七不思議レポートについて
「七不思議レポート」は、学園の七不思議を調べるソロジャーナルです。
https://talto.cc/projects/IiQj64HiYYIwQrR8drTPy
主人公である「ライター」と「パートナー」を作ることから始めていきます。二人は舞台となる学園の生徒であり、それぞれ個性を持っています。
ライターとパートナーを作る
まず、学年差を決定します。
ダイスは10が出ました。
10~11:パートナーはライターの同学年で同じクラス
同学年で同じクラス。学園の七不思議を調べるクラスメイト二人、というのは想像しやすい気がします。
学年は中等部二年、二人は14歳ということにしましょう。
ライターとパートナーの人物像についても決めていきます。
特徴表A・特徴表Bをそれぞれに振ることで、主人公たちに個性を与えることができます。
ライター
16:部活で有名
16:噂好きパートナー
19:学園内に兄弟姉妹がいる
17:皮肉屋
さらに、「動機」も決めてしまいましょう。二人がなぜ学園の七不思議を調べることになったのか、動機表をそれぞれに振ることで決定します。
ライターの動機
1:肝試し的な好奇心パートナーの動機
6:親しい人が七不思議のどれかで以前不幸になった
これで学年差、特徴、動機が出そろいました。この内容から、ライターとパートナーについて具体的にイメージしてみましょう。
●ライター:須多良 唱(すたら となえ)

この手の学園ものフィクションにはつきものの、出しゃばりで執念深いゴシップジャンキーの新聞部員です。新聞部のスタラ……その悪名を知らない生徒は加見学園内にはほとんどいないでしょう。持ち前の好奇心で何にでも首を突っ込み、引っ掻き回します。
●パートナー:摂津 或(せっつ あるい)

彼は須多良に協力して七不思議の解明に乗り出します。皮肉屋で冷笑的な少年ですが、この件に関しては熱意が違うようです。その理由は、彼の姉である摂津ちなみがここ一週間ほど不登校になっているのと関係しています。今の彼は、愛する姉を恐怖に陥れ傷つけた七不思議への復讐心に燃えているのです。
七不思議を調べる
七不思議の調査は、七不思議究明表を参考にイベントを発生させ、「調査値」と「霊障値」を上下させることで進行します。
「調査値」も「霊障値」もはじめは0です。どちらも調査の進行によって数値が変化していきます。
調査値は、どれだけ七不思議に関する情報を集められているかを示した数値です。
霊障値は、どれだけ霊現象に接触してしまったかを示した数値です。この数値が高いと七不思議の真実に近づきやすくなりますが、同時に怖ろしい事態も招きやすくなります。
調査・一回目
七不思議究明表
10:★七不思議確認! しかし説明がつく現象だった……はず…… 調査値+1、霊障値+1設備表:
3:家庭科室、調理室、技術室
夜の校舎に忍び込んだ須多良唱と摂津或は、懐中電灯で周囲を照らしながら特別教室棟を探索しています。
「あんたみたいなマジメくんが、こんな案件に本気になるなんて意外だね」
からかうような須多良の笑みをじとりと見て、摂津は答えずに歩みを進めました。
学園は街中にあるため、外の灯りが窓から差し込んできます。遠くの道路を走る車のヘッドライトが、天井近くをひっきりなしに行き交っているようです。
「七不思議」
不意に摂津が言います。
「こっちに来たってことは、この辺にあるんだろ。どこだ?」
「技術室のバンドソー」
「は?」
あまり聞かないタイプの七不思議に困惑して聞き返す摂津へ、須多良は満足げに歯を見せて笑いました。
「バンドソーって、ほら、あの重くてゴツい電動糸ノコのことね。糸ノコで指を落としちゃった生徒がいたって話。指は勢いよく跳ねていって、今でも見つかってなくて……夜になると、技術室の床を跳ねまわってるんだって」
