「Ronin」は、主なき流浪の侍、いわば「波の男」……浪人になって流離い、旅先で出会った事件を解決するソロジャーナルです。
前回のログはこちらです。
The Journey -旅を続ける-
仲間の性別…1/男性
仲間の名前…32/Ringo
仲間の外見…61/がっしりしている
仲間の職業…無害/戦闘時の修正+1。ただし、ヴィランとの戦いが始まるときには1d6を振って1か2が出ると殺害され、決意を2点失う。
先日拾った唐傘を補修して広げてみる。立派な厳つい傘を広げてみると、想像とは異なり、見事な白い花と赤い果実が描かれた傘が目の前に広がった。
「なんと、林檎を描いた唐傘とは」
なかなか面白い趣向だ。これを使っていた者はかなり高貴な身分だったのではないだろうか。傘をくるくると回して確かめていると、不意に傘の柄がぐにょんとうねって俺の手の中から飛び出した。
驚きに呆然としているうちに、傘は目の前でびょいんとうねってその場にすっくと立った。雅な絵柄に開いた大穴のように、大きな目玉がばちりと開いた。
「おいらを手当てしてくれたのは、あんたかい?」
「うむ……いかにも」
動揺したまま、俺は頬を掻いて答えた。
「道に打ち捨てられるのも哀れと思ってな」
「そいつはありがたいや。体がボロボロで苦しくて、みじめだったんだ。恩に着るよ!」
唐傘お化けは生き生きと言いながら俺の周りをぴょんぴょん跳ねる。俺は最初の驚きからもしだいに立ち直り、動揺を押し隠して微笑んだ。
「何、俺とおまえは似た者同士。見捨てることもできなかったのよ」
「似た者同士? おいら、あんたに似てるかなあ」
唐傘お化けは首をかしげる。俺は笑みを誘われて、く、と喉を鳴らし一歩踏み出した。
「当てのない旅だ。ついてくるか?」
「おいらだって行くあてなんかないさ。ついていくよ!」
元気よく答えて、唐傘お化けのRingoは跳ねながら俺のあとをついてきた。
4…名声が5以上なら悪党に出くわす。それ以下の場合は旅路の遭遇表を参照する。
旅路の遭遇表…6-6/寺院で瞑想を勧められる。
一晩の宿を借りた寺院で、七日間の瞑想行を勧められた。
過去を顧みるような時間は、俺の旅にはない。俺はひらひらと手を振ってごまかし、すぐに出立した。
2…旅路の遭遇表を振る。
旅路の遭遇表…2-3/負傷した味方を見つける。それは悪党の仕業だ。
唐傘お化けのRongoを寺院に入れるわけにはいかなかった。妖怪にはそういった場所はひどく居心地が悪いようで、踏み込むだけで震えあがってしまうのだ。
寺院の壁に立てかけて置く形で一時別れを告げていたのだが……帰ってきた俺は、無残に叩きのめされて傘骨も折れてしまったRingoと対面することになった。
「お前、いったい何があったんだ」
「うう……やられちまったよお」
悪党の居場所…2-1/粉雪が舞う、大きな橋の上
悪党の名前…1-1/Noriko
悪党の外見…2-5/刺青を入れてる
悪党の武器…5/居合術
悪党の詳細…3/かつて主人公である浪人を愛していた。だが、その愛はいまや殺意になっている。
「刺青を入れた女だったよ。おいらが壁に立てかけられてすぐのことだ……おいらを蹴りつけて、めちゃくちゃに踏みつけてきたんだ!」
「それはまた、ただ事ではないなあ」
俺は思案して顎をさすった。
「女はどこに向かった?」
「東のほう……」
「川がある方向か、ふむ」
俺は立ち上がった。
「連れてってくれないのかい?」
「お前をズタボロに踏みつけたばかりの女のところに連れて行くのも情がないと思ったんだが」
「おいらを見せて、やったのはお前かって聞けばいい」
「なるほど、それもそうか……」
Ringoは思っているよりけろりとしているようだ。俺は肩をすくめて、ぼろぼろの傘を手に歩き出す。
