Bacchanaliaは、飲んだくれて記憶を飛ばした翌日に、前の日に何があったのかを何とか思い出していくというコミカルで楽しいソロジャーナルです。プレイにはタロットを使用します。
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ジャーナル
Act II: Early Evening
まだ西の空はほんのりと明るく、夜の帳は緩やかにめくれ上がったままだ。街の建物の一つ一つにも生活の灯りがともり始めている。サラリーマンたちと飲み始めたアマレットの女は、俺の隣に戻ってくるのだろうか。まあ、戻ってこなくても、それはそれで構わない。
ソードの7:何かを隠すために、トイレに立った。
俺はふと、さっきの通知が気になった。その時話をしていたアマレットの女は、若いサラリーマンたちをからかってご満悦だ。今なら席を立っても問題ないだろう。俺はスマホを手にスツールを立ち、トイレへ向かった。
メッセージを送ってきたのは、俺の親友でビジネスパートナーの三池だった。
『まずいことになった』
『そっちにもいくかもしれない』
冷静で、ちょっとくどいところもあるその男には似つかわしくない、焦った文面だ。どういうことだ、と返信してみたが、いつまで経っても既読がつかない。
まあ、今夜は楽しく飲むと決めたんだ。まだ飲みかけの酒も残っている。深刻な話のようだが、明日でいいだろう。スマホをポケットにねじ込んで、俺はカウンターに戻った。
ソードのペイジ:自分と友人のために飲み物をオーダーして、思い出を振り返った。
Interact…12.吊るされた男
しかし、三池からのメッセージは頭から離れない。いったい何があったんだ?俺はウィスキーとナッツをオーダーして、それに口を付けるでもなくぼんやりと考え込んでいた。
不意にバーのドアが開き、女が入ってくる。肩口で切りそろえた黒髪、濃い茶色のテーラードジャケットの、なんとも突き出しの強い……頑固そうな面構えの、50がらみの女だ。俺は驚いてスツールを降り、頭を下げて声を開けた。
「片桐さん!」
「ん? ああ、小川じゃない」
彼女は片桐ファイナンスの設立者にして現社長。俺が一方ならず世話になった人物だ。大きな口に健康な歯を並べてにかっ、と笑いかけてくる。
「いいところで飲めてるようで何より。シゴトのほうもうまくいってるみたいじゃない」
片桐さんは俺の隣に座り、気安い笑いで言った。
「前の件のとき、言ったわよね。気に負うことはないけど……」
「『次会ったときに、一杯奢りなさいよ』でしたね」
事業上の大きな損失に関する融資。どうしても片桐さんのところしか頼れなかった状況で、彼女の恩情によって俺の事業は持ち直したのだ。今俺がこうして社長をやっていられるのは、彼女のおかげにほかならない。
「片桐さんへの恩は、たった一杯で埋め合わせができるとは……」
「生きてりゃいろんなことがあるわよ。あたしにだって、あんたにだってね」
そんなものだろうか。俺はかなわないな、と苦笑を浮かべて、彼女が大好きなマッカランを二人分頼んだ。
ウィスキーを酌み交わして、片桐さんとは仕事の話をした。いや、仕事の話のつもりだったが、片桐さんは様々な業種を渡り歩き、多彩な体験をしている。いつの間にか、彼女の歩んできた忍耐と結実の人生に圧倒され、俺は敬虔な顔で話を聞いていた。
ソードの5:誰かのために飲み物をオーダーした。
Interact…既存の登場人物(片桐)
まだ空には夕日の残照が残っているのに、俺は早くも酔っ払いだ。マッカラン12年……珍しくもない酒だが、こうして恩人とくだけた話を交わして酌み交わすとペースが速くなっていく。
「あんた、無理して呑むことなんかないのよ」
「いえ、いえ、無理なんて……片桐さんは、マッカランを?」
俺はへらりと笑って、バーテンダーの手元に置かれたモルトウィスキーの瓶を指し示す。酔いが全く顔色に出ていない片桐さんは、俺の虚勢をどう思ったのか、楽しむように笑いを浮かべた。
「頼んでもらおうじゃないの」
陽が沈む。やっと、本当の夜が来る。
ジャーナルの中断
登場人物もいよいよ増えてきたようだ。それとともに、俺の記憶もあいまいになってきたが…
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