E D E N . // ジュダイア・クラークの調査記録

プレイログ

このゲームについて

E D E N.」は、エデン南セクターを担当する植物学者となって、専任の学者の失踪から始まる一連の謎を解くジャーナリングゲームです。

このゲームには一切のランダマイザがありません。すでに用意されている質問に1つずつ回答して、ストーリーを作り上げていく形式になっています。

ジャーナル

導入

本契約はトロイ・ウェストとジュダイア・クラークとの間で2243年12月15日付で締結され、エデン南セクターの植物学研究主任の職を与えるものである。
有効期限は2243年12月25日とする。

私の名前は、ジュダイア・クラーク。植物学者だ。
エデン南セクターへのたった10日間の赴任。もちろん、これは研究のための人事ではない。

「君は仕事をしに行くのではない。調査をしに行くのだ」

トロイ・ウェストの陰鬱な瞳が、署名をする私の手元を映している。

「君の前任者、ダミアン・スミスの失踪について」

私は署名を終えて、ペンを置いた。小文字のaのしっぽがひょろりと伸びる筆致を、トロイの目はじっとりと追いかけていた。

12月15日

まずは、エデン南セクターの植物園を一通り調べる。適切に手入れがされていたとは言い難いようだ。弱い植物は病気にかかり、あるいは枯死していた。庭園を確認しておくと、妙に真っ赤な花が目についた。

この花についてはどこにも記録がない。花の形はカリブラコアに似ているが、葉がなく、茎が非常にしなやか、赤い色が非常に鮮烈だ。このように管理されている植物園で、まったく記録のない花が咲いているというのは奇妙なことだ。

よく見ると、この花はあちらこちらに咲いている。

12月16日

荒れ果てた庭園を手入れすると、余計に例の赤い花が目につく。それはまるで一分ごとに育っているようで、異様な生命力に満ちていた。
庭園に嫌な空気が漂っている。まるで監視されているような。
バカな。誰が監視してるっていうんだ?
バカげた妄想と現実の区別はついている。その程度の賢さはあるさ。

12月17日

ひとまずこの赤い花を「ルージュ」と呼称し、この記録に記しておこう。今は適当極まりない名前だが……いずれ落ち着いたら、学名をつけることになるかもしれない。

ルージュは昨晩から、濃い黄色の花粉を放っている。花粉の芳香は化粧品に似ていて、少しせき込んだ。
いや、これは本当に花粉だろうか?

12月18日

研究員たちが奇妙な病気で倒れている。倒れた研究員の肌には鮮やかな赤や青の模様が広がっている。最初は激しい咳をしていたが、それが次第に弱弱しくなり、ひょろひょろとした呼吸音を響かせ始める。
気がつけばベッドのシーツが真っ黄色に染まっている。ルージュの花粉によく似ていた。

花粉が感染症を引き起こしているのか?
ガスマスクの配備を要求しよう。

12月19日

枯死した植物を処分し、資材を片付けて、庭園を縮小することにした。
「ルージュ」は一通り処分したはずだが、一日経つと昨日以上に大量に咲き誇っていた。異常な植物であることは確かだが、どう手を打ったものか考えあぐねているところだ。

作業の最中に、倒木の陰に隠れていた真っ黒な血痕を発見した。
ひとまず写真記録を撮影して本部に送信したが……これはなかなかややこしいことになってきたな。なんせ、血痕というのが尋常な量じゃない。どう見ても、ここでただならないことが起きているとしか考えられないのだ。

これは先任のダミアンのものだろうか? だとしたら、ダミアンの生存は絶望的だ。しかし、いったい誰が?
……血痕以外の痕跡は残っていないだろうか。明日はダミアンを本格的に探すとしよう。

12月20日

庭中にはびこっている雑草を処理しながら、広い南セクター庭園を探索する。
不自然に長く伸びた雑草が、こんもりと盛り上がっている区画を発見した。
雑草を掻き分けて鎌で根元を切り、その下に隠れているものを明らかにする……

