The London Season ロンドンは恋の季節

プレイログ

このプレイログについて

The London Seasonは、社交界にデビューする淑女となってロンドンの社交界で目的の達成を目指すソロジャーナルです。
言葉の意味としては、「The London Season」とは、一般的には社交界のイベントが密集している春と夏のことです。この時期は地方在住の貴族などもロンドンへ集まり、様々なイベントに参加します。

ジャーナル

淑女について

1874年のロンドンシーズン。貴族たちは自分の子女がこの季節をものにすることを切望している。女の務めは結婚すること。そして家を守り、子供を産むこと。一度結婚すれば、夫にはすべてを差し出さなければならない――富、財産、体、とにかくいろいろなもの。
心、ですって? 面白いことに、これが取り上げられることはなかった。「女にも心がある」と知ってる男なんか、一人もいないからね。

私の名前はアデラ。新たなロンドン・シーズンを迎える一人の淑女。
父は子爵の出で、今はコークス・製鐵関連の企業を複数経営している。だが、家格の足りなさは父の企業経営の様々なところで障害となっている……こんな家で一人娘に期待されるものは、「ジャッバウォックを見るより」明らかってやつね。

さて、私はこのロンドン・シーズンに何を求めているのかしら。

淑女の目的…♦の6/婚約を申し込まれること

やってやろうじゃない。誰もがびっくりする男を射止めてみせるわ。
なんせ、私にはこんな強みがあるのだから。

♣のA
淑女の武器…技能・教養
淑女の支援者…両親

父と母からのバックアップもばっちり。それに加えて、言っちゃなんだけど私は頭が切れるわ。たいていの面倒ごとなんか、笑顔も崩さず一蹴してやろうじゃないの。
けれど、こんな私にももちろんあるわ。その……「憂慮すべき点」というやつがね。

♦のA
淑女の弱点…富・財産
淑女の敵…両親

父の企業は資金繰りが厳しい。これを知られると、少し都合が悪そうね。
何より、父と母が納得する縁じゃなかったら、いろいろな方法で妨害されかねない。そういうところがあるのよ、あの二人にはね。

さて、これで準備は整ったわ。
ロンドン・シーズンはだいたい16週間。2週間ごとにイベントを進めていく形になりそうね。

【wave1】

この二週間で顔を出すイベントは、以下の5つ。

♠の3…ガーデンパーティ

♣の8…ボートレース

♥の7…展覧会

♣のK…幼馴染からの招待

♣の2…品評会

私は薔薇の品評会に席を連ねて、新種の薔薇を見ることを心から楽しんだ。どんな分野であっても、新しい技術や発想に触れるというのは素晴らしいものだわ。園芸についてはいくつかの知識があったから、種苗の開発会社の方の説明にいくつか質問をしたら……薔薇好きの老貴族に、いたく気に入られてしまった。
そのあとすぐに老貴族のガーデンパーティにお呼ばれしたから、古き良きイギリスの話を沢山聞いてきた。古い話を聞くのはまったく嫌いじゃないけど、ロンドンに住む年寄りはロンドンの外には世界がないと思っている気がするわ。不快感を出さないように、飲み物を楽しんだ。

ボートレースには若い貴族たちの集まりに近づいたことで招かれたのだけど、実は少し楽しみ方が分からなくて退屈してた。
そうしたら、近づいてきた青年がいた。実業家の息子だとかいう男の子で、名前はシリル。私より1つ上みたい。
彼の説明は上手かったし、なんだか飾り気のない印象で会話も自然と弾んだ。なんだかずっと笑ってて、上品に取り澄ますまで時間がかかったわ。

そんな話を幼馴染のケイトとのお茶会で披露したら、ケイトはティーテーブルを乗り越して身を乗り出し、真剣な顔になった。
「そんな奴、絶対遊んでるわよ」
「そうかなあ」
だとしたら、彼に近づくのは辞めたほうがよさそう。遊んでる男といくら仲良くなったって、結婚はできないからね。

展覧会では歴史を題材にした絵画をじっくり鑑賞して、歴史と美術への見識を深めることができた。シェイクスピア喜劇を題材にした妖精の森の絵があまりに美しくて足を止めていたら、白髪の貴婦人が隣に立ってゆっくりとその一節を諳んじたから、続きを返したら……華やかな笑顔を向けられて、思わずどぎまぎと黙り込んでしまった。
彼女も名のある老貴族のご家族みたいだ。場所柄、そんなに長々と話せたわけじゃないけれど、互いに名前を憶えて、またいつか、と手を振ってお別れした。今はこれで十分。