寺院のすぐそばに流れている川には、大きな橋が架かっていた。空は鉛色で、薄く日光を通し、粉雪がちらちらと輝きながら舞い落ちる。
立派な橋の往来を妨げるようにして、菅笠を被り、裁付袴から眩しいほどの白いふくらはぎをむき出しにした、長身の女が佇んでいた。
俺がやってくるのを待っていたかのように、女がゆっくりと俺の方へ注意を向けるのがわかる。
「そこな女、一つ尋ねたい儀がある」
「何でございましょう」
「俺の傘を壊した女がいたようだ。林檎の絵を描いた風変わりな傘なのだが……」
「……」
不穏な沈黙だ。俺は眉を寄せる。そもそも、なぜこの女がこうして俺を待っていたのかもよくわからない。ただの悪戯ならさっさと逃げてしまえばいいのに。
「壊したのはきさまだな」
「なぜ、わたくしだと?」
「傘が言っていたのよ、刺青を入れた女だと……」
はっ、と女は息をのみ、自らの右肩を押さえた。その腕はほとんど袖に隠れているはずだが、袖口からは緑色の、葉のような絵柄が見え隠れしていた。
「古びた傘でも数少ない旅の道連れ。壊されて黙っているわけにもいかん」
「ならば、なんとします」
「ううん、どうしたものかのう」
弁償の金子でもせしめて、それでRingoに美味いものでも食わせてやればいいだろうか。
思案する俺を、女はしばらく眺めていたようだった。
クッ…
耳に届くそれは、笑い声。押し殺した、ひそやかなもの。
「久方ぶりにお会いしても、何も変わっておりませぬね。優しい、お人好しなKentaro様」
「……きさまは?」
女は菅笠を投げ捨てた。豊かな黒髪がうねりながら広がり、女のほっそりとした喉から肩をなぞるように流れた。
黒曜の輝きを秘めた大きな瞳がぱちりと開かれ、俺を見据える。まさしく鈴を張ったかのごとき眼差し。りん、と耳の奥で美しく可憐な音が鳴り響いたような気がした。
「わたくしはNoriko。この名を忘れてはおりますまい」
「Noriko……!何故、こんなところに?」
「さて、何故でございましょう」
Norikoは冷ややかに言って蓑を脱ぎ捨てた。その腰に下げられた刀は、かなりの業物のようだ。
「あなた様がここに居られるゆえに、わたくしもここに居るのです」
「そう言われてもなあ」
物々しい空気が勝手に流れているが、俺は彼女を斬るつもりなどみじんもない。そもそも、なぜNorikoは俺の旅の連れを壊したりしたのだろう?
その美しい瞳がぞっとするほど冷ややかに細められて、俺が片手に下げたままの唐傘を睨んだ。
1d6…4/Ringoは死亡しない。
「旅の連れに、なぜそのようなむさ苦しい化外のものを。
ああ、妬ましい。ああ、悩ましい。
なぜ、わたくしに言ってくださらないのです。一言、ともに旅に出ようと」
ひいい、とRingoが悲鳴を上げた。よほど怖い目に遭ったようだ。俺はRingoを後ろに投げ出して、刀の柄に手を置いた。
「山豚家の姫をかどわかして放浪の旅に出るなど、手のものに追いつかれたら首が飛んでしまうわ」
「それでも、わたくしを思うならできるはず」
まいったな。
そもそも、俺とNorikoは恋仲でも何でもないのだ。山豚家に仕えるものとして相応の礼儀を示したつもりではあったが……小夜鳴の家がお取りつぶしになってからは接点もなく、ろくに言葉も交わしていない。
何かの間違いではないだろうか。
俺がそう言おうとしたその時、Norikoのしなやかな指が居合刀をひし、と掴んだ。
ジャーナルの中断
次回は1人目の悪党・Norikoとの戦いになる。
居合使いは初撃でほぼ確実に[構え]を崩してくるだろう。厳しい戦いになりそうだ。
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