はじめに
『DC44 Shakedown』は、対戦型SFレースTRPG『Double Charger 44』のマスターエディションに収録されているソロジャーナルRPGです。AGSマシン(未来の乗り物)と出会い、練習と調整を経て大会へ出場するまでの物語を体験できます。
本プレイログはたかぽんが実際に『DC44 Shakedown』を実際にプレイし、プレイログにまとめたものになります。
はじめてのソロジャーナルプレイログの挑戦になります、拙い文章ではありますが、最後までお読みいただければ幸いです。
プレイログ
⓪ある日のDC44世界
『次のニュースです。セントラルハイウェイストリートD2で一般車両が横転する事故がありました。
車内にはAGSマシンの最大手メーカーであるランバスモーターズの役員とその家族が乗っていたとみられ、運転手とその家族はその場で死亡が確認されました。
また、同時刻にはストリートレーサーグループである「ブルードラゴン・クラブ(BDC)」のAGSマシンの目撃情報があることから、警察はBDCと横転事故に何らかの関連性があるとみて調査を進めています』
あるパイロットの日記
ブルードラゴン・クラブ、BDCはバカやるには最高の場所だ。
ショップからAGSのマシンやパーツをパクって、ヤベエ改造で仕上げてよ。
そんで、ハイウェイかっ飛ばして、ノロノロしてる車のケツを蹴っ飛ばしてやるのさ。
最高に気持ちいいし、ストリート俺らBDCにゃ逆らえるのは誰もいねえ、サツですらもな。
そうやってバカやってたある日、メンバーが1人の怪我した女を連れてきた。
いや、拉致って来た、って言うのが正しいかもな。
人助けなんざ俺達BDCがやるわけねえだろ?
アイツが女に手つけるつもりで連れてきたんだろ。それか身代金だ。
俺が1つ言えることは、その女は相当上玉の嬢ちゃんだったってことさ。
昨日、AGSの最大手メーカーであるランバス・モーターズ社の偉いさん乗せた車が自爆したとかいうニュースを聞いた。
乗ってたヤツは全員死んだって聞いたが……どうやらアイツは、まだギリギリ生きてたらしい女を見つけて手当して、ここにつれてきたってことらしい。
大企業の偉いさんの娘だ、俺らストリートのはぐれ者どもなんかとは住む世界が違う。
俺だったら身代金取るね。そのカネで高性能なAGSマシンが新車で2台は買える。
そんな感じで良いように使われそうだとはちっとも思ってねえ女は、アイツに「助けていただいて、ありがとうございます」なんてご丁寧に礼を言ってやがったぜ。
呑気な嬢ちゃんだぜ。どうせアイツ下心で連れてきたクセによ。
鼻の下伸ばしてるアイツに代わって、俺は女の名前を聞いた。ここには野郎しかいねえが、いつまでもいいとこの嬢ちゃんを「おい、そこの女」って呼ぶのは格好つかねえしな。
女はこんな薄汚ねえアジトに見合わねえ笑顔して、こう名乗ったよ。
「ソフィー・ウィスタリアと申します。どうぞお見知りおきくださいませ」
➀出会い
- マシンとの出会い:4(生産台数の少ない希少な限定モデルを買った。マシンのクオリティ+7)
- マシンのデザイン:5(何らかの具体的なモチーフをもった特徴あるデザイン)
- マシンのカラー:10(グレーのボディカラー)
ソフィーがここに来てから数日が経った。
拾ってきたアイツにはもったいない女だ、近々、ソフィーの身柄と引き換えにランバスの奴らにたんまりカネを用意してもらうとしようじゃねえか。
ってか、よくよく考えてみりゃ、金持ちで不自由してなさそうな嬢ちゃんがいきなりこんな薄汚えアジトに拉致られてこられようものなら、悲鳴の1つでも上げそうなモンだが。
取り乱すでもなく、文句を言うでもなく、むしろソフィーはアジトに馴染んでやがった。
そんな俺たちのアジトでくつろげるようにすらなったソフィーが(俺にはキチっと正座してるように見えたが)誰もまだ乗ってないAGSマシンを見つめてた。
BDCのメカニック担当が勢いでヤミで買ったグレーのマシンだ。ランバスが普通に売ってるサファイアウイングをモチーフにしているらしい。
俺には全くの別モンに見えるがね。そもそも”サファイア”ウイングを名乗っておきながらなんでグレーなんだよ。
まあ外面はどうでもいい、なんでも、見たことないようなエンジンが積んであって、トップスピードは宇宙一だとかメカニックはぬかしてたよ。
だが、誰も乗ろうとはしなかった。
正確にはコックピットが店売りマシンとは全然違っててどうやって動かせばいいか全くわからんから、誰も動かせないのさ。説明書もないしな。
まあ、そんなグレーのよくわからんマシンをソフィーは指さしてさ。
「私、あのマシンに乗ってみたいのですが。よろしいでしょうか?」
って言ったんだ。
みんなゲラゲラ笑ってたぜ。俺も笑った。
だってよ。女のパイロットなんざ今時珍しくはねえが、ソフィーは箸より重いもの持ったことなさそうな箱入り嬢ちゃんなんだぜ?