♠の7/♣のQ/♣の10…マリーゴールド・エンドウ豆・アマリリスの花束。目標に反する人物から贈られてくる。

シリルから花束が贈られてきていたわ。
変わった花束で、エンドウ豆のつるがくるくると弾んでいる。こんな変わったことをするからには、彼ももちろん知ってるんだろう――エンドウ豆を含むブーケは、「月明かりの下の逢引き」の申し出だ。
行くつもりはないけど……すっぽかすのはよくないから、お断りのお手紙を出しておいた。

【wave2】

♦の9…晩餐会

♦の4…乗馬

♥のA…天文夜会

♠のA…茶会

♥の5…詩文の朗読会

ケイトの弟が主催している詩文の朗読会に参席したら、隣にシリルが座ったらさすがにちょっと気まずい思いをしたわ。詩文自体はどれも素晴らしくて、参加者の文学的素養と新しく若い感性が言葉に様々な可能性を与える……そんな意義深いイベントだった。
シリルは帰り際に私の手首を掴んで、じっと見つめてからその場で書きつけたメモを寄越した。シリル主催の天文夜会……これまですっぽかすのは、さすがに申し訳ないわね。

ということで赴いたシリル主催の天文夜会は、なんだか不思議な催しだった。見たこともないくらい大きな望遠鏡があって、それ地平線近くの星を見て……磨かれた夜光石で作られた杯に少しの氷とお酒が注がれて、それに控えめに口をつけながら、風変わりな参席者たちと、星と遠い国の話をした。
特に仲良くなったのは……

♥の8…ゴシップ。ゴシップ好きなのか、ゴシップの絶えないお騒がせ人物なのか。

その名前は、私でも聞いたことがあった。社交界中の傑物たちと次々に浮名を流しては、求婚も求愛も蝶のようにひらりとかわして次の愛を探す、恋に生きる淑女……オリヴィア嬢。夜の野外に運び出された丸椅子に脚を組んで座って、夜光杯を傾けている。
「アデラ、と言ったわね」
いくつかの本について話が弾んだ後、彼女は長い睫毛を上げて目配せをくれた。
「あなたは陽の光が似合いそう。次に会う時は、お茶会がいいわ」

オリヴィア嬢の茶会は、シリルの夜会以上のクセモノぞろいだった。
社交界の人ばかりではないというのが面白かったわね。文筆家、道化師、職人、旅人、探偵。様々な職業の人が集まって、普段ならまず聞くことのないような興味深い話が聞けた。
特に興味深い人物と言えば……

♥の6…イナゴが好きな人。

「cricket(クリケット)がお好きなんでしょ?」
私が首をかしげて尋ねると、彼は控えめに目を伏せてはっきりと言った。
「criquet(イナゴ)の研究をしていまして」
まあ、と私は目を丸くする。とはいえ、都市部の人口の増加に伴って小麦の供給不足が深刻になっているのはよく言われていることだ。農作物の害虫の研究家は仕事がたくさんあって、とても忙しいらしい。
「新しい農薬を開発しているんです」
こんな話、ダンスパーティーや晩餐会ばかりしていたらなかなか聞く機会がないわ。私はしっかり向き直って、農薬についての話を一言一言頭に叩き込んでおいた。

予定のない日は乗馬を楽しんで、愛馬の鬣をくしけずった。
こんな日も、たまには悪くないわ。
でも、いつまでものんびりしてられないのよね。なんせ、私はこのロンドン・シーズンでプロポーズを勝ち取らなければならないんだから。

私は腕まくりをするくらいの気持ちで、老貴族の大規模な晩餐会へ赴いた。
色々な名士とお話をする機会が設けられたから、気合が入ったわ。
そして、私が出会った特に印象深い人物と言えば……

♣の9…エリート騎手

誰もがその名前を聞いたことがあるスター選手らしいわ。競馬場に出入りする人ならだれでも、ということだけど。華々しい職業に本人のルックスも華やかで、人目を引く人物ではあったけど……残念なことに、私はロマンスなんか求めてないのよね。必要なのは、家格がある男性からのプロポーズ!
彼が続けようとした話をやんわりと止めさせて、私はその席を離れ、名士たちとの会話に引き続き花を咲かせた。

