シングル・サムライ

プレイログ

Single Samurai」は、野伏に襲われようとしている村にたまたま居合わせた一人の侍が、いずれやってくる襲撃に備えて武器をそろえ、村人を鍛え、罠を仕掛けるソロジャーナルです。すべての準備がどのように結実するかは、最後の決戦で明らかになるでしょう。

開始

…8/あなたは長旅を終え、故郷に帰ってきた。

私の名は志乃。旅の武芸者だ。侍の血筋に生まれはしたが、武家同士の争いに負け家は没落。私に残された財産は。名刀「篠切(しのきり)」しかなかった。
しかし、私とて武芸を志す身。この見事な刀一振りが残されたならば、過分なほどだ。
私は刀を手に長い旅をして、各地の腕利きたちに打ち勝ってきた。そして、ついには故郷の村に戻ってきたのだ。

追われるように飛び出したこの故郷。さしたる思い入れがあるわけでもないのだが……
野伏(のぶせり)が庄屋の蔵に押し入って火付けをしようとしているところに出会わせてしまっては、また別の話だ。
私は「篠切」を抜いて飛び出し、戦場から拾ってきたと思しきぼろぼろの武器や鎧で武装した野伏たちを片っ端から斬り捨てた。どうやら後続の部隊がいたようだが、私と戦ったことで半壊した仲間たちの隊を見捨てたようで、それはすぐに闇に紛れて見えなくなってしまった。

「野伏ごときが、なぜこのようにだいそれたことを?」

縄で縛って転がした野伏を見下ろして尋ねると、奴は破れかぶれのようににやりと笑ってみせた。

「大それたとは思わんなあ。このような小さな村、今の我々ならば一ひねりよ!」
「大風呂敷を……」
「いや」

舌打ちする私の前に、見覚えのある男が現れた。
三左。年を食って大分雰囲気も変わったが、私とこの村で共に剣を学んで生まれ育った男だ。私にはすぐに気づいているみたいで、久闊を叙す様子もなく滑らかに言葉を続ける。

「奴ら、はったりではないようだ。この村の近隣で力を蓄えている野伏の一団があるという……」
「だとしたら、何だ」
「……そう遠くはない……奴ら、この村に攻め入ってくる気だ」

私はぞっとして、転がったままの野伏を見下ろした。
そのひげ面の男はニタニタと笑ったまま、答えなかった。

「村人を逃がさないと!」

私はあわてて声を荒げた。三左は首を振り、声を暗くした。

「逃げるだと……この山奥のどこに、そんな場所がある」
「この村には女も子供もいるんだ、野伏とは戦えない!」
「ならば、女も子供も死ぬのだ」
「……!」

私は全身の血が冷えていくのを感じながら、三左の暗い瞳と視線を合わせた。
私はゆっくりと、絞り出すように言った。

「……そんなことは、許さない」
「なら、どうする」

私は俯き、篠切に手を置いた。
しばしの沈黙を挟み、まっすぐに前を向く。

「……野伏を、斬る!」

Week1

conviction5消費…2,3,5,6,10

5-6:鍛錬/5・6の出目の数だけTrainingの数値を上昇させ、しかるがのちに1減らす

私は武家の家に踏み込み、武器庫を開放するように要求した。
もっとも、ただそれだけではこの地に身寄りもいない私の言葉は通るまい。
嫡男である三左が私の隣に従い、使用人たちに蔵の鍵を持ってくるよう要求したのだ。

「礼は言わないぞ」
「求めてもいない」

三左は鼻を鳴らした。

「この地の民はもとより朝敵の血筋、一度武器を手にすればおのずと戦い方を見出すはずだ」

それは少し希望的観測にすぎる気がするな、と、私は持ち出された槍を手に考え込んだ。

「特に弓は指導者が要る。私は戦いなれてない人たちの指導に回るよ」
「……お前は昔から教え上手だったもんな」

三左は懐かしむように目を細め、「好きにしろ」と言った。
昔と同じ控えめな笑顔だ。すべて終わったら、友と酒を酌み交わす時もやってくるのだろうか。

↓Conviction 11
Battle 0
Material 0
↑Training 1
Spirit 0

week2

conviction6消費…4,4,6,6,9,10

9-10:僥倖!/9の出目の数だけ好きなステータスを上昇させ、10の出目の数だけConvictionを上昇させる

私は唖然としていた。
朝焼けと共に山から下りてきた奇妙な一団。
最初は野伏の襲撃かと警戒していたのだが――

「我らが腕前、しかと見届けられよ」

その一言と共に、毛皮と黒い布で身を固めた異風体の一団は次々に短弓を取り出し、稽古場の的めがけて射かけた。
その矢は的の中心を正確に射抜き、続けて射かけられた矢は前に刺さった矢に命中し叩き割った。
恐ろしいほどの腕前だ。たじろいでいる私にちらりと視線を投げ、その一団は弓を下げてびしりと並んだ。