そんな貴族様がコックピットに乗りたい?笑わせるぜ。
まあ、ダメとは言わねえ。俺たちは笑いながら、ソフィーを乗せてやったさ。
このわけわからんマシンだって、パイロット不在でホコリかぶってるより、世間知らずのお嬢ちゃんの暇つぶしにでもなったほうがいいだろうよ。
と、思ってたんだが。
ソフィーはキラッキラの笑顔で、やけに慣れた手つきであっさりエンジンを入れやがった。誰も起動すらできなかったマシンをだ。
「冗談だろ……」
って俺は呟いちまった。実家がAGSのマシン売ってるから運転もお手の物ってか?
いや、そんなんじゃねえだろ。俺がソフィーの親父や兄貴だとしたら絶対こんな危ねえモン触らせたりしねえよ。
ソフィーはコックピットから顔を出して、何が起こったかわかってねえ俺とメンバーの面々に嬉しそうに言いやがった。
「今度皆様のお出かけにご同行させて頂きますね」
マジかよ、ソフィーは俺たちと、ストリートレースに出たいってことか!?
ここで「ダメだ、危なすぎるだろ!」って言うべきだったのかもしれねえが、俺たちは”来るもの拒まず”、この誓いを破ったらBDCじゃねえ。
俺とメンバーたちはあっけにとられたまま頷いた。同時に、ソフィーは人質から俺たちの仲間になったのさ。
それと、このグレーのマシンの名前、乗るからには決めなくちゃならねえ。
そうだな、灰色してるから……サファイアじゃなくてヘマタイト。
こいつのエンジンはウイングって感じじゃねえ。音的にハウンドってとこだ。
合わせて「ヘマ-ハウンド」でどうだ?って言ったらソフィーは「素敵な名前ですね!」って気に入ってくれたよ。
P.S.
後で思ったんだが、ソフィーの「同行させていただきますね」を俺たちみたいな荒っぽい言葉に直すなら「私を連れて行きやがれ、分かったな!?」ってことだったかもしれん。俺たちに拒否権はなかったんだな。
②:練習
- 練習の成果:2(かなり上手くなった。練習すれば大抵のコースは走れそうだ。マシンのクオリティ+3)
ソフィーのことを箱入り世間知らずのお嬢ちゃんとか見くびってた数カ月前の俺をぶん殴ってやりてえ。
アイツは初めてヘマハウンドでハイウェイに出た時から俺たちについてきやがった。
俺たちは200km/hは出してたはずだ……!一般車両も走ってるハイウェイを200で飛ばす嬢ちゃんがどこにいるってんだよ!?
しかもソフィーは無線で「楽しいです」とかぬかしてたぜ。200で飛ばしながらな。
冗談じゃねえ……何回もストリート走ってる俺でさえ、この速度で飛ばせば感じるのはギリギリのスリルなんだ。
アイツの「楽しいです」は、まだ余裕があるようにさえ感じられた。
それから数カ月、ソフィーは何回もストリートを走って腕を磨いていった。
アイツの才能と吸収の早さには恐れ入ったよ。ソフィーとヘマハウンドの走りのキレは回数を追うごとに増していった。
ヘマハウンドは一般車両をぱっと見、削ってるんじゃないかってくらいスレスレを縫って暴れてやがる。
今や俺たちは置いていかれる側だ……。
で、今日もハイウェイをソフィーを連れて爆走してたんだが、その時は運悪く、サツ共がハイウェイを検問しててな。
ハイウェイのいたるところで、サツ共がバリケードで道を封鎖してやがった。
その時、ソフィーは先頭を走ってたんだがどうしたと思う?
