このジャーナルについて
「Eleventh Beast」は、1746年のロンドンを舞台に、獣狩りを聖務とする王属異端審問官となって、神に背く冒涜的なる存在である「11番目の獣」を狩るゲームです。
ジャーナル
「虚実を見定めよ」
薄闇の向こうで、しわがれた声がささやく。
「秘鍵を回せ」
声は唱和し、どこから響いているともわからない。
「獣を狩れ」
私は微笑を浮かべたまま項垂れて、その声に耳を傾ける。
「智慧こそ汝の武器と知れ――」
「しかり」
私はゆっくりと立ち上がり、聖印に指を触れた。
「此度の聖務、王属異端審問官メイナンが謹んで拝受いたします」
私の名はメイナン・サロモン。本来なら「サー」をつけて呼ばれるような身分だが、偉ぶらないのが私のいいところさ。
サロモン家は代々、「獣」狩りを行っている。
「獣」が初めてこのイギリスに現れたのは、1603年……ジェームズ王の御代だった。人を食らい、闇に消える、おぞましき存在「獣」。「最初の獣」を倒しても、13年ごとにそれは現れた。知識を蓄積し、士気を保ち続けて立ち向かえるのは、最も賢く勇敢なる血筋、サロモンの王属異端審問官をおいて他になかったというわけだ。
私はその血筋でも最も賢く、勇敢で、更に言うなら美男子だ。だが、生まれつき謙虚にできているのでね。テムズ川の両岸にうようよひしめいているような庶民に混ざって情報収集をするのも、私になら容易いことだ。
調査
1746年5月13日。
オールハロウズ大教会の地下で、私は資料を確認していた。ここには「獣」に関するあらゆる情報が集まる。
今回出現した獣は、すでに複数の被害をもたらしているようだ。
獣の名前…3-5-3/The moon worm of Hogesdon
ホッデスドンのムーンワーム。最初に発見されたのが夜間のホッデスドンであったこと、腕も足もない奇怪な姿であったことがわかっている。その長い巨体に開いた凶悪な口で、無辜の市民を殺害してきたようだ。
情報提供者…4-3-1/ウィリアム・クラーク。目撃者である
ロンドン市民であるウィリアム・クラークは、獣を目撃している。まずは彼に話を聞くのがいいだろう。
トークン配置…4/ロンドン橋
ロンドン橋はこのオールハロウズ大教会からほど近い場所にある。目撃者の話を聞かないことには獣狩りは始まらないだろう。
行動1…移動【ロンドン橋】
行動2…調査…♠の4/鉛の鈴を持っていると襲ってこなかった
ウィリアム・クラークは獣と遭遇した。その際に彼の恋人は死亡している。ウィリアムは彼女を守ろうとしたが、《ホッデスドンのムーンワーム》は彼を避けるかのように体をくねらせ、恋人だけを咥えてひきずっていったのだ。
「女性のほうがおいしそうに見えたということかな」
私が首をひねると、ウィリアムは難しい顔をした。
「それなんですが……」
「ふむ?」
「恋人は、その……俺より大きいし、強そうに見えたんじゃないかと……」
男性としては標準体型のウィリアムより大きくてたくましかった?
世の中そういう女性がいないわけでもないが、彼の態度を見るに……
「なるほど」
私はうなずいた。そして顔をしかめないように渾身の自制心を稼働させて視線を逸らし、ごく何気なく呟くようにウィリアムに声を届けた。
「幸い、私は獣のほかの悪徳を狩るつもりはないが――人には知られないように気を付けたまえ」
「……」
獣はたくましい男も平気で襲うようだ。ウィリアムと恋人の所持品や服装を比べてみたところ、ウィリアムが持っていたお守り代わりの古いカウ・ベルが少し引っかかった。
持ち物……いや、ほかにも理由はいくつでも見つけられそうだな。慎重に調べなければ。
1746年5月14日。
私は引き続き調査を行う。
トークン配置…2/オールハロウズ大教会
情報提供者…5-3-6/トーマス・クラーク。獣に関する夢を見た。
ふむ……教会関係者が、獣に関する夢を見たそうだ。
それが啓示的意味合いを持つことに、彼は疑いを抱いていないらしい。それなら、聞いてみる価値もあるというものだね。
なんにせよ、教会に戻らなければ噂の検証をすることもできないのだ。ちょうどいいタイミングだったかもしれないな。
行動1…移動【オールハロウズ大教会】
行動2…調査…♣の9/炎が有効
炎にまかれ斃される獣のヴィジョンを、その聖職者は見たようだ。
確かに炎は有効そうだな。明日になったら、改めて戦術をまとめるとしようか。
1746年5月15日。
噂トークン配置…3/ビリングスゲート・ドック
テムズ川の船着き場で噂話が聞けるようだな。どれどれ……
