このプレイログについて
「LONER」は、ソロプレイに特化した汎用RPGです。
様々な世界観で、様々なキャラクターを遊ぶことができます。
ジャーナル
セッティング
世界観…43/ファンタジー世界の、壮大で叙事詩的な冒険
トーン…65/優雅で格調高い
キーワード1…64/広大な帝国
キーワード2…56/壮大な物語
敵対者…34/古の呪縛
要素1…54/命がけのスタント
要素2…31/隠された秘宝
この冒険は、神話的な叙事詩の一端となる壮大なものになります。それはファンタジーであり、秘められた宝、危険な戦い、語りつくせない不可思議に溢れています。
主人公の作成
名前:スメイ
コンセプト:野心家の邪術師
スキル1:闇と影の魔術
スキル2:古代魔法の知識
脆弱性:自信過剰
持ち物1:古木の杖
持ち物2:ルーンストーン
願望:神による支配を終わらせる
その理由:混沌とした「人の時代」を迎えることで、人はあらゆる可能性を伸ばし、さらに進歩すると固く信じているため
ネメシス:善なる神々の尖兵
ラック:6
この主人公は、まさしくエピック・ファンタジーにふさわしい、混沌の気質と溢れる自信を持つ女性です。神による支配が行われている大地を冒険し、神に打ち勝つ方法を探しています。
NPC:善なる神々の尖兵
コンセプト:熱狂的な信仰者
スキル:祈祷、統率
脆弱性:柔軟性に欠ける
持ち物:聖印、聖別された鎧
願望:神によって齎された秩序の支配を永遠のものにする
その理由:混沌の時代への恐怖と忌避
ネメシス:混沌の勢力
主人公スメイのネメシス(宿敵)は、現在この世界を支配している善なる神々の尖兵です。彼らは白銀に輝く鎧を身にまとい、整然と連携を取って行動します。強大な存在ですが、その根本にあるのは純粋な信仰心ではなく、未知の時代がもたらされることへの恐怖です。
NPC:邪神ドース
コンセプト:堕落した弱き亜神
スキル:闇のポータル、洗脳
脆弱性:あらゆる能力がとても遅い
持ち物:闇の宝物庫、美酒
願望:神としての力を取り戻し、信仰を集める
その理由:力なき己の現状を認められず、狂気に駆り立てられている
ネメシス:迷宮の魔物たち
スメイが迷宮で出会うことになる存在について設定しておきましょう。ドースは不定形の醜い肉体を無数の青黒い触腕で覆っている、悍ましい見た目の邪神です。しかしその力は非常に弱いものです。闇のポータルを用いた瞬間移動と洗脳の能力はありますが、どちらも時間がかかり、戦闘中に即時に使用するのには向きません。かつての栄華がもたらした富と、潤した唇を笑ませる美酒を用いて、己の信仰者を増やそうとむなしい努力を続けています。
その富と魔力が魔物たちの目を引き、しょっちゅう襲われそうになっては逃げ回っているようです。
1:冒険の開始
力を求め古代の遺跡に立ち入ったスメイは、危険な罠や魔物の急襲を難なくいなして最奥へ辿りつきました。
最奥の部屋には古き神の御姿を象った磨かれた石像が置かれ、その頭には見事な宝冠が被せられています。
スメイは石像に近づき、宝冠を取り上げようとしました……そのとき、部屋全体が揺れ始め、足元がぐらつき、堅牢な石の床にひびが走り始めました。暗い唸りが空気を震わせ、欠け落ちた床の下には見通せない漆黒の闇が広がっているようです。
しまった、罠か?
こんな時に、スメイの持つ魔法の知識は役に立ちません。スメイは素早く宝冠を小脇に抱え、ひびの走る床を踏破してきた道を引き返していきます。
この判定は「有利」でも「不利」でもないでしょう。スメイは通常の判定を行います。
スメイのアクション:この罠が仕掛けられた部屋を走破し、無事に宝冠を持ち帰る
Chance dice…5
Risk dice…1
結果…Yes
スメイがこの部屋につながる柱廊へ飛び出した瞬間、背後からガラガラと大きな音が響きました。ひびは部屋の隅々まで走り、その小部屋を粉々に打ち砕いてしまったようです。かつて小部屋の床があったところにぽっかりと開いた果てしない闇の中へ、砕けた床、そして宝冠を奪われた石像が落ちていくのが見えました。
恐らく、スメイはこの宝冠を取るべき人物ではなかったのでしょう。資格を持たない侵入者による奪取を感知したこの宝物庫が最後に発動させた自壊の罠、それこそがこの崩落だったのです。しかし幸運なことに、スメイは魔術の知識のみならず、十分な運動神経をも持ち合わせていました。
スメイは冠を改めて眺めます。
この冠は古代の神々の戦争の時代に作られた秘宝であり、それを手にしたものに大いなる試練と力を与えると言われているようです。
オープンクエスチョン:この冠は呪われているようです。どのような呪いでしょうか?
