——この世界はキラめいている。銀色の鱗がまるで流星のように舞い、時折蒸気に当たり落ちていく。それでも生きとし生けるすべては泳ぎ続ける。この空にある限り——
超漁船要塞マグロズ、釣り人が集う場所。これはマグロズの歌姫にしてレスキュー隊員である“あなた”の物語。
~~なんか挟まる良い感じのOP~~
【第一話 罪のない残虐】
気持ちのいい空だった。朝食のツナマヨおにぎりを一つ掴んだままマグロズの監視台から望む空は白焼け、船首は雲を突き破り波のように割いては進んでいく。決して止まらず進み続ける姿はその名の通り、実に勇ましくそして早い。
私はこの超漁船要塞マグロズの歌姫にしてレスキュー隊員、もちろん漁船に乗るからには釣り人でもある。経歴は——
[*あなたは…?* (1D6)] → 6 [子役アイドルグルーブのリーダー]
子役アイドルグルーブ「OUMA」のリーダー、ジョー。え、名前が男性的だって? わーたーしーはー女ですぅ~~~!!
これからの時代はジェンダーフリーが基本だし船に女はあんまり乗っちゃダメなんでしょう、だから男性的な名前ってわけ。前時代的な考えだけど「古くからの言い伝え」って言われたら私だって少しはリスペクトするわよ、特に漁船なんて自然の営みから美味しいとこだけ貰うんだからその分ちゃんと感謝したりしきたりには従わないとダメでしょう?
っと、こんな風に考えてる時間じゃなかった。もう空が赤くなってきた! マグロズの名において歌姫兼釣り人の私が戦場(甲板)にいなきゃ、皆の士気が下がっちゃう!!
私はおにぎりを咥えたまま駆け出して監視台から文字通り飛び出した。既に水陸空兼用特別船上作業用合羽(通称:汎用合羽)を着ているし、おにぎりも食べ終え準備万端! 反重力作用装置を作動させて船の高所から甲板へ飛び降りて急いで持ち場である舟の先端に向かい置き竿のリールを掴んだ。
「皆おまたせー、じゃあ今日も張り切って釣果あげよう!!」
「「「おー!!」」」
既に私以外は皆持ち場についていたからすぐに作業開始だ。今日も元気いっぱい、荒波トビウオなんのその!
よーし、今日もバッチリ釣れるかな——
[*マグロ釣り* (1D6)] → 3 [3.マグロだと思ったらカツオだった。美味しいのでヨシッ!]
「あれれ~? おっかしいな~~~?」
テヘペロ☆ っとかつて流行ったらしいお詫びのポーズをとる。後ろから「大丈夫だ、俺たちがデカいの釣ってやるからよ!」「ボウズじゃないだけいいぜー!」「ジョーちゃん今日も可愛い!!」という声がする。よかった、でも釣れたからには最後まで……竿をよくしならせて力を逃がしつつ、徐々に徐々にリールを巻いていく。10m……5m……3m……
「ここだっ!!」
そう叫んでリールを思いっきり巻き竿を固定具から外して振り上げる。途端に雲海から魚影が飛び出してきた! サイズは……それなり、だけど太陽を背に取ってピンと張り切った糸の先は逆光でよく見えない。
「お願い!」
そう叫びながら振り返った先には——私がヒットした瞬間から好機を見逃さずタモを持って隣に待機してくれていたOUMAのメンバー、コニーがいた。
「任されました、っと!」
その体と同じくらい長いタモを器用に扱い、コニーは私が釣り上げたカツオを網で捕らえる。びちん、びちん! と全身の筋肉を使い逃れようとするカツオをコニーは全身で抑え込み、戦っている。時折弾き飛ばされそうになりながらそれでも彼女はカツオと濡れた甲板を離さない。
「コニー!」
本当は助けたい、でも私にはその才能はなかった。一度コニーがケガをした時に皆で替わりをしたけれど歴戦のタモ使いであるジュリアンを除けば誰一人として暴れ魚であるマグロ(やカツオ)を抑えられなかった。その鋭いヒレは凶器となり汎用合羽の硬化ゴムを切り裂くし、剥がれた鱗は時に弾丸より早く飛んでくる。
コニーはいつも「私なんて大したことないよ」って言うけどこの船にとって、勿論私にとっても大切な一人。
「大丈夫、もうすぐ落ち着くから……ね?」
顔だけ私に向けてコニーは優しく笑いかけてくれる。いつの間にか神経締めをしていたようで次第にカツオは大人しくなり動かなくなった。釣果に対する歓声で沸く船上とは裏腹にコニーは愛用のノッキングをしまい今この瞬間まで命だったものに手を合わせている。私も彼女と一緒に手を合わせ命の恵みに感謝し、そして仕事に戻っていく。
——この船上ではいつ命が失われるか分からない。時に大時化が、時に足に絡まった網が、時に魚群が私たちを襲う。帰らない仲間も多くいるし、明日も五体満足でいられる保証なんかない。怖くない、とは決して言えない……それでも私は船に乗り、魚を釣り、歌い、そして命を救う。それが私の仕事だからじゃない、私がそうしたいから今日もこうしてここにいる。
「もっと、強くなりたいな」
そうつぶやいてから再び持ち場に戻る。午前中いっぱいは漁船としての業務に勤しむ、とにかく釣って釣って釣りまくる!! これが今日の晩飯になり、明日の活力になり、いつしか宇宙を満たす〟愛〝になる。私、ジョーはそう信じて汎用合羽が汗と潮水で汚れるのも厭わずに動き続けた。
~~なんか挟まる良い感じのエンディング~~
【次回「超漁船要塞マグロズ」、プレイログ②に続く】
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