情報提供者…1-2-4/アグネス・ベンサム。特別な遺物を手にしている。
獣に立ち向かえる何かを手に入れたようだ。テムズ川の埠頭ということは、船で運ばれてきたのだろうか。獣は出現するたびにその能力も強さも異なる。情報の手段は多ければ多いほどいいはずだ。
しかし、せっかく教会に戻ってきたのだから、まずは私が手に入れた情報を精査しておこうか。
行動1…検証/噂話を分析する
1746年5月13日 ウィリアム・クラークの証言「獣は自分を襲わなかった。」所持品に鉛の鈴。
この証言を検証しよう。場合によっては、獣に対する有効打が見つかるかもしれないからね。
判定…2/この証言は有効である
ふむ、やはり鉛の鈴は意味があるみたいだ。鉛の材質そのものではなくて、鉛で作られたカウベルのごろごろと鳴る音に獣をひるませる効果があるとみて間違いないだろう。同じものを調達して携帯しておくとしようか。
行動2…検証/噂話を分析する
1746年5月14日 トーマス・クラークの証言「獣には炎が有効であるという啓示を受けた」
手も足もないあの化け物に炎が有効というのは、いかにもそれらしい話だが…
判定…4/この証言は有効である
やはり炎は有効なようだ。炎を武器そのものにするというのも賢い選択かもしれないな。生成した油を入れた瓶と火打石を携帯しておくことにしよう。
さて、準備は整った。
明日になったら、船着き場の方に情報収集に出向こうか。
1746年5月16日。
トークン配置..3/ビリングスゲート・ドック。獣が現れる
大変だ! ついに奴が姿を現したぞ。
船着き場は人の行き来も多い。早く駆けつけて対策しなければ、大変なことになる。
だが、このまま駆けつけると……不利な戦いをすることになってしまうな。ええい、構うものか。
行動1…移動【王立取引所】
行動1…移動【ビリングスゲート・ドック】
私はテムズ川の河港に駆けつけ、時期を待つことにした。
1746年5月17日。
トークン配置…4/ロンドン橋
情報提供者…2-1-2/バーソロミュー・アルドワース。奇妙な手記を残している。
獣の移動…4/その場にとどまる
私はこのビリングスゲート・ドックで獣と鉢合わせることになった。
腕も足もない、生白く長い肉体がのたうつ。その長い体にいびつに開いた口から鋭い乱杭歯が覗き、髪を生やしたままの頭皮がその牙に引っかかっているのが見えた。
《ホッデスドンのムーンワーム》……これ以上犠牲を増やすわけにはいかない。
私は聖印に触れ、獣と対峙した。
この炎と鉛の鈴が、私を守り、獣を討つはずだ。
狩り…3,6/獣は生き残り、私は1つの負傷を受ける
「我はサロモンの継承者。異端を討ち、聖別の炎を灯す者!」
私は高らかに宣言し、のたうつ獣に切り込んだ。獣の大顎での一撃を鉛の鈴の音で怯ませ、炎の渦を突っ切って飛び出し、果敢に獣へ攻撃を加える。
だが、獣は私が思っている以上にしぶとかった。
炎にまかれ、その血肉を炭にしてぼろぼろと落としながら、渾身の体当たりで私を吹き飛ばし、テムズ川に身を投げる。
私は痛む体に鞭打って立ち上がり、獣を追うが、追いつくことはできなかった。
行動1…調査…♦のJ/獣は肉食だった
そりゃそうだ。貪り食われた無残な屍を眺めて、私は呆然としていた。
これも私が無力だからか?
どこかで間違わなければ、彼らは死なずに済んだのか?
行動2…移動【ロンドン橋】
少しでも奴に対抗する手段が欲しい。奇妙な手記について聞いておこう。
1746年5月18日。
トークン配置…1/王立取引所
情報提供者…イゾルデ・ギブス。噂を知っている。
獣の移動…3/その場にとどまる
行動1…調査…♠の3/銀の鏡を使えば結界を作ることができる
オカルトに傾倒していた学者、バーソロミュー・アルドワースが残した手記が見つかっているようだ。手に取ってひとまず読んでみたところ、銀の鏡に関する記述が目立つ。これが獣に有効だとしたら……どのように用いればいいのだろう。
行動2…移動【オールハロウズ大教会】
噂を手に入れたら、さっそく研究だ!
オールハロウズ大教会に戻って、バーソロミューの手記についてたっぷり研究するとしよう。
ジャーナルの中断
情報が少しずつ集まってきたな。
《ホッデスドンのムーンワーム》は、まだテムズ川の波止場に潜伏している。このままでは被害は広がる一方だろう。
奴に立ち向かう方法を探し出して、なんとしてでも決着をつけなければ。
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