死体だ。
だが、女性のものだった。
半ば腐乱しかけていて、柔らかく溶け出しかけた肉に植物の硬い根がぎっちりと食い込み、巻き付いている。その維管束が血漿を吸い上げているごうごうという音が聞こえてくる気がした。
視界の端で、ぱっ、と何かが動く。
それは、草の陰に隠れて蕾のまま潜んでいた赤い花が、弾かれたように開いた瞬間だった。
死体の周りに張り巡らされた根。林のように伸びた茎。その上に赤い花が開く。次々に開く。そして、黄色い花粉をこぼす——
私は慌ててハンカチで鼻と口を抑え、後退した。

これはどういうことだ?
女性の死体が不自然に隠されていて、そこに「ルージュ」の根が張っている。「ルージュ」は死体のエネルギーを吸い上げて咲いているようだ。あきらかに異常な性質……この死体は、まるで「ルージュ」を十分に育てるための苗床のようだ。このような異常な植物が、なぜここにあるのだろう?
そして、この死体は誰なんだ? ダミアンは40歳の男性だ。この死体ではありえない。
あの大量の血は、この女性のものなのだろうか。だとしたら、ダミアンは……

12月21日

セクター内の生活用水循環システムが異常を訴え、整備が必要になった。植物の根があちこちの設備を破壊し、水に溶けない黄色い花粉があちこちのパイプに詰まっている。
私はふと気になって「ルージュ」の花粉を採集し、試験管の中で水に溶かして振ってみた。
花粉は半分近くが水に溶けているが、水の色は変わっていない。

この花粉はすでに水に溶け込み、このセクター内を循環している。
もう手遅れだ。
これまでにどれだけの量を摂取してきたのだろう?

私はガスマスクを外し、ダストシュートに放り込んだ。

12月22日

もはやあらゆる植物が枯死している。ルージュだけが元気に咲き誇っている。花粉が降り積もって、至るところの地面が黄色く染まっている。
南セクターの人々が次々に倒れている。医療施設はもはや機能停止状態に追い込まれている。医療関係者すら、ルージュの花粉からは逃れられないのだ。

私の体はまだ動く。倒れた研究者たちを一室に集めて鍵を掛けなければならなくなった。彼らが咳をするたびに、黄色い花粉が飛び出すのだ。

隠されていたデータディスクから、ダミアンの記録を見つけた。
彼はエデンと敵対するコロニーから送り込まれた破壊工作員だ。研究資料に紛れ込ませてこのルージュをエデン内に運搬することに成功し、市民の一人を殺害してルージュの栄養剤替わりにした。
彼はもうエデンにはいない。ここが死の都市になるのが分かっているから。

12月23日

除草剤を撒くが、効き目はほぼ感じられない。もはや植物研究所はルージュのゆりかごだ。ここで芽生え、力をつけ、南部セクターにその忌まわしい根を伸ばしていく。
本部に連絡を取るが通じない。南セクターにこれ以上人を送らないでくれ。南セクターの人間を外に出さないでくれ。厳重に封鎖してくれ。どうか、このルージュを、ここに閉じ込めて。

12月24日

大気循環システムはエデン全体で繋がっている。
花粉をたっぷり含んだ南セクターの空気は、すでにエデン中を巡っていた。
トロイとはまだ連絡が取れない。当たり前のことだったな。

12月25日

エデンは、人間が生息できない環境である火星に築かれたドーム都市だ。このドームを出れば、過酷な環境が広がっている。
それでも、私は行かなければならない。この肺にたっぷりの花粉を閉じ込めて、肌に赤と青の斑点を広げて、都市外活動用スーツに汚染された空気を充填して。
私はダミアンを追いかける。彼が帰還したドーム都市に、この命が尽きるまでに辿り着く。
エデンはもはや、赤い花が咲き乱れるばかりの静寂の都市だ。
エデンを滅ぼした報復は、私の吐息が果たしてくれるだろう。

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