回答:14-32/share-home
解釈:この冠の持ち主の住まう場所は、常に戦乱に巻き込まれ、血なまぐさい戦いの中で奪い合われることになる
「戦乱と混沌を齎す、《君主の宝冠》」
スメイはその名を噛み締めます。
「私から安寧の地を奪い、混沌の力を与えるが良い」
そうして、迷宮の出口に向かって歩き出しました。
こうしてスメイの冒険が始まります。ここまでは三人称で説明を加えて語っていましたが、ここから先の語り部は、彼女に任せるとしましょう。
2:邪神ドースとの出会い
私は暗い柱廊に魔法で生み出した浮遊光を先行させ、よどみない足取りで進んでいた。
不意にその光が空中で弾け、掻き消えた。暗闇が落ちた古代遺跡の最奥部。ありとあらゆる危機が考えられるだろう。私は杖を握りしめ、研ぎ澄ました感覚を周囲に張り巡らせた。
オープンクエスチョン:邪神ドースはどのようにしてスメイに関わってくるでしょう?
回答:43-23/damage-motion
解釈:スメイを害するための呪文を唱えているが、かなり掛かりそうだ。
私の魔法をかき消すほどの強大な魔法のうねりが、この柱廊に渦巻いているのが分かる。それはとても攻撃的で、致命的な魔法に違いない。
どうやら私は今、狙われているようだ――人ならざる名状しがたき何かに。
「不心得者が!」
鋭く一声を上げて、私は杖を掲げた。
影と闇こそ私の住処。我が魔術で身の程知らずの敵を捕らえてみせよう。
スメイのアクション:〈闇と影の魔術〉を用いて、闇の中の存在を捕らえる。(有利)
Chance dice…3(3,2)
Risk dice…2
結果…Yes,and
私が闇の中に伸ばした影の触手はするすると石の床を駆け、その奥に潜むいびつな巨体に巻き付いて捕らえた。更にもう一体、今にも襲い掛かろうとしていた――私ではなく、その巨体にだ!――シャドウ・ウルフの胴へしたたかに巻き付いて、天井高くまで吊るし上げてしまう。
冷たい影を身にまとった狼の形の魔獣が、太い喉の奥から絞り出すような吠え声を響かせた。
私はそれに構わずずかずかと先に進み、闇の奥で影の触手に縛り上げられた丸い巨体を見上げた。いびつな球体の体で、石の床からわずかに浮遊していたようだ。その体表は粘液まみれの青黒い触腕で覆われ、その奥には巨大で虚ろな眼球が一つ透けている。
私を狙っていた魔法はこの妨害で霧散したらしく、縛り上げた球体は触腕を空しくびちびちと振っていた。
「この遺跡の守護者……というわけでもなさそうだけど」
その巨体に対して短すぎる触腕をびたびたと鳴らして、球体は大きな眼球で私をぎょとりと見下ろした。
「矮小なる人間め! 我にこのようなことをして只で済むと思っているのか!」
「その剣幕だと、どうやら私の術は振り払えないみたいだね」
「その驕り、塗炭の苦しみの中で悔いることとなるであろう!」
体は大きいが、キンキンと騒ぐその様子からなんとなく底が知れてくる。私は警戒をやや解いて、触腕の向こうの巨大な眼球を見た。
「我は邪神ドース、闇なる秘宝の主! たちどころに術を解き、その五体を投じて我への帰依を誓えば、貴様を眷属としてくれてもよいのだぞ」
「私はスメイ、見ての通り遺跡の簒奪者。お前を惨たらしく締め上げて闇なる秘宝とやらを差し出させるのも悪くなさそうね」
「なんだと……!」
明らかに動揺している。妙に人間臭いというか、小物の邪神のようだ。
私は呪文も唱えずもう一体の魔物を縛り上げている影の触手に力を流し込み、その冷たい肉体を無惨に引き裂いて柱廊にばらまいた。
「ひい!」
邪神ドースが情けない悲鳴を上げる。
「この魔物はお前を狙っていた。お前は小型の魔物にも襲われるほど弱いってことでしょう?」
「うぐっ、その侮辱……塗炭の苦しみの中で悔いることに……」
「虚勢を張っても何も始まらない。お前がどんな存在なのかを知りたいの」
オープンクエスチョン:邪神ドースは、なぜこの遺跡に潜んでいたのでしょう?