「指が?」
「うん、指が」
そんなもん、勝手に跳ねさせとけばいいんじゃないか?と表情で訴えてくる摂津を無視して、須多良はポケットから鍵束を取り出し、技術室のドアを開けました。
技術室に入ってすぐ、摂津が息を呑み立ち尽くします。遅れて須多良も足を止め、鋭く周囲を見回して耳を澄まします。
とんとんとん……
とんとんとん……
確かに、跳ねまわるような音が聞こえます。
技術室は車道に近く、車が通るたびに天井を目まぐるしいヘッドライトが照らします。味気ない木製の椅子、彫刻刀でイタズラ彫りがされた机、錆びた部品が鈍く光る卓上ボール盤、床に少し残ったおがくず、全てが何度も照らされては闇の中にしんと沈みました。
「……」
光はしばらくやって来ません。車の往来が途切れたようです。
答えを求めるように、摂津が須多良の横顔を見ます。いつになく真剣に瞑目していた彼女は不意にぱちりと目を見開き、ことさら呑気な様子で伸びをしました。
「ばっかみたい。単純なことだったね」
「単純なことってのは?」
「切り落とされた指が跳ねてるなんて、勘違いってこと」
須多良は古ぼけた電動バンドソーを指さします。「使用禁止」の張り紙が貼られて、電源コードも抜かれているようです。
「それで指が切り落とされたって話じゃねえのか?」
「まあ、見てなよ」
須多良の言葉が終わるより早く、またすぐそばの車道を通る車の光が技術室に飛び込みます。かすかに聞こえるエンジン音。大型のトラックのようです。
とんとんとん……
とんとんとん……
「この音は……」
摂津が、しかめっ面で呻きました。
建付けの悪い、古い特別教室棟は、大型車が通るたびに僅かに揺れます。
そして、その揺れは……部品がガタついて危ないために使用禁止になっていたバンドソーの部品をカタカタと定期的に跳ね上げて、音を立てていたのでした。
「手始めはこんなものでいいでしょ、まあまあ悪くない収穫」
上機嫌でメモに書きつける須多良を、摂津は不満げに横目で見ました。
「こんなの、何の意味があるんだ」
「七不思議の解明。そう言わなかった?」
「俺が求めてたのは、こんなんじゃない。早く、姉さんを……」
うるさげに眉を寄せてメモ帳を閉じ、須多良は口を開いて――
「……?」
そのまま、はたと黙り込んでしまいました。少し間を置いて、いつになく慎重な様子で尋ねます。
「何か聞こえなかった?」
「え? 車の音だろ」
「……そうだったかな」
車が立てるはずのない音。液体が落ちるような音。それは口にせず曖昧に誤魔化し、須多良は踵を返します。
「次の七不思議はどんなのかな」
「こんなくだらないオチぱっかりだったら帰るぞ、俺!」
騒ぐ二人が立ち去った技術室。
使用禁止の電動バンドソーが置かれた机から、ぴしゃっ、とまた一滴、真っ赤な液体がしたたり落ちました。
とんとんとん……
とんとんとん……
調査値:1
霊障値:1
七不思議:1/7
調査・二回目
七不思議究明表
7:霊現象の噂を追った。しかし、何も起きない。調査値+1
校内設備表
5:放送室、パソコン室
「放送室……」
渋い顔をして立ち止まる摂津をよそに、須多良はあっさり放送室の鍵を開けました。
摂津の姉、誰もが知る学園のマドンナ・摂津ちなみは放送部員です。ちなみは美人なだけでなく声も綺麗で、毎日の校内放送を密かに楽しみにしている男子も多いようでした。
姉を変えてしまった七不思議があるとしたら、放送室に関するものである可能性は十分高いでしょう。
こちらも誰もが知る学園の厄介者・須多良唱は、そんな相棒の気負いも構わず放送室を無遠慮に歩き回っては懐中電灯の光で照らしています。
「お前! 勝手にべたべた触りやがって、機材壊したりすんなよ」
「壊してないよ、今はまだ……勝手にって誰目線だよ」