色々な人に出会っていることには、自分でも驚くわ。広くて狭いのが社交界というもの、出会いの一つ一つが次につながっていると思いたいところね。
また花束が届いているみたい。

♠のQ/♠の9/♣の6…マリーゴールド、カーネーション、ドイツスズランの花束。目標に反する人物から贈られてくる。

カーネーションですって? 普通の感覚だったら、人に贈る花じゃないわね。カーネーションを人に渡すとき、そのメッセージはひとつだけ……「抗議」よ。
堂々としたカードがついていて、そこには差出人の名前もあった。「ヘクター」……私が晩餐会であしらった花形の騎手、その人の名前みたいだ。
自分を袖にした女に「抗議」ですって? よっぽど遊び慣れてて、自信がある男なのね。

【wave3】

次の二週間でやってくるイベントは、次の5つだ。

♣の3…ドレスの品定め

♦のJ…新しくできた知り合いに声を掛ける

♦の8…クローケーの試合

♠の5…ボクシングの試合

♥のK…幼馴染から声を掛けられる

クローケーの試合とかボクシングの試合とかの観戦をまじめにこなしたが、特に私の目標にはつながらなかったようだ。つくづく、退屈な催しね。

久しぶりにやってきた心躍るイベントは、オリヴィア嬢と一緒の仕立て屋に出向いてドレスの品定めをする、というものだった。
「あなたって、お茶会にまでコルセットを締めていくのね」
オリヴィア嬢はふふんと笑い、最先端のティー・ガウンのサテンの裾をひらひらと摘まんだ。
「今どき流行らないわ。こういう気楽な格好で、それでもオシャレに決めていくのがロンドンの淑女というものよ」
「コルセットを締めなくていいのは嬉しいけど、だらしない女と思われないかしら?」
「思われない、と言いたいところだけど……そうね」
オリヴィアは挑むように目を細め、私の額をつついた。
「思わせとけばいいのよ、そんな古臭い価値観のご老人になんか」

新しいものを吸収するとすぐに使いたくなるものだ。私は幼馴染のケイトの家に遊びに行くときに、さっそく新しく仕立てた楽なティー・ガウンを着ていった。
この格好は、ケイトには好評だろうか?

♥のQ…ケイトはとても気に入っている。更に…

ケイトはティー・ガウンのデザインをいたく気に入って、興奮気味にこれをどこの店で仕立てたのか尋ねてきた。店の名前を伝えるとしきりに羨ましがる。どうやら、オリヴィア嬢のような常連客の紹介がないとなかなか縁のない仕立て屋だったみたいだ。
オリヴィア嬢とケイトと、三人でお茶会をするのはどうかと提案してみたが、ケイトは少し怯んでいる。彼女の浮名が先行して、ちょっと踏み出せないでいるのね。
けど、仲良くなれる二人だと思う。私は思い切って、三人でのお茶会を提案してみた。

新しい友人オリヴィアを加えた三人のお茶会は、いい雰囲気だったかしら?

♥のJ…和やかで楽しいお茶会になった。更に…

オリヴィアとケイトは目に見えて意気投合している。ケイトは私と同じように地方の町の出身で、オリヴィアみたいな都会的で洒脱で頭の回転が速い女性は初めてだったみたい。ケイトも元々頭のいい子だから、目を輝かせて時間を忘れて会話に没頭していたわ。

そして、また私のもとにお花が届いた。

♠のK/♠の2/♦の3…デイジー・ゼラニウム・ヒマワリの花束。目標に反する人物から贈られてくる。

デイジーは無垢な友情の証。心憎いメッセージね。ケイトが作ってくれたコサージュを、ドレスの胸元に飾った。
ケイトはどうやら、私が家のために結婚することをそんなには歓迎してないみたい。私が楽しく、幸せに生きたほうがいいって……でも、そんなのは絵空事。お伽話よね。

【wave4】

春の時期も終わる頃だけど、こんな催しがあるみたい。

♣の5…読書クラブ

♠の6…フラワーショー

♦のQ…家族からの呼び出し

♥の2…女王陛下の舞踏会

♠のJ…新たな知人からの呼び出し

親友のコサージュを付けて、女王陛下の舞踏会に臨んだわ。ロンドン・シーズンも上半期を終えようというのに、まだ見込みのある出会いに巡り合ってない。これは気合を入れなきゃね。
伝統的に、折り目正しく、そして華やかに。私はダンスを披露して、そして新たなパートナーの手を取った。