回答:32-54/ask-income
解釈:ドースはこの遺跡に封じられていた古の神に貸しがある。力を失ったドースは古の神を頼り、その貸しを理由に力を分け与えてもらおうとしていた。
スメイのアクション:〈古代魔法の知識〉を用いてドースの正体を推測する(有利)
Chance dice…4(1,4)
Risk dice…2
結果…Yes
私はいくつかの知識と照らし合わせ、結論付けた。
「お前は亜神。本来神としての力はなく、この神による支配の時代においてはさらに力を失っている、取るに足りぬ存在だね」
「な、なんだとお……!」
「このままでは存在さえ朧になって行動できなくなってしまう……だから、お前はこの古代遺跡を訪れた。かつてその存在を救い、貸しを作った古代神マイトレアに助力を得るため」
「ぐぐ……!」
怒りにざわざわと触腕をざわめかせていたドースは、やがてがくりと触腕を沈めておとなしくなった。抵抗の意思が薄れていくのが分かったので、影の戒めを解いてやることにする。
「マイトレアの眠りは覚めないみたい。お前の力では目覚めさせることもできそうにないわ」
「だ、黙って聞いていれば侮辱に忙しい口だ……! きさまのような小娘一人を殺すことなど、今の我であっても造作もないことなのだぞ!」
とてもそうは思えない――
くだらない舌戦を避けて、私はほかのことを口にした。
「お前は、力を得て何をしたいの?」
「それは……我の身に相応しき力を持てば、何をすべきかは明らかなこと。本来の我に相応しき信仰を集め、神々の座に連なるのだ!」
「なるほど……」
私はドースを見上げた。
「お前には、何ができるの?」
「……実のところ」
ドースはため息をついたようだ。ということは、口がどこかにあるのだろうか……と、思考が逸れてしまう。
「我の能力自体は希少で強力なものであるはずだ。闇の次元門を自由にし、知恵ある生き物の精神を操る……」
「ほかに問題があるみたいな口ぶりだね」
ドースは口ごもり、落胆のにじむ声で言った。
「時間がかかる……何をするにしてもだ。門を開き、そこに何かを送り込み、あるいは取り出し、閉じ……そのどれにも、数時間あるいは数日を必要とする。どんなに些細なことでもだ」
なるほど。つまり、と私は思案した。
「お前に必要なのは、力じゃないね」
「なんだと……ならば、我に何が必要だというのだ」
私は肩をそびやかし、笑った。
「知恵を与える同志、よ」
時間がかかる能力。使い道さえ考えれば、いかようにでも振るえるはずだ。
ただ遺跡の柱廊に飛び出して目の前の邪術師を即時に殺すことはできない、というだけで、この邪神は様々なものをあきらめようとしている。まったく、嘆かわしいことだ。
「私がお前に知恵をあげる。お前は私についてきなさい」
「信仰……我が欲しているのはそれなのだが」
「それなら、いずれ手に入る」
確信を含んで、私は言い切った。
「私はまず、この世界を支配する神を皆殺しにするつもりだからね」
「なんと……」
あからさまな動揺が伝わるが、やがてドースはゆっくりと落ち着いたように触腕を垂らし、巨大な目で私を見下ろした。
「小娘……その大それた叛逆、きさまにできることとは思わぬが。だが、定命の者のたくらみなど元より儚きもの……きさまの命運ある限り、利用させてもらおう」
「それでいい」
何もかも予想の範疇。この小物らしさ、なかなか好みだね。
私は笑みを含んで告げた。
「お前は私に利用価値を認めざるを得なくなるはず。今いる力ある神が消えなければ、お前が神の座で信仰を集めることなど不可能なのだからね」
「うむ……その大言壮語にかなうほどのものか。その力、見せてもらおう」
ドースは青黒い触腕をうぞうぞと動かして、噛みしめるように言った。
私は肩で風を切って歩き出す。浮遊する球体は、私の影に浮かぶようにしてよろよろとついてくるようだ。
3.カシリアの尖兵
オープンクエスチョン:マイトレアの遺跡を出た後、どんな事態に直面しますか?
