【プレイログ②】超漁船要塞マグロズ、行動開始です!

プレイログ

――命は巡る、食物連鎖のように。生まれて、育って、老いて、死ぬ……これがどれだけ有情な事かこの空を泳げば分かるだろう。せめてその命の支えになれるよう、歌姫はここにいる――

超漁船要塞マグロズ、釣り人が集う場所。これはマグロズの歌姫にしてレスキュー隊員である“あなた”の物語。

 

~~なんか挟まる良い感じのOP~~

 

【第二話 絶対矛盾的、自己統一】

太陽が天辺に上る頃にはマグロたちが雲海へと潜り遠泳を始めてしまうので釣りは終了だ。ようやく休憩時間になる。シャワーを浴びて普段着であるツナギに着替えてから食堂に向かう。着いた頃には今日の賄が出来ていて船員の皆が入れ代わり立ち代わり和気あいあいと食べている。私も今日の日替わり定食を持っていつもの席に着く。
今日の昼食は朝釣ったばかりのカツオの刺身と炙りとタタキだ。美味しいし体が大きいからいいけれど外道ばかりが連れて釣果がない時の昼食は品数も少なくて、それで皆口数も減っちゃうことが多い。けど今日のカツオはおおむね好評なようで賑やかな食堂が見て取れた。
おなかいっぱい食べられる。これだけで明日も頑張ろうって思えるから不思議だね。そんな話をコニーとしていたら向かいの席にOUMAのメンバーのマオがやってきた。

「おつかれさま」
『猫』の名を関したこの子は口数は少ないけど監視塔から常に魚影を探して進路を決定してくれる、船にとっても私にとっても大切な人。だからもっと仲良くなりたくていつも昼食の時間を使っておしゃべりしたい、んだけど……今日もしゃべる前に口を人差し指で塞がれる。
「ダメ。……午後はレッスン、その後パトロール……。ダラダラしない。時間は有限」
同じくおしゃべりしたそうな様子のコニーももう片手で静止して止められてる。うーとか、むーとかうなってたけどそのうち諦めたみたい(私は諦めてないからまだ口を塞がれたままだけど)。その内にマオはさっさと食事を終えて私の口を開放すると同時に食堂から出て行ってしまう。
「あーもう、もっと仲良くなりたいのに!」
いつの日か一緒に食べられると信じて毎日少しだけ残しているご飯を今日も寂しく食べ終えてから食器を返し、自室に向かう。さっきまで着ていたツナギを脱いでレッスン用の衣装に着替えて稽古場に向かう。

それからみっちり3時間、基礎体力作り・歌唱練習・振り付け練習をして汗だくになりながら歌姫としての技術を磨く。もっと軽やかに、もっと泳ぐように。それでいてクジラのような包容力を——まだまだないものねだりだけど目標だけは高く持ちたい!!
「それじゃあ、今日はおしまい! お疲れ様、このままの調子で頑張りましょうネ!!」
コーチ兼マネージャーであるジュリアンが手を軽く打ち鳴らしつつ終了を告げる。生来の男性なのに私たちOUMAより女性らしい細やかな気張りの出来る素敵な人だ。
「ありがとうございました!」
私もコニーもマオも疲れ果てているけれどしっかり頭を下げて、それから稽古場を掃除してストレッチをして体を癒す。それからもう一度シャワーを浴びてツナギに戻ってから監視台に戻る。そう私たちOUMAは超漁船要塞マグロズに所属するアイドルでありつつ、レスキュー隊でもある——だから日々助けを求める人がいないか空を哨戒しながら飛んでいる。このため有事の際はすぐに救出活動が出来るように私服は基本的につなぎだからアイドルっぽくないけれど、それで命を救えるならいいよね。と言うのが私達3人の共通認識だ。

