇をつんと尖らせて、精いっぱい可愛らしく言った。
厳しい冬は幸い長くは続かず、燃料が尽きる前に春を迎えることができた。
[服従]4
[狂信]3
[秘密]4→5
[資源]4→3
【wave2】
…43/不義
籠りの期間の中で親しくなった男女は多くいたようだ。その中の何人かは、結婚の誓いを立てたがった。もちろん、この教団の中で血縁や人間関係が閉塞するのは喜ばしいことだ。私は温かく引き受け、祝福の言葉とともに花びらを新しい夫婦の頭の上へ零した。
しかし、こういった判断に置いて、軽率に祝福を授けるのはよくなかったみたいだ。
その奔放さと不安定さでまっとうな社会に居つけなくなったような、そんな男女もこの教団には多くいる。特にタチの悪い女が、複数の男を相手に婚姻の誓いを立てると口約束をしていたようだ。
こういった男女の仲の不和は、コミュニティに不穏な波風を立てる。
「お姉ちゃん、めっ、だよ」
この女は、男たちと話していない時は、あまり反応しない。虚ろな瞳でガンジャを吹かす女の前で腕組みをして、私は精一杯怖い顔をした。
[服従]4→3
[狂信]3
[秘密]5
[資源]3
Foundation/労役
信者たちは愚かだ。遊ばせておくから、こんなだらしないことをするのだ。
私は自分の責務を果たすために、新しい計画を提案した。特に若い男女の時間をガチガチに縛り付け、過労死ラインを大きく超えた労役を強制するのだ。すべてはゴルムオロク様覚醒後の世界のため、聖堂を建て、教団の周りを整地し、不慣れな農業に非現実的なノルマを課す。
「若者はやはりこうでないといけませんな」
古株の老人が満足げにうなずいている。教団の環境も改善され、自堕落で使い道のない若者は倒れて死ぬ。悪くない判断だったみたいだと、私は絵日記に描いておいた。
[服従]3→4
[狂信]3→4
[秘密]5→4
[資源]3→2
【wave3】
…13/飢饉
慣れない農業に熱を上げさせたのは、あまりいい結果につながらなかった。
農業とは専門技術で、美しい心で種をまけば実りが齎されるというものでもないからだ。
私たちの畑には、美しい花が咲き乱れていた。
私たちはそれを絶望の眼差しで眺め、立ち尽くしている。
この花は雑草だ。それも地質を汚染し、病原菌を染み込ませ、硬い根を張ってまっとうな作物をひどく傷つける、第一級の有害植物だ。
[服従]4
[狂信]4→3
[秘密]4→5
[資源]2→1
Pilgrimage/巡礼
いつまでも呆然としている時間はない。このままでは信者たちが飢えで全滅してしまう。
私たちは残った数少ない食糧を分け合い、旅支度を整えて、村の建物の多くを封鎖した。
一か月後にここに戻ってくるまで、外の世界での布教活動と物資の確保を行う。親類縁者、友人、街角で引っ掛けた若者、使える者は何でも使って。
「お別れするのは寂しいけど……いっぱいお友達、みつけてきてね」
私はにこにこと皆を見渡し、告げた。
[服従]4→3
[狂信]3→4
[秘密]5→4
[資源]1→2
【wave4】
…33/発明
巡礼の期間が終わり、人も物も豊かになった教団は前より活気にあふれていた。外部から連れてこられたのは、人生に迷った若者や私財に目をつけられた老人ばかりではなかった。
彼は、科学者だという。
「物知りさんなの? すごいねえ、えらいねえ」
にこにこしている私を、科学者は困惑の目で見ている。
彼は知識が豊富で、農業にしろ生活資材にしろ改善の方法を次々に思いついてくれた。二日もすれば、彼がこの教団にとってなくてはならない存在になっていくのが分かった。
なくてはならない存在?
そんなの、偉大なる者ゴルムオロク以外にあってはならないのに。
[服従]3→1
[狂信]4
[秘密]4
[資源]2→3
Purge/粛清
科学者が架刑台に架けられたとき、彼はまだまどろみの中にいた。
油の臭いが立ち込めると小さくくしゃみをして、重たい瞼をゆっくりと開いた。
彼はすぐには、自分が置かれた状況が呑み込めなかったようだ。ガソリンを染み込ませたぼろ布をぐるぐるに巻き付けられて、コンクリートの柱に縛り付けられ。足元には薪が置かれている。そんな状況が意味するものについて。
「物知りさん!」
私は彼に手を振り、元気よく声をかけた。
「今まで、ありがとう! さようなら! ほら、みんなも」
信者たちが笑顔で声をかける。ありがとう、助かったよ、さようなら、君と出会えてよかった、この出会いに感謝!
