✦File1 Taylor
[OP]
別に最初から逃げだそうだなんて考えていたわけではない。
しかし、過酷な労働環境に心身ともに疲弊していたのは確かだった。
あの日の俺はどうかしていたに違いない。
唯一の連絡手段である通信機器を破壊し、進路を大幅に変更するだなんて。
この広大な宇宙空間において、単独行動は自殺行為だ。
いくら物資を積んで来たとはいえど、これらが尽きてしまえば俺の命もそれまでなんだろう。
地球に戻るのは、よっぽどの奇跡でも起きない限り難しい。
ならばせめて、最後の地は自分で選びたい。
限りある物資で、まだ見ぬ惑星へ向かってみようと思う。
[planet-i247]
1d6 (1D6) > 5
最初に見つけた惑星に降りてみることにした。
①
1d6 (1D6) > 6
2
この惑星には、地球における月のように、衛星が一つあるらしい。
センスのいい名前なんて思い浮かばないから、こいつのことも月と呼ぼうと思う。
長く操縦して疲れた体を休めるために、月明かりの下、こうして日誌をつけている。
こんな宇宙の辺境で日誌なんて書いても、誰も読む奴なんかいないだろう。
それでも、俺がここに生きていた証を一つでも残しておきたいと思った。
先ほどから妙に眩しいと思っていたが、どうやらここが明るいのは月の光のみのせいではないようだ。
鏡のようにあたりを反射させる鉱石が点々と存在していて、それらが月の光をますます強めているらしい。
鏡なんてもうしばらく見ていないな、と思い立ったので、その鉱石に近づいてみることにする。
大雑把にあたりを見渡した限り生命の気配はなかった。誰かが磨いたわけではないんだろう。
自然現象でここまでなめらかな割面の鉱石が発生するだなんて知らなかった。
顔を映してみれば、伸びきった髪と髭の、やつれた痩せぎすの男がそこにはあった。
仕事を始めてからもうずっと、容姿を気にかけることなどなかった。
もう誰も見る奴なんていないのに、そのことが急に恥ずかしくなって、俺は急いで船内に戻り、ハサミと髭剃りを掴んだ。
髭を剃るのはともかく、自分で髪を切ったことなんてなかったが、やってみれば案外なんとかなるものだ。
少し短くしすぎてしまって、くせ毛なのが目立つようになった気もするが、さっぱりしたのでよしとする。
充分休んだし、気分転換もできたので、少しあたりを散策してみようと思う。
➁
1d6 (1D6) > 5
♢8
気温なんて気にしていなかったが、どうやらここはかなり寒いらしい。
少し歩けば氷河があった。
つまりこの惑星には水かそれに類するものがあるということだ。
雑に降り立ったわりに当たりを引いたらしい。運が良ければ飲み水や食料が確保できるかもしれない。
なんて柄にもなくはしゃいでしまった。
頑丈そうな氷河の上に飛び乗ってすこし休んでいた時、その下を大きな影が動いた。
随分大きかったが、あれはおそらく魚なんだろう。尾びれのようなものを揺らして泳いでいるように見えた。
捕まえてみたいと思ったが、道具を持ってきていないのでひとまずそのままにしておいた。
一度宇宙船に戻って、探索用の道具を準備した。
この惑星は探索のし甲斐がありそうだ。
荷物を持ってもう少し先まで行ってくる。
③
1d6 (1D6) > 4
♡J
地面は殆ど氷でつるつるしていたが、少し遠くまで歩けば、氷ではなく雪が地面を覆うようになった。
雪の下はどうやら砂のようで、砂漠に雪が積もっているのはなんだか不思議な感じだった。
しかし、そんなことよりもずっと驚くべきものがあった。
小屋だ。
人や生命の気配はなくて、もう長らく放置されてしまっていたんだろう。
入るには少し小さすぎるそれは、俺が息を吹きかけでもしたらそこからボロボロと崩れ落ちてしまいそうに見えた。
なんて、これは流石に大袈裟だが、そう形容したくなるぐらいには朽ちてしまっていた。
この惑星には文明をもつ生命が存在したんだろうか。
それとも俺のようになんとなく立ち寄った生命体が居たんだろうか。
しかし、現状それらしき者に出会っていないということは、この惑星は生命が暮らすには不向きな可能性が高いということだ。
④
1d6 (1D6) > 4
5
その小屋の近くには、おそらく小屋の素材になったのであろう樹が少しだけ生えていた。
樹の方もずいぶんボロボロで、特に梢の方はほとんど枯れてしまっていた。
よく見てみれば、樹の先端には鈍い色の苔がびっしりと生えていた。
その箇所から順に樹は腐り始めていて、小屋や樹が朽ちてしまうのはおそらくこれのせいなんだろう。
仮にこれが樹以外にも影響を与えるなら、宇宙船を放っておくのは危ないかもしれない。
このあたりで探索は切り上げて宇宙船の方へ戻ろうと思う。
⑤
1d6 (1D6) > 5
K
宇宙船は無事だった。
船内に戻って休んでいる。
この惑星で食べられそうなものと言えば氷河の下を泳いでいた魚ぐらいだろうが、あれを捕るのは一筋縄ではいかなさそうだ。
積んで来た食料を消費することにする。
食後眠ってしまっていたらしい。
どれだけ眠っていたのかは定かではないが、見渡せばあたりの景色は着いた頃とはずいぶんと変わっていた。
キラキラと光る何かが空中、宇宙船の周囲一帯に漂っていた。
よく見ればそれは植物の花粉や胞子に似ていて、宇宙船にくっついたところから先ほど樹を枯らしていた苔と同じものが生え始めていた。
このままでは宇宙船もあの家や樹のように朽ちてしまうかもしれない。
急いで苔を取り除いて、ひとまず惑星から離れることにした。
最初の惑星は、余生をゆっくりとすごすのには適していなかったようだ。
でたらめに宇宙船を飛ばして、次に辿り着く惑星はどんなだろうか。
自動操縦機能に任せて、今は少し眠ろうと思う。
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