回答:45-16/gather-key
解釈:《君主の宝冠》は聖域に入るための3つの鍵の1つである。善なる神の一柱カシリアの尖兵たちが《君主の宝冠》を奪おうと待ち構えている。
マイトレアの遺跡の入り口は、雪の降りしきる嶮山の中腹に開いている。私は〈熱〉を示す魔法文字が刻まれたルーンストーンを握りこんで魔力を注ぎ、周囲の温度を快適に保った。
ドースのほうは気温の影響はあまりないようで、魔法を用いるでもなくただうすらぼんやりと浮いている。積もった雪を踏んで山道に出たところで、私は足を止めてドースに一瞥を送った。
「下がって」
「うむ?」
よろよろ下がったドースの触腕をかすめるように、短く太い弩の矢がどすり、と撃ち込まれた。
雪の積もる針葉樹の森に、輝く鎧の一団が潜んでいる。この私を狙い、これほどの数を出してまた構えているなら、おそらくは善なる神の勢力。特別な〈祈祷〉の成果か、この凍てつく風の中でも通常と同じように行動できるようだ。
「な、ななな、なん……」
「お前って、弓で射たれたら死ぬの?」
「ぐっ……そんなもの、きさまら人間だって同じだろう!」
怯えている様子から見ても、その耐久力は通常の人間とさほど変わらないようだ。このウスノロの巨体を攻撃に晒すわけにはいかない。
つまりは、先手必勝だ。
スメイのアクション:邪悪で攻撃的な〈闇と影の魔術〉で、待ち伏せしている勢力を殺害する。(有利)
Chance dice…6(6,2)
Risk dice…5
結果…Yes,but
闇のつぶてが空から降りしきり、善なる神カシリアの聖印をたずさえた兵士たちの命を次々に奪う。闇が渦巻き、苦悶の声が響き渡り、凍てついた針葉樹が次々によじれながら枯死していく。
魔術の効果が終わったとき、紫に染まる毒の雪を踏みしめて、一人の影が私の前に立った。
オープンクエスチョン:非常に手ごわい腕利きが目の前に立ちます。どんな人物でしょう?
結果:53-41-34/collect-scare-talk
解釈:希少なものを集めている饒舌なコレクター。彼は聖騎士ではなく、《君主の宝冠》を目当てにやってきた遺跡荒らしだ。
「邪魔な頭でっかちどもをあらかた片付けてくれて助かったよ」
目の前に立った男は、快活な笑顔で言った。背が高く、ぎょろりとした大きな目で、口も大きい。鳶色の髪に緑の目。印象としては明朗だが、うさんくさい気配もある大男だ。
聖なる力を込めた輝く鎧を身に着けていた兵士たちと違い、分厚い毛皮を着ている。履いているブーツも、雪山を歩むために金属の歯が取り付けられているあたりからして、自前の装備のようだ。
毛皮を着た男はずかずかと私に歩み寄りながら、片手剣を鞘からすらりと抜いた。
「……おっと、恨むなよ」
その刃先を見もせずに、起き上がろうとしていた神殿の兵士の喉を斬り捨てる。派手にしぶいた血が雪の上に広がった。無念の悲鳴がか細く響く。
どうやら、この局面で生き残りがいても、この男と連携をとることはなさそうだ。
「私と戦うつもりみたいだね」
「ううん、そいつは気が進まないな。《君主の宝冠》をくれるなら、無傷で見逃してやったっていいんだけど」
私は迷わず〈古木の杖〉を掲げ、呪文を唱えた。
慣れた魔術ではあるが、これほどの手練れを相手に詠唱が間に合うかは運次第でしかないだろう。
スメイのアクション:〈闇と影の魔術〉で毛皮の男を殺害する。
Chance dice…3
Risk dice…2
結果…Yes,and
私の引き起こした闇の渦に肉体を侵食され、悍ましい痣と鬱血を全身に刻まれながら、男は素早く斬りかかってくる。魔法を放ったばかりの私はほとんど無防備で、〈古木の杖〉での防御も間に合わない。
スメイのアクション:男の刃をかわす。(不利)
Chance dice…5(5,5)
Risk dice…4
結果…Yes,but
ぎりぎりといったところだ。私は滑りかけた足を〈古木の杖〉を頼りに立て直し、魔力を込めた〈ルーンストーン〉を毛皮の男に投げつけた。それは空中で弾けて電流をまき散らし、男から悲痛な苦鳴を引き出した。