監視塔で今日の区域を聞いてからオペレーターであるマオはその場に残り、命綱をつけた私とコニーは甲板に立つ。前方を私が、後方をコニーが担当し、他のレスキュー隊が私たちの補佐をする。超漁船要塞マグロズは魚影探知機を装備し、その上で更に歌姫である私やコニーの声によるソナー探索を可能としている。これにより常に上下と水平がお互いにカバーし広範囲に360度探索が可能となっている
なぜ漁船に歌姫が必要か? その答えはいくつかあるが、理由のひとつにこのソナー探索にある。この世界ではマグロが空と海を泳ぐように変化した。その過程で特殊なマグロ肌を習得した結果、隠匿率が上がり探索機器が非常に誤作動を起こしやすい。船上に関しては軍艦の計器を使用し、船下に対しては前時代式の感知装置の理論が応用出来たため停船して釣る分には問題はなかった。
しかし堪えぬマグロとの衝突事故、また釣果を上げるために空の男たちが出した答えは〝特殊な声域を持つ歌姫を乗船させ、ソナー代わりにする〟事だった。これによりマグロの魚群を捉えつつ、マグロに襲われた船からの救難信号を受けることが可能となった。

「こちら超漁船要塞マグロズです、ただいま哨戒任務に就いています」
「困っている人はいませんかー! マグロと衝突し操舵不能になっている船はありませんかー!」

頭に付けたインカムが私たちの声を拾い拡張期から辺りにバラまかれる、主な探索方法はこの声にヒットするかどうかだけど万が一に備えて雲の隙間に目を凝らす。何もなければそれが一番、だけどそんな日はほとんどなくて今日もマオから装備品であるインカムに指示が飛んできた。

「救難信号。現場に急行する」
同時に大きく船体が傾き進路を変える。どうやら向こうにある大きな積乱雲の中が今日の目標地点だ。
「了解です!」「りょーかい!」
コニーと顔を合わせて救助準備をしつつ、祈りを送る。どうか今日も一つでも多く命が救えますように、と。
減速しつつ積乱雲の中に突入する。中は嵐が渦巻き少しでも気を抜けば飛ばされてしまいそうだ、命綱を思わず確かめてからコニーと同調するようにハーモニーを奏でる。音感があり毎度正しくこの音域を発する事が出来るのも歌姫に必要な才能で、その上どんな嵐でも歌える胆力が必要になる。助けるために歌う、それが私たちにしか出来ない事——

[*SOS!* (1D6)] → 6 [6.労働者風の人が突然道端で倒れた!]

「どうやら積乱雲内に浮島があるようネ。路上で人が倒れているワ、このままでは周遊するマグロに轢かれるのも時間の問題ヨ!」
愛用のタモを携えたジュリアンの声がインカム越しに伝わる。同時にコニーと甲板を走り出す、レスキューは一瞬一秒で状況が変わりかねない。
「ジョー、上! マグロたちが帯電してる!!」
「!」
コニーが叫んだ声につられ頭上を見れば雷光の間に異なる光を見つけた。流れ星のように見える軌道は風のように早く、数分後には浮島ごと吹き飛ばしそうな勢いでこちらに向かってきている!!
同時にけたたましいブザーが鳴り響き、デッキの上に電飾が灯る。イカ漁船にも似た眩しい光は全て白色電球だ。LEDでは一部の魚種が追ってこない事は前時代に証明済みらしく、この旧式の装飾が灯る時はレスキュー時のみ——ここから先は私たちにしか出来ないショーの時間だ。
「マオ、ステージの準備お願い!」
「展開開始済み……125秒後に稼働可能。私も出る」
「ありがと!」「わかったよ~」

この船、超漁船要塞マグロズには独自の変形機関があり甲板の一部は可動式で即席のステージになる。また常に宙を魚が舞う都合上、完全にレスキュー出来るまでは魚達が嫌う音波を発しなくてはならない、本来魚は側線という機関で水の流れを感じぶつからないように泳いでいるが彼らが空を泳ぐようになった時に水の代わりに感知するようになったのが超音波だった。前時代、人々は魚類に苦戦を強いられ人災も絶えなかった。文字通り血の雨が止まぬ日はなく、人は一度空を手放すまでに追い詰められた。
……しかしクジラ類の一部がメロン器官やメロン体と呼ばれる頭部組織を音波レンズとして利用している事を人類は知っていた。故にこれらを逆手に取り人類の中に同じ器官を持つもの探し、あるいは人工的に埋め込むことで魚類に対抗することに成功した。その最初の姿は伝説的にこう伝わっている。〝優雅に空を往くクジラと共に歌い、まるで空を泳ぐようだった〟と——故に憧れと敬意をこめ彼女たちは歌姫と呼ばれ、この空を行くすべての船に搭乗している。