♥の7…噂の美形。

王家に連なる名士の一族、その華やかなる顔ぶれの中でもひときわ社交界の耳目を集める若き青年実業家……リーヴァイが、その美しいかんばせに微笑みを乗せて私の手を取った。
私は血が熱くなるのを感じていた……これって、チャンスじゃない? きっと彼とお近づきになれば、両親ももろ手を挙げて歓迎してくれるに決まってる。
完璧なダンスは周囲の目を引いていて、そんな注目の中でもリーヴァイの笑みは美しかった。
「ヒマワリを?」
そんな彼が突然訪ねてきたから、私は瞬きをしてから胸のコサージュを眺める。
「親友からの贈り物なんです」
笑んで応えると、彼は少し考えこむように黙り込む。
「よく似合っていますね」
はにかむような一言と目配せは、妙に可愛らしい気がした。

舞踏会の次の日には、家族との会食が予定されていた。つまり、進捗報告会というわけね。
知り合った人物たちひとりひとりについて報告すると、父は意外なところに反応した。
「アンヴィル夫人とお近づきになったのか?」
アンヴィル夫人というのは、シェイクスピアがお好きな老婦人のこと。芸術に造詣が深いみたいで、お話をよく聞かせていただいていた。
アンヴィル夫人はかなりの名家のようで、そんな家と私がごく何気なく交流を持っていることは父にかなりの衝撃を与えたみたいだった。私はここぞとばかりに言った。
「お父様、私が上手くやっているとお思いなら……絵画や演劇の鑑賞をくだらないとおっしゃるのは、もうこれきりにしていただきたいですわね」

花の展示会に足を運んだのは、シリルからのお誘いがきっかけだった。シリルはもう私に花を贈ったりはしなくなったけど、私との会話は楽しんでくれるようだ。
「君が花が好きかどうか、自信がないんだけど」
爽やかに笑んで言う彼に、私は首をかしげる。
「どういう意味かしら?」
「実利的じゃないという意味さ」
「ふふん?」
特にならないことには興味がない女。遠回しにそう言っているみたいね。私は新種の薔薇の前に立って、軽く腕組みをした。
薔薇の品種は私もそれなりに頭に叩き込んでいる。この薔薇の特徴や品種の系図についてすらすらと述べ、柔らかな棘を細めた目に映した。
「これだけのものが作られる技術は、この上なく実利的だわ」
「……」
シリルはしばらくぜったくしてから笑いだし、目元を軽く隠して「敵わないね」と言った。

ケイトとささやかな読書会を開くことにして、私はケイトを我が家のティールームに招いた。
新進気鋭の詩人たちの四行詩を二人で楽しみながら、いつしか話題はこのロンドン・シーズンについての話に移行していた。
「チャンスもあるけど、危機もある。それがロンドン・シーズンよね」
「何かあったの? ケイト」
「何かというか、うーん……世はすべてこともなし、とはいかないものね」
さっきまで読んでいた詩をすらりと引用するものだから無粋に食い下がることもできず、私は肩をすくめてメイドにお茶を持ってくるよう頼んだ。

この上半期を締めくくる最後のイベントは……新しい知り合いからの招待だった。
そう、リーヴァイからのね。
午後の長いお茶をたっぷりと楽しんで、お互いの興味があることについて言葉を交わす。そして、彼は最後に私に花束を渡したの。

♣の7/♥の4/♦の7…アマリリス・サンザシ・クチナシ。目標にかなった人物から贈られてくる。

希望、決意、そして秘密……その花束は、彼の言葉そのもののようだった。
私は一歩引いて距離感を外し、彼と触れ合わないように花束を手にした。そして折り目正しく辞儀をして、彼の邸宅を後にした――

私は迷っている。
目的に対して踏み出したのは事実。
でも――本当に、これでいいのかしら。

【ジャーナルの中断】

ロンドン・シーズンの上半期が終わる。眩しい日差しの中に鳥が歌い、緑の風が吹き渡る、熱く激しい下半期がやってくる。
まだ少し迷う気持ちはあるけど……私にとって必要なものを手に入れるには、この「季節」を利用するしかなさそうね。

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