【プレイログ③】超漁船要塞マグロズ、行動開始です!

fish_maguro プレイログ

——鯨骨生物群集とは、深海において沈降したクジラの死骸を中心に形成される生物群集のことであり、隔離された環境の特殊な生態系として注目されている。ひとつの生命の終焉が数多の生命を包括し、新たな種を生み出すコミューンとなる。これを生命の神秘と呼ばずに何と呼べばいいのか——

超漁船要塞マグロズ、釣り人が集う場所。これはマグロズの歌姫にしてレスキュー隊員である“あなた”の物語。

~~なんか挟まる印象的なアイキャッチ~~

 

【第三話 逃避的な自我の防衛策】

ドン! ドン! と激しくマグロズの船体が揺れ、白色電球が甲高い音を出して割れていく。推測100kgのマグロ魚群は絶えず時速60~80㎞程出して泳いでいる、その姿はさながら魚雷のように見えた。もちろんレスキュー中は常に嫌悪するような音波であったり光波をバラまいているが群体で生活する生命体相手では先頭の一尾が避けない限り後続も同様にやってくる。
相当な硬度を持つはずのコンクリートの舗装はひび割れて巨体に押し出されるように積み重なっていく。この影から出れば私たちはひとたまりもないだろう、だからこそ歌を歌い自己を保護しつつ要救助者の下に走る。マグロたちが泳ぐ空域は酸素も薄くなるため一声一声がまだ成長しきっていない体に重くのしかかる、それでも胸いっぱいに息を吸って音と共に吐き出す!

古来より歌というものは祈りと同意だった。それは大漁への感謝と命を弔う意味を持つものであったり、海神への感謝や敬虔な信仰心であった。
また行き交う舟の上で寂しさと単調さを紛らわせるために歌ったり、集団で漁法を行う場合はその結束を強めたり円滑に海上交通を行う掛け声かわりに歌うこともあった。
それは今の時代も変わらない。大切な人と共に生きる為に皆それぞれが声を掛け合う、必要なだけ海から命をいただいてこの身に宿す。そのために命があふれるこの空を守る、それが私が私として生きる理由!

インカムから警告音が響く。同時に激しく風が吹き体が浮かび上がりそうになる、と同時に要救助者の体がふわりと浮かび上がった。このまま雲の切れ間に落ちてしまえば命はないだろう……! 今彼の体に一番近い所にいるのは——私だ。そう気づいた瞬間に私の体はもう飛び出していた。

「コニー、マオ。60秒だけお願い!!」
「ジョー!?」
「……バカ、任された……」

歌声を止めそのまま風に乗る。纏わりつく風に弄ばれながら吹きあがった要救助者の体に向かって手を伸ばす。ダメだ、一瞬触れたけど風でうまく掴めない! 命綱の限界まで伸ばせばギャリギャリとリールから嫌な音がするけど構っていられない。もう一回! 今度は非常用のアンカー(対人用救助補助具)を打ち出す——

「お願い、当たって!!」

狙いを定めた体は後ほんの数m先まで行っていれば今飛び込んできたマグロにぶつかっていた位置で無事アンカーによって体を捕縛された。ほっと一息はく余裕が来る前に今度はインカムにエラー音が響く、音の出所を探せば命綱が限界まで伸びたことと2人分の荷重に耐えきれずリールの巻き戻しが出来ないという通達が耳に届く。
同時にマオやコニーが必死に私の命綱の再起動を試みながら歌っている声も耳に届く。こんなことは初めてで私は冷静を欠きそうだし、命綱を装備した箇所に負担がかかって上手に息ができない。苦しい……もうダメなの? そう思った瞬間——風の動きと違う振動がアンカーの先から伝わる。視線を救助者の方に向ければうっすらと開いた瞳、それと「助けて」とかすかにその人の唇が動いたように見えた。

[*レスキュー!* (1D6)] → 2 [2.実は細マッチョ]

私は命綱の動作の邪魔にならない程度に上半身に着ていたツナギを脱ぐ。日々の筋トレと完全人力による釣りで鍛えられた腕を晒しTシャツ姿になって風に激しくたなびく袖の部分を手に巻き付ける、その最中も暴風に交じって辺り一面を飛来する鱗が両腕を切り裂いて血に染まりながら再び飛び去っていく。

「ジョー、やめて! 腕が切れたらどうするの!!」「……こっちでコントロールするから。早く帰ってきて……」
ふたりの声がする。でも私は首を横に振って力いっぱいアンカーを引く、ひとつ動くごとに掌が痛み血が舞っていく。緊張と疲労から汗が止めどなく溢れ。光を浴びながら散っていく。ああ、きれいだなってこんな時なのに思ってしまって私は一人笑っていた。
「……それでもこの手は離せない」
なんで、どうしての声が耳に届く。分かってるよ、心配してくれているの。知ってるよ、私が怖がりだってことも。
「だって、私は歌姫だから」
笑顔で言ったその先、近くて遠いインカムの向こうから息を飲む音が聞こえてから、短い溜息が耳に届く。
「それなら私も行く」
マオの呆れるような、それでいて決意を秘めた短い声。
「じゃあ私も行かないと。ね、リーダー?」
コニーの優しくも力強い声も聞こえた。
「うん!」

~~なんか挟まる熱いBGM~~

2人が歌うのを止め私の命綱に向かって走り出すの気配を感じながらもうほとんどない力を振り絞る。マグロたちも次の空域を目指し始めたのか命綱の揺れも収まってきた、今がきっと最後のチャンスだ!! 
叫ぶように歌いはじめた私と船を繋ぐ命綱をコニーとマオが掴んだ。インカムからは船外活動時間の警告と、終了と同時にこの空域から離脱するという指令が入る。もうレスキューに避ける時間はほぼない、3人がかりで釣り上げるしかない!

「「「いっけーーー!!」」」

一瞬凪いだ瞬間を見逃さず息を揃えて命綱とアンカーを引き上げる。マグロより全然軽い、行けるはず! 強い手ごたえと同時に要救助者が私の腕の中に吸い込まれるように飛び込んできて、私共々船に引き寄せられていく。
宙を舞いながら彼を強く抱きしめ呼吸や脈を確かめる……どうやら気絶しているだけみたい。片手で2人にハンドサインを送れば直ぐに追加のアンカーが私達を絡め捕る、それと同時に活動限界時間を知らせるアラートが響き渡りマグロスの巨躯は振動し再び空へと漕ぎ出していく。

「良かった……」

こうして今日も私たちOUMAは落第点かもしれないけど必死に歌姫として命を救うことが出来た。その事実だけで救われている気がするのは、いつもこうやってレスキューの最後に見る空が何より綺麗だからかもしれない……なんてまだまだ駆け出し歌姫の私は誰にも言えないけど。
それでも明日も頑張ろう! って思えるのは助けた要救助者から伝わる熱や脈動が何よりあったかいし、私を迎えてくれるコニーやマオ。それからマグロスのみんなが優しいから、かな?

~~なんか挟まる良い感じのEDへ~~

 

【超漁船要塞マグロズ、プレイログ 終】

 

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