減らず口で言い返しつつ須多良は室内を練り歩き、不意に立ち止まってぱんっ、と手を打ち鳴らしました。
びくりと跳ね上がる摂津に、須多良は企みのありそうな毒のある笑顔を向けます。
「よし、何もなし!」
「……は?」
「ここはただの放送室でした、何も起きてません! ということで次いこ次」
「は、……はあ? お、おい、待てって、もっとちゃんと調べろよ!」
無人の真っ暗な放送室に一人取り残されてまで調べる意欲はなく、急ぎ足で須多良を追いかけながら、摂津は割り切れない思いに頭を悩ませました。
調査値:2
霊障値:1
七不思議:1/7
調査・三回目
七不思議究明表
6:あやしげなおまじないを試してみた。調査値+1 or 霊障値+1
(出目は3なので霊障値+1)
急ぎ足で立ち去った須多良を追い、放送室から飛び出した摂津は、すぐに面食らって足を止めました。
放送室を出てすぐの廊下で、壁にもたれ、指に何か白い紙片を挟んでひらひらと揺らしている須多良が、面白がるように瞳をひっそりと光らせて摂津を見定めていたのです。
「放送室に何もなかったのがすごく不満って顔してるじゃない」
「……」
むすっと口を引き結ぶ摂津にそれ以上の答えは求めず、須多良はゆっくりと背を壁から離して摂津へ近づいていきました。指に挟まれた紙片がぺらっ、と翻り、そのまま銃口のようにぴしりと摂津の鼻先へ突き付けられます。
「収穫がなかったとは言ってないでしょ。これ、なんだと思う?」
「……メモ?」
近すぎると文字もなかなか読めないものです。困惑気味に返すその言葉に満足したようで、須多良はその紙片を一旦引き戻して楽しむように目を細め、読み上げました。
「恋のキューピッドのおまじない。必要なのはハサミ、赤い糸、錆びた釘、コップ、水。コップに水を入れて錆びた釘を沈め、コップの周りに赤い糸を巻き付ける。キューピッドへ呼びかける呪文を唱えて、赤い糸を細かく切り刻む」
「……馬鹿みてえ」
馬鹿げた内容に、摂津は安堵していました。少なくともこれが姉に関係することだとは思えません。優秀で、合理的で、美しい姉が、こんな子供だましの不気味なおまじないに興味を持つはずがない。そう確信が持てました。
「呪文が書いてないのよね」
不満げに唇を尖らせる須多良へ、摂津は呆れ顔で尋ねます。
「やるつもりなのかよ」
「当然。ほら、はやく錆びた釘探して来てよ」
「ねえよそんなの、学内に!」
蛇口をきゅっと捻って水を止め、水と錆びた釘が入ったコップを掲げて、須多良は感心したように言いました。
「あるもんよねえ」
「見つかるもんだなあ」
特別教室棟から調達してきたガラスのコップと錆びた釘、そして赤い糸。ハサミは須多良がいつの間にか放送室から失敬していたようです。迅速におまじないの手はずを整えて、須多良は腕まくりでもせんぱかりの意気込みでふん、と鼻息を吹きました。
「呪文がわからないのはどうしようもないけど。とりあえず糸を巻き付けて……」
赤い糸をコップにぐるぐる巻き付ける須多良を冷たく睨んで、摂津は小声で尋ねます。
「お前、恋のおまじないとか興味あったの?」
「超興味ある」
視線を合わせもせず、感情の起伏に乏しい凪いだ声で須多良は素早く答え、赤い糸を巻き付け終えたコップの間で大仰に両手を挙げて堂々と言い切りました。
「えーと、これならいけるでしょ。エクスペクト・パトローナム!」
絶対違うと思う。
糸を切り刻むジョキジョキという音を聞きながら、摂津はため息をつきました。
カタッ。
その物音はとても小さく、しかし二人の耳に十分届きました。
須多良はハサミを置き、摂津は気を取り直して、真っ暗な廊下に目を凝らし、しばらく異変に神経を尖らせました――
調査値:2
霊障値:2
七不思議:1/7
>次回へ続く
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