……アクセル入れて、380km/hでサツのバリケードを吹っ飛ばして強行突破したよ。躊躇なくな。
そして「道を塞がないで頂けます?」だ。アイツもう立派なBDCの一員だよ。
ああそうだ、最初にソフィーをBDCに拉致って来た奴のことなんだが、連れてきた当初は「俺の女にしてやるぜ」とか息巻いてたくせに、今じゃすっかりその気をなくしちまったみたいでな。
「子犬ちゃん拾ったつもりが、とんだ狂犬拾っちまったぜ……」ってビビッてやがる。
その声、無線が拾っていたみたいでな。俺も聞いたし……
「エサ代増やしてくださいね?」ってソフィーから返ってきた。目が笑ってない笑顔なのが容易に想像できたよ。
③チューニング
- マシンの長所:3(ストレートでの最高速度を求めた)
- マシンの短所:3(最高速度、高速域の挙動など)
- 作業環境:4(家族や友人に協力者がいたので、助けを借りた。マシンのクオリティ+1)
「なるほど、こりゃヤミに流れるわけだ」
ヘマハウンドのエンジン周りを点検していたメカニックはため息をついた。
どうやら、ヘマハウンドのエンジンがダメらしい。勢いで買ってきたのはテメェだろうが……。
が、俺から見てヘマハウンドのエンジンにダメな部分は見当たらない。
むしろ俺たちが乗ってるような型落ちのサファイアウイングに比べてパネェ性能を誇る最強のエンジンにすら見える。
「あの、ヘマハウンドにどこかよくないところがあるのでしょうか……?」
ソフィーは風邪ひいたペットを心配するような目でヘマハウンドのあちこちを見回してる。犬が犬の面倒見てるってか、おっとコイツはソフィーには言わないようにしとくぜ。
だが、俺から見たらヘマハウンドのエンジン回りは別に異常があるようには見えねえ。
むしろ俺たちが乗ってるロートルのサファイアウイングに比べてヘマハウンドのエンジンはパネェ性能してるようにも見える。
「何がダメなんだよ。てか分かってるならさっさと直せってんだ」
俺はメカニックに吐き捨ててやった。テメェができなきゃ誰ができるってんだ。
「無理だ。無理だってことを今からアホのお前らでもわかるように説明してやる」
後でシメてやるこのクソ野郎。その前にまずは話を聞いてやろう。
「まずコイツの最高回転数が出せたらマジでやばい。ストレートならプロ仕様の奴もぶち抜けるだろうよ」
そいつはスゲェな!俺たちがプロに下克上ってか!ソフィーならありえねえって言えねえのが期待させるぜ!
ざわついた周囲とキラキラした目をしてくるソフィーにメカニックは舌打ちした。
「”出せたら”な!なんでヤミに流れてると思ってる。出せねえんだよ」
「こいつ高回転域の発熱が半端ねえんだよ。ラジエーターの冷却が追い付かなくてすぐオーバーヒートしやがる」
そう言いながらメカニックはヘマハウンドのエンジンをガンガン叩いた。
バカ野郎、エンジンを工具でぶん殴るメカニックがどこにいやがる!
「あぁ、そんなに乱暴にしないでください!壊れてしまいます!」
ほらソフィーもそう言ってやがる。
「いいんだよ。ソフィー、アンタは不満かもしれんが俺ができるのは汎用のエンジンに乗せ換えて調整するだけだ」
「オーバーヒートのせいでサツにパクられるメンバーなんて笑い話になんねえからな」
「え、えぇ……貴方がそう仰るのなら」
ソフィーはよく分かんねえから任せるとばかりに頷いた。
「おいメカニック、諦めが早ぇんだよボケナス!」
「エンジンを下げるなビビり野郎!」
「ラジエーターがクソならそいつもイイのに付け替えろ!」
周りのBDCメンバーからヤジが飛ぶ。俺もそう思う。
「簡単に言うんじゃねえ!コイツに合うラジエーターなんざいくらすると思ってる!?」
「それに、ラジエーターがあってもそれに合うOSやスラスター周りの再調整だってチンピラができる改造じゃねえっつうの!」
クソ、ヤジに加えて空のスプレー缶が飛んできやがった。
だが、メカニックの言うことも分からなくはねえ。
値段の問題もあるし、プロ仕様のパーツはプロにしかいじれねえ。
なんせ俺たちのメカニックはクソみてぇに役立たずだからな。
④発生した問題
- 発生した問題:4(マシンを仕上げるのは簡単ではなく、今後さらに多くの時間を費やす必要があった。最悪の場合、時間のために他の趣味や仕事を諦めなければならない可能性もある。)
ソフィーがBDCの一員になったのにも慣れてきたころ。
『「匿名」さんが通話を求めています。』