いい機会だ。この男を捕まえれば、ドースの能力を試す機会があるかもしれない。私は杖を構えなおし、〈闇と影の魔術〉による捕縛を試みることにした。
スメイのアクション:男を魔術で拘束する。(有利)
Chance dice…5(5,3)
Risk dice…5
結果…Yes,and+Twist1
毛皮の男は呪いの言葉をまき散らし、藻掻きながら、影の触手に縛り上げられていく。
「がぶっ、ご、っ」
うるさい舌を縛り上げるために口の中のまで触手をねじ込み、唾液をだらだら垂らす舌にまで巻き付けて外へ引っ張り出す。両脚に細い触手をくるくる巻き付けて縛り付け、死体袋に入れた死体のような直立不動の姿勢で雪の上に投げ出してやる。
「殺すのか?」
後ろに浮かんだドースが、どことなくおどおど尋ねてくる。
私は杖を握ったまま振り向いて、力強くドースに言った。
「時間がかかってもいいから、次元門を用意して。この男をそこに放り込んで、運ぶことはできる?」
「む……確かに、この状態では逃げようもなし。不可能ではなかろうな」
「こいつを私の隠れ家まで運んだら、そこでこの男の頭の中を弄ってみて。どれくらい使えるか、見せてもらうから」
「高慢な娘よなあ」
不満げにぶつぶつと零しながら、ドースは触腕で空中をつんとつついた。じわじわと厚紙にインクの染みが広がるかのように小さな黒い穴が開き、よく見ているとそれはごく緩慢ではあるが広がっていくようだ。
確かに、人一人を放り込む大きさになるまでは時間がかかりそうだ。私は肩をすくめて風をしのげる遺跡の入り口まで戻り、焚火に使えそうな小枝を集めることにした。
4.隠れ家
私はドースを連れて隠れ家に戻っていた。
魔法の書物が雑然と積まれているだけの小さな小屋だが、頑丈で立派な地下室がある。そこに毛皮の男……名前を聞き出したところによるとヨナという名前らしいが、彼を放り込んで、ドースに洗脳を任せた。
ドースのアクション:遺跡荒らしのヨナを、時間をかけて〈洗脳〉する。(有利)
Chance dice…6(2,6)
Risk dice…3
結果…Yes
ヨナはしばらくは元気に罵倒を叫んでいたが、だんだんめそめそとすすり泣くようになり、懇願が混じり、突然火が付いたように泣き叫んで殺してくれと喚き、しだいに何もかも諦めたような言葉をぽつぽつと漏らすようになった。それから丸1日はぴたりと黙りこくって死んだように静かなままだったが、やがてドースが満足げに私を呼んだ。
「洗脳が完了したぞ」
「わかるものなの?」
「術者だからな」
球体のドースには胸を張る方法もないが、満足げなようだ。私は読んでいた本を置いて地下室の落とし戸を上げ、横たわっているヨナとそのそばで浮かんでいるドースに近づいた。
「洗脳が最後までうまくいったのなんて、何百年ぶりだろう。満ち足りた心地だ……たまらんな」
成功体験を積んで感動している邪神をよそに、私はヨナを見下ろして声を掛けた。
「立って、私を見て。自己紹介をして」
「はい……」
ヨナは脳への負担が続いたからか、顔の下半分が鼻血で染まっていた。緑の瞳は焦点を結んでおらず、たくましい長身はやや腰が引けて気弱な様子だ。
戦いの技術はどれほど残っているだろう? 洗脳したらただの木偶の坊になってしまうのでは意味がないな。私はいろいろ思案しながら、注意深く語りかけた。
「お前の名前は?」
「……」
どうやら自我をほとんどそぎ落としてしまうタイプの洗脳のようだ。私はとりあえずにこりと笑いかけ、優しく言った。
「お前の名前はクルム。私の下僕で、剣の巧者だよ」
「……! は、はい。おれはクルム、あなたさまの下僕です」
「おい!」
抗議の声を上げたのは、ドースだった。
「我の信徒を増やすのではなかったのか」
「こんなちまちま一人ずつ洗脳して増やしたって始まらないよ。神を追い落としてそこに就かせるって言ったでしょ」
ドースのほうを見もせずに私は言い、ヨナ……今はクルムという名になった男の下腹を軽くつま先でつついた。
「剣の腕を見てやるから、ついてきなさい」
クルムは訥然と頷いてついてくる。私は地下室を出て部屋の中を見回し、壊れたままの箒の柄をクルムに渡した。
クローズクエスチョン:クルムには剣の技術がありますか?