カウントした覚えはないけれどステージに到着したと同時にDJブースに立つマオが慣れた様子で手元の器具を動かす。同時にサーチライトが雲を割くように光り発見済みの要救助者を煌々と照らし出す。彼女は歌うのはあまり得意ではないけれどレスキューにおける最大の要、DJブース型特殊光波及び音波増減幅変調機の操作者。その指先は私たちの歌声を最大限に生かしてくれる!
それから一瞬マオと目が合ってサムズアップされる。これがいつものステージ準備完了の合図、それを確かめてから命綱を掛けなおす。いつもの立ち位置に立って、深呼吸を一つ。徐々にビートがDJブースから漏れてくる。ドン! ドン! と体を揺らす音に身を任せ音入りを待つ。キュキュッと聞き慣れたスクラッチ音がした、一瞬の静寂。
今この耳に聞こえるのは3人が呼吸を合わせて息を吸い込む音だけ。そう感じた次の瞬間、音の洪水が辺りを包む——
~~ここで挟まるメインテーマ~~

 

[*私の歌を聞けぇ!!!!!* (1D6)] → 2[2.いろいろなアーティストが世代を超えてカヴァーする名曲]

「~~~♪」
「♬~~~」

それは愛を謳う詩。国家というものがまだあった時代から詠われて、かつてクジラを友にした伝説の歌姫も歌ったといわれる古い曲。今使っている音源もマオがスクラップ置き場から苦労して見つけたCDって言われる前時代的記憶媒体から引っ張り出してきた代物だし、最近は次世代機として特殊な波長を活用できるAIが試験段階にまで来ている。……歌姫はそのうち必要なくなるかもしれない。ちょっと前まではマオのレトロ趣味を珍しいな、って思ってたけどその内私たちもそうなっちゃうのかもしれないって考えたら眠れない夜もあった。
でも今この瞬間はまだAIに頼れない。私たちでないと救えない命がある! だからどれだけ波しぶきを浴びたって、いくら船が揺れたってこの声を届けるし、この手が届く限り伸ばし続ける!!

コンクリートで舗装された道路を破壊しながら重圧な船体がマグロたちから要救助者を守るように幅寄せされる。ズズズ……と思い音を響かせあと数mの所で停止した。船橋から下船の許可がインカムに伝う……命綱のチェックをしてからマオがステージを操作し道路上に降下させる。宇宙船での船外活動と同様に命綱の長さは活動範囲といっていい、これが切れたら私たちも生きて帰ってこれる保証はない。ここから先は本当に命がけで歌いつつもマグロたちや魚影が去るまで要塞化した船体の陰に要救助者を避難させ歌い続ける耐久戦だ。
メバチマグロは平均重量150kg、キハダマグロは200kgとも言われている。それらは自由に空を泳ぐ中、私たちは命を賭して歌いながら臨機応変に判断し救助しなくてはならない。

「それでも、私たちに! OUMAに出来る事があるなら!!」
「この声が枯れたって手を伸ばす!!」
「……絶対に、助ける……」

「だから!」「私たちの!」「歌を聞け―!」

3人の思いと音がひとつに重ねる。もう個々に視認できる範囲にサイリウムに似た光度で明滅するマグロの影が見える——インカムからマグロたちの着弾は20秒後だと告げられる。それに返答する代わりに私たちは笑った。ステージに立つときは笑顔、それが子役アイドルグループOUMAの決まりだから!!

 

~~なんか挟まる良い感じのBGM。そのままEDへ~~

 

【次回、最終回「超漁船要塞マグロズ」、プレイログ③に続く】

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