「われらは山懸衆(やまがかりしゅう)。この地に古くより住まう狩人の一団なり」

山懸衆……
私と三左は顔を見合わせた。
それは、この地に古くからあるおとぎ話のような存在だ。古くは朝廷と戦い、今は闇から闇を駆け、独特の哲学と鍛錬の中に生きる存在。その矢は月を射抜き、その刃は闇色に輝く。
あの山懸衆が、私たちの前に現れたというのか。

「野伏どもと一戦交えるには、村の者と協力するよりほか無し、というのがわれらの長の判断である」
「この腕前……村を守るために貸してもらえると?」

慎重に尋ねる。山懸衆の男は、小さく首を振った。

「否……手を携えるだけのこと」
「それで過分なほどだ」

私を押しのけて、三左が薄笑いと共に言った。
その頬が引きつっている。気圧されているのは三左も同じみたいだ。

「野伏に立ち向かう志は同じ。一蓮托生にて奮おうぞ」

夜のような沈黙が返される。突き上げた三左の拳が空しかった。
武家ならぬ山懸衆には、こういった鼓舞は効果が薄いというだけのことだが……
なんだかかわいそうになってきたな。

↓Conviction 6
↑Battle 1
Material 0
Training 1
Spirit 0

week3

conviction6消費…5,6,7,8,9,10

5-6:鍛錬/5か6の出目の数だけTrainingを+1

7-8:心魂/7か8の出目だけSpiritを+1

9-10:僥倖!/9か10の出目だけ好きなステータスを+1

村の民家の屋根の一つ一つが、山懸衆が用いる独特の形の櫓に作り替えられてしまった。
弓を教えた村人たちの上昇は目覚ましく、櫓から射た矢の命中率は半日ごとにめきめきと上がっている。
男衆には、槍ふすまを作るだけの訓練はすでに行き届いているようだ――こっちの訓練は三左が受け持っていたのだが、順調なのが足音からも伝わってくる。

武装が進むこの村に、来客が現れた。
大きな太刀を背負った、ひげ面の大男だ。その意外と端然とした所作や服装から見るに、野伏の一員ではないようだ。
来客は弓で狙われながらも泰然として歩み寄り、大声で私と三左を呼んだのだという。

「我が名は弥永氏次郎(よながしじろう)、主命あってこの村へ参った」
「主命?」

怪訝な顔をする三左の脇腹を、私は慌ててつつく。

「バカ。弥永の氏次郎といったら、今の大名の指南役だ!」
「大殿の?」
「こんな田舎に住んでちゃ、大殿の顔を見る機会だってなかったんだろうけど……」
「バカにするなよ、それはお前も同じだろう」

ちくちくつつきあっている私と三左を、氏次郎はむすっとした顔で見守っていた。
私は慌てて手を引っ込め、姿勢を正した。

「大殿のご意向とあらばお従いしますが、何分今は切迫の事態ゆえ……」
「そう、切迫の事態ゆえにわしが参ったというわけよ」

氏次郎は一気に破顔し、豪快に大笑いした。

「並みいる野伏を斬っては捨て、斬っては捨てて来いとな! 若造ども、気張らねばそなたらの手柄はこの老いぼれが独り占めじゃ!」
「な、なんだって……」

三左が力なく呻き、がくりと肩を落とした。

「どうせなら、手勢を率いてくればよかったものを」
「それではわしの手柄になるまい?」

氏次郎はからからと笑い、腰に下げた瓢を傾けて喉を鳴らした。

 

月が針のように削れ、いまにも闇に紛れようとしている。
私は物見に腰かけて、瓢を口元に傾けていた。
中身は水だ――あの氏次郎とおなじく。

「志乃、こんなところにいたのか」

どこか気負いの抜けたさっぱりした声が懐かしくて、振り返る。梯子を上ってきた三左が、特に断りもなく私の隣に腰を下ろした。
三左はどこか照れ臭そうに笑ってから、わざとらしくぶっきらぼうに声を掛けてきた。