Chance dice…2
Risk dice…5
結果…No
クルムは私の〈古木の杖〉で叩きのめされ、めそめそと泣いて部屋の隅にうずくまっている。
参ったな、と私は頭を掻いた。どうやら今のドースの〈洗脳〉の技術では、その対象が本来持っている技術もほとんどなくなってしまうみたいだ。
心配そうにふわふわと浮いているドースを見て、私は肩をすくめた。
「地下室に大きな台があったでしょ?」
「う、うむ。あの祭壇か? 何度かぶつかってしまったな」
どことなくしょんぼりと答えるドースがいじらしく見えてくる。
あまりドースを落ち込ませないようにしよう。どんなものでも、使い道はあるはずだ。
「あれ、黒魔術の道具なの。盃の形になってて……ゆっくり血を溜めながら魔術を使うと、生贄のマナを取り込むことができる」
「む……それは、我にも……」
「私にしか使えないよ。お前専用のものを自力で作れば同じことはできるかもね」
すかさず釘を刺して、クルムを立たせる。
「クルム、もう泣かないで」
「はい……」
暗い顔を上げるクルムを見て、私は命令を続けた。
「これから一切泣かないで。声も上げないで。暴れるのも禁止ね。うるさいの嫌いだから」
「はい、わかりました、ご主人様」
「ドース、手伝ってくれる?」
「うむ……殺してしまうのか?」
不承不承に言うドースにあからさまに「そうだ」と言うのはひとまず控えて、私はクルムを連れて地下室と戻った。
スメイのアクション:〈闇と影の魔術〉を用いて、クルムを生贄にして力を得る。(有利)
Chance dice…6(6,5)
Risk dice…1
結果…Yes
一番大きいものでも拳大ほどの、まったくのぼろぼろの屑だけで残った肉片を丁寧に回収して焼き捨て、私は久しぶりに朝日を浴びた。全身に力が漲っているのを感じる。
私も、生贄の儀式に成功したのは久しぶりだ。やっぱり、晴れやかな気分になる。ドースにひっそり親近感を覚えつつ、固まりそうなほどの大量の返り血で駄目になった衣服を次々に丸めて捨てた。
「……あの男、我の信徒にしなくてよかったかもしれない」
ドースは少し落ち込んだ様子で、ぽつりと言った。
私は明るく笑い飛ばして、その触腕で覆われた表面を撫でた。
「これからいくらでも増えるんだから、気にしない気にしない!」
「うむ……明るいな、そなたは」
いつの間か呼び名も変わっているようだ。悪くない気分だった。
私は井戸水をくみ上げてばしゃりと浴び、生贄の血を洗い流した。
冒険の終了
スメイは強大なアーティファクトである〈君主の宝冠〉を手にし、邪神ドースと協力関係になり、宿敵からの襲撃を退け、新たな力を得ました。
これにより、スメイのデータにいくつか変更が加えられます。
名前:スメイ
コンセプト:野心家の邪術師
スキル1:闇と影の魔術
スキル2:古代魔法の知識
スキル3:生贄から得た魔力
脆弱性1:自信過剰
脆弱性2:生命への軽視
持ち物1:古木の杖
持ち物2:ルーンストーン
持ち物3:古代のアーティファクト〈君主の宝冠〉
願望:神による支配を終わらせる
その理由:混沌とした「人の時代」を迎えることで、人はあらゆる可能性を伸ばし、さらに進歩すると固く信じているため
ネメシス:善なる神々の尖兵
ラック:6
スメイは力を蓄え、神との戦いに備えます。スメイの悪行が続けば、ネメシスに官吏や正義の冒険者が加わることもあるかもしれません。
コメント