すぐに激しい炎が上がり、科学者が叫び散らした呪いの言葉はすぐに聞こえなくなった。
[服従]1→3
[狂信]4→3
[秘密]4→3
[資源]3
【wave5】
…25/放蕩
巡礼から持ち帰ってきたのは、物資や新しい生活の知恵だけではなかった。外の世界で流行っている奇妙な薬が教団の中で蔓延しているのに、私はすぐに気づいた。
どうやらそれは苦難に満ちた信仰の生活に享楽をもたらすとても簡単な手段のようだが、それだけに少し危うい。苦難の中で縛り付けなければ、愚かな信者たちはすぐに信仰を忘れてしまうのに。
乱痴気騒ぎが毎晩続いているせいで、近隣地域の不心得者までこの教団の敷地に寄り付く始末だ。外部にここの秘密が広まるのは、あまりいいことじゃない……埋めなければいけない死体が増えてしまうから。
[服従]3→2
[狂信]3→4
[秘密]3→2
[資源]3
Closure/籠りの儀式
一番良くないのは、外部に秘密が漏れることだ。信者たちが享楽にふけるのは、ある程度奨励してもいいかもしれない。
私は侵入者たちの拷問と処刑を華々しく行わせた後、信者たちに伝えた。
「みんな頑張ったから、神様がおやすみしろって言ってるの。みんな、仲良ししよ?」
封鎖した村で日夜行われる様々な淫蕩に耳を傾けるのにはすぐうんざりして、私は毎日一人ぼっちで花畑で遊ぶ。花の冠を作るのも随分上手になったけど、それをかぶってくれる友達なんか一人もいない。
大人たちはやっぱり愚かだ。偉大なる者の目覚めのために、その身を捧げてもらうしかない。せいぜい物資を食い尽くす前に、飽きてくれたらいいんだけど。
[服従]2
[狂信]4
[秘密]2→3
[資源]3→2
【wave6】
…52/救難
捕らえた侵入者の様子が異なることに、村の老人が気付いた。侵入者は大きな怪我を負っていて、この村にお楽しみを求めに来たという感じではなかった。彼は息も絶え絶えに助けを求め、話し始めた。
「この国で内戦が起きつつある。どうか女子供だけでもここにかくまってくれ」
冗談じゃない。この男がここにたどり着いたということは、他の避難民もここに流れ着いてくる可能性があるということだ。
聞かなかったことにするにも、難しい問題だ。私はひとまず男に痛み止めを飲ませ、手当てするように命じた。
[服従]2
[狂信]4
[秘密]3→2
[資源]2
Purge/粛清
炎が天を焦がす。悲鳴が重なって、絡まって、大きな獣の吠え声のように響く。
この焚刑で、薪を積み上げる必要はない。あとからあとからやってくる避難民たちの血肉が、薪代わりだ。
「ああ、神よ」
無意識に信者の一人が呟き、ひざまずいた。
「我らの罪をお許しください」
私の合図でその信者も捕まえられ。炎の中に放り込まれた。
私たちは、何も罪など犯していない。私たちほど正しいことを成しているものは、この地上には存在しないのだ。
[服従]2→4
[狂信]4→3
[秘密]2→1
[資源]2
【wave7】
…34/変身
生贄が一気に増えたことで、覚醒の時は格段に近づいたようだ。
朝、目覚めて神殿に出ると、老人たちが緑色の肉塊となって溶け合い、うぞうぞと波打ちながら私に挨拶をした。私は元気よくそれに答えて、鼻歌を歌いながら外に飛び出した。
何千本もの牙が生えて、顔から下がずたずたになった女が、庭の雑草を摘んでいる。
肥大した目玉で脳を押しつぶされた若者が、石切りの仕事に精を出している。
肉色の蔦と怨嗟の顔を体の表面にびっしり生やした信者たちが、焚刑台の後片付けをしている。
花が咲き乱れる。光がこぼれる。
なんて美しい世界。
私は、この光景のために生きてきたのだ。
[服従]4
[狂信]3→2
[秘密]1
[資源]2
Rest/安息日
もう、何も強いることはない。信者たちも、私も、ゆっくり休んで明日を迎えよう。
[服従]4→3
[狂信]2→3
[秘密]1→2
[資源]2→1
【THE PROMISED DAY】
偉大なる者ゴルムオロクが目覚め、世界を覆わんばかりの巨体で立ち上がった。
信者たちは祈りの中で一条の細い肉塊となり、ゴルムオロクの皮膚に突き立つ杭となった。
永遠なる苦痛に身を投じる杭たちの、歓喜の声が地の果てを満たす。赤い空の彼方から、無数の皮膚の螺旋が舞い落ちてくる。それは螺子のように回転して大地にねじ込まれ、どこかで見た青い花を咲き乱れさせる。
私はその花を取り上げて、小さな冠を一つ作った。
ゴルムオロクの目に、私は映っているだろうか。
「ずっとあなたを待っていたよ」
微笑んで、冠を差し出す。
神格に触れ、天国に至るということは、今の私が変容するということに他ならない。
肉の泡が、眼球の芽が、骨の網が、私の体を覆いつくして、すぐに私は私ではなくなっていった。
ただ、地に落ちた花の冠だけが、だれからも疎まれた小さな花のままで。
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