「おれにも一口くれよ」
「水だぞ」
「なんで水なんか飲んでるんだ?」
「喉が渇くからだよ」

そっけなく言って、瓢を投げてやる。三左は少し悩んでから、結局飲むことにしたようだ。ひっくり返された中の水がごぼっ、と音を立てていた。
口元をぬぐって、三左が言う。

「奴ら、じきに来るな」
「ああ、そろそろだろう」

山懸衆の斥侯がそう言っていた。山がざわめいているのは、気のせいではなさそうだ。
私と三左は、しばらく黙り込んだ。

「……あのっ」
「なあ」

二人の声が重なって、拗ねたような視線でにらみ合う。

「お前から言えよ」
「譲ってやるよ」
「思い切りのない奴。昔からそうだったな」
「その皮肉屋なところは変わらないな」

しばらく言葉を交わしてから、またどちらからともなく笑い出した。
三左とは古い仲だった。それを割いたのは、もちろん家だ。私の家は滅び、三左の家はこの地を手に入れた。二人が離れるのは必然だったというわけだ。
そして、こうして共に戦うのも。
笑いを収めた三左が、寂しい横顔でぽつりと言う。

「皮肉なものだな」
「だが、悪くない」

私は友の背を叩き、瓢の水を取り返した。

Conviction 0
↑Battle 2
Material 0
↑Training 4
↑Spirit 2

決戦

●Battleが 2未満の場合、あなたは戦闘で生き残ることはできません。
→Battle:2

野伏が押し寄せてくる。
村の者が放った矢が牽制して防衛線を築くうちに、山懸衆の必殺の矢が的確に飛来しては野伏たちの業に満ちた命を奪う。
すっかり怯んだ野伏どもの前に、三人の侍が立つ。

ひげ面の大男が、巨大な刀を振り回して肩に担ぐように構える。
「これなるは弥永の氏次郎、愛刀の錆を増やしに参じた!」

身なりのいい若武者が、刀を青眼に構えて賊どもを睨めつける。
「わが名は三左、この地の守り手。貴様らに踏み入らせはせぬ!」

そして私もまた、刀の柄に手を置き名乗りを上げた。
「武芸者志乃が名、冥途の土産に聞き及んでおけ!」

襲い掛かってくる野伏たちを前にしても、心は澄み渡り、高揚すら凪いでいく。
刃が振るわれ、血潮が舞う中、怒号すら遠く響いて、ただ鳥の声が聴こえた。

●MaterialとTrainingの合計が4未満の場合、村の大部分が破壊され多くの人が殺されます。
→Material+Training:4

野伏たちは村に立ち入ることすらできなかった。連中お得意の火付けをする暇すらなかったようで、桶一つさえ壊れてはいなかった。
村人たちは櫓に上がり、普段見慣れた村をまじまじと見てから下りることになった。それはあまり意味のない行為のような気がするが、皆は喜んでこれを繰り返した。

●Spiritが2未満の場合、村は荒れ果てるか、もしくは山賊を取り逃します。
→Spirit:2

「これで全部だな」
「ひいい……」

山懸衆は、野伏を逃す気はないようだった。あちこちの山野に散ろうとした野伏たちは次々に捕らえられ、縛り上げられ、村の入り口にどさどさと積み上げられた。

「弥永どの、賊の処断は……」
「うむ、大殿からのありがたーい言葉だ!」

刀の錆とは何だったのか、血みどろだった刀を丹念に丹念に手入れしていた氏次郎が、晴れやかな笑顔で立ち上がる。

「沙汰を待つまでもなし! ただ獣の害や病の源とはならぬよう、身の丈よりさらに深く埋めよとのこと」
「われらの大殿は賢いな」

私は冷ややかに笑った。三左が村の男たちを呼び、村中から穴掘り用の鍬や鋤を集めさせる。私はひとまず穴の大きさを図り、地面に枠を描き始めた。

 

何もかも片付いたころには、日も暮れていた。泥だらけで汗をぬぐう私に、三左がしかめっ面をする。

「お前、におうぞ」
「血と汗と泥で肌が見えんほどだ。近くの川で水浴びでもしてくるか」

服に鼻を近づけてすんすん、と鳴らすと、三左はあきれ顔をした。

「年頃のおなごが不用心なことをするものじゃない」
「なんだ、いきなりだな」
「いきなりでもなんでも、ダメなものはダメだ。おれの屋敷の湯殿を使え!」

肩を怒らせて、三左が歩いていく。私はひとまず乾いた泥を払い落として、宴が始まる村へと駆け足で戻った。

コメント

タイトルとURLをコピーしました