BDCが使っている通話アプリに1本の電話が入った。
一応出てやると、相手はスーツ姿のいかにもカネ持ってそうって感じのオッサンだった。
「君たちがブルードラゴン・クラブかね?……取引をしたいのだが」
取引と聞いて、カネに目のないメンバーがぞろぞろと集まってくる。
「取引、て言ったな?」
「クレジットはいくら用意した?」
「誠意見せろよオッサン!」
あいつら一言目からカネの話か。俺が言えたことじゃねえけどな。
オッサンは苦虫かみつぶしたツラでクレジットの入ったカードを画面上に見せてきた。どうやらこのオッサンは話が分かるやつらしい。
「数カ月前、ランバス・モーターズの重役が運転していた車が事故を起こしたニュースは知っているな?そこで君たちが事故現場から生き残ったものを救助したという情報を聞いた」
「ーー私の娘なんだ。頼む、いくらでも払う。返してくれないか」
生き残りってのはソフィーのことなんだろう。どんな伝手をつかったんだか。
そういや、もともと俺たちは身代金目的でソフィーを連れてきたんだ。
向こうからカネを用意して待っててくれるたぁ都合がいいじゃねえか。
しばらくして、カネはどうでもよかったメンバーのソフィーも、メンバーの集まりに気になってアプリの画面上に顔を出す。
「どうかなさいましたか?あっ……」
ソフィーは相手のオッサンを見た後に息をのんだ。間違いねえな。
「xxxxx!生きていたんだな!本当に良かった……!さあ、私と家に帰ろうじゃないか!」
オッサンがどんな名前を言ってたかは忘れた。俺はいらねえことは覚えない主義なモンでね。
ソフィーは画面越しにオッサンと数秒間見つめあった後。
「人違いです。すみませんが、どちら様でしょうか?」
軽く会釈してそういった。
「なっ……そんなはずはない!そうだ、事故のショックで混乱しているんだろう、きっとそうだ!父だ!君は私の娘だ!」
あの時のオッサンのひどく動揺した顔は見ものだったぜ。
まあ話にならねえことはわかってた。ってことでオッサンの端末の画面を俺とダチの顔と中指で埋め尽くす。
「人違いっつってんだろオッサン。交渉は決裂だ」
「馬鹿を言うな!お前らみたいなクズどもにこれ以上娘を預けられるか!」
本性出してきやがったな。後ろでソフィーは呆れたように首を振っている。
「そうだな、俺たちはクズだ」
「だがな、ダチだけは売らねえんだよ!!」
『通話を終了しました。』
「皆様、ありがとうございます。私のわがままを聞いていただいて……」
ソフィーのさっきよりも深いお辞儀に俺はサムズアップで返した。
いいってことよ。BDCはもともとオモテじゃ訳ありのやつらばっかりだ。
オッサンと決別した理由は気になるが、聞かれたくねえことは聞かねえのがBDC流のマナーってもんだ。
だから、ソフィーもオモテじゃ訳ありのやつで、詳しくは聞かねえ。
そして、俺たちのダチってことでいいじゃねえか、なあ?
⑤結末
クオリティ:12
グレード:A
「良いマシンだ。相手にとって不足はない」
ソフィーとヘマハウンドが、ライセンスを取ってプロの世界に行く日がやってきた。
アイツはこんなところでバカやるだけでおさまるタマじゃねえ。
ヘマハウンドの実力を引き出すには俺らのクソ腕のメカニックじゃなくてプロに見てもらうのが一番だ。ついでに賞金でも持ってきてくれりゃ、ウチの懐も潤うね。
「皆様、お世話になりました」
ヘマハウンドにはBDCのステッカーが貼ってある。
俺は正直これでプロにいくのかと自分チームのメンバーながらぎょっとしたね。
なんせ「私はクズです」って宇宙中に広めるようなもんだぜ?
けど、ソフィーはそんなこと言ったってやめやしねえだろう。
ソフィーは、BDCとして、プロの世界で名を広げるつもりだ。
「頑張れよソフィー!」
「たまには直接顔を見せにこい!」
「応援してるからな!」
ソフィーはそれに元気よくうなずいて、手を振った。
「はい!行ってまいります!」
俺もモニターで見てるぜ。
BDCのヘマハウンド使い、ソフィーとして、一発派手にブチかましてこい!
コメント
超面白かったです!!アツくてパワーのあるストーリーで、ソフィーさんがすごく魅力的でキラキラ輝いていて、夢中で読みました!
ぱむださん、お読みくださりありがとうございます!そのような感想をいただけて感激です!
こちらはDC44というTRPGの設定を使用して作成したソロジャーナルになります、よろしければ参考にしてください!