Against the Wind 目次
キャラクター作成&世界作成 https://soloj.hodo49.com/archives/2572
骨の魔女ラニ 1 https://soloj.hodo49.com/archives/2591
骨の魔女ラニ 2 https://soloj.hodo49.com/archives/2600
探索の続き
旧王国の遺跡で-4
ここでチャレンジを始めましょう。ラニはモラクス帝と交渉を行い、必要な情報とバックアップを要求しようとしています。これは「Interaction」の分類になります。
コンセプト:モラクス帝と交渉を行い、必要な情報とバックアップを要求する
マニューバ:5
エンデュランス:3
アッパーハンド:ラニ
マニューバは対決相手がどれだけ干渉できるか、エンデュランスはこの対決がどれほど手ごわいかを示しています。特別な理由がない限り、ラニから行動を開始します。アッパーハンドは単純なイニシアティブではなく、能動的な、物事を動かそうとしている側を示します。
アクション:堂々と主張してモラクス帝と対等な立場であることを認めさせる
ダイスロール:9→Effort!リソースを1点消費して成功
Against the Windでは、一律2d6で10以上なら成功(HIT!)と言う扱いになります。9以下の場合、リソースを消費して10に届かせれば努力成功(EFFORT!)、成功させないなら失敗(MISS)になります。
リソース:FACTOR5→4
今回はFACTORを1点消費します。これはラニを支えてきた環境やラニの能力が築いてきた確かな自己評価や評判を盾に取り、正当な扱いを要求するという扱いになります。
エンデュランス:3→2
「遠い昔に滅んだあなたたちの言葉にまともに取り合って、〈星の黒鉄〉で武器を鍛え上げることまでできるのは私くらいのはずです」
ラニは自分の胸を指し示して鋭い舌鋒で指摘します。
「われらに天運があったというだけのこと」
「私に出会ったのが幸運であるなら、少しは感謝をしたっていいんじゃないですか」
「……まだそなたは何一つ成し遂げてはおらぬ。卑しき民よ」
冷え切ったモラクス帝の瞳を見つめ、ラニはひくりと喉を動かします。このまま主張し続けていいのだろうか、そんなためらいも感じつつあります。
しかし、ラニはこの冒険に出るにあたって、自分の能力を見つめなおし、鍛えなおし、明確な自信を持っていました。自分だからこそこの大業を任されたのであり、自分を見出すのはある種の必然だったのだ。そんな確信を築き直します。
「これからこのアストラフェルを旅して、あなたたちのために戦う英雄のために、できることは全てするべきだと言っているんです」
「……英雄」
モラクス帝の口角に、冷たい笑みがにじみます。
アッパーハンド:モラクス帝
EFFROTで成功した場合、アッパーハンドを交替します。
アクションタイプ:8→アグレッシブ
アグレッシブアクションは、1人のキャラクターのどれか1つのリソースを1点減らします。
アグレッシブアクション:9→有害な真実を明らかにする
リソース:ESSENCE3→2
「そなたらは長き時の中で、そのほとんどを忘れ去ってしまった。かつて空を駆けた人々が、今は洞窟に伏して嵐に怯えている」
「どういうことですか?」
「……この地は帝国であり、我は皇帝であった。そして、そなたらは……」
モラクス帝の青白い手が指を突きつけます。
「魔法によって作り上げられた、奉仕生物の一種に過ぎなかった」
ぽかんとした様子のラニを静かに見据えて、モラクス帝は淡々と続けます。
「長き時が為した混血が、今やそなたらを人たらしめているとしても……そなたらは間違いなく、卑しく人たりえぬ隷奴の末裔でしかないのだ」
それは存在の根幹を揺るがすような、衝撃的な事実でした。目の前の亡霊がどれほど正しいことを言っているか、裏付けを取れないことには何とも言えませんが、直感的に事実を告げていることはわかるでしょう。
絶対君主を前に、魂が奴隷に近づく——
ラニは、魂の力が摩耗していくのを感じました。
アッパーハンド:ラニ
アクション:心を強く持ち直し、平然とした態度を見せる
ダイスロール:7(EFFORT!)
リソース:ESSENCE2→1
リソース:FACTOR4→2
エンデュランス:2→1
「かつてそうだったとしても、今はそうじゃない」
冷然と、ラニは言い切りました。
「今の私が、奴隷に見えますか?」
「本質は変わらぬ。時を経て濁ろうとも」
「あなたが濁りだと断じるそれこそが、私たちを私たちたらしめているんです。時代は変わり、すべて変わった。あなたは置き去りにされているだけ……それは気高さでも何でもない」
ラニは微笑んで首を傾げました。
「無理もないこと。ずっとこんな暗い墓所にいたら、人を見る目も失われてしまいますね」
モラクス帝は押し黙り、暗い眼差しをラニに突き刺してきます。
アッパーハンド:モラクス帝
アクションタイプ:7→アグレッシブ
アグレッシブアクション:3→公然と侮辱・軽侮の言葉を投げつける
リソース:ESSENCE1→0
「そなたらは隷属すべくして生み出された存在。人たらしめるような思念や思考を持ってしまったのは、ひとえに不幸であったな」
モラクス帝は重い口を開き、冷ややかに言いました。
「……跪け」
その言葉は古く計り知れない魔法の力を秘めていました。それはラニの中を確かに流れる、魔法で作り出された奴隷たちの血に強烈に働きかけます。あ、と呻いた次の瞬間、ラニはモラクス帝の前に跪いて敬虔に首を垂れていました。
がたがたと震えるラニのうなじに、モラクス帝の佩剣が当てられます。
「皇帝たる我は、無数に生み出され、働き、消費され、殺されるのみの貴様らに使命を与えている。貴様に許された言葉はただ一つ。それを口にしてみよ」
「皇帝陛下の、寛容なるお心と深きお慈悲に心より感恩申し上げます……」
喉はひどくこわばり、震えているのに、震えてさえいない声が滑らかに流れだしてきます。ラニは圧倒的な力の差に、かろうじて残っていた魂の力が消え失せ、この世界の人々が日常的に用いる奇跡の力すら遠く離れていくのを感じました。
アッパーハンド:ラニ
ESSENCEが0になったラニは、魔法が使えなくなっています。現時点ではそれだけで、死んだり、動けなくなることはありません。
アクション:自分を取り戻し、モラクス帝に立ち向かう
ダイスロール:4(MISS)
こののまま議論を止めたら、本当に洗脳され隷属させられるかもしれません。ラニは必死に言葉を絞り出そうとしますが、喉がからからに乾き、言葉らしい言葉は出てきません。
アッパーハンド:モラクス帝
アクションタイプ:7→アグレッシブ
アグレッシブアクション:9→有害な真実を明らかにする
リソース:RESOLVE3→2
「かつて貴様らは、【従僕(サーバント)】と呼ばれていた。獣の肉と魔法薬を用いて培養する人造生物。40日で子供相応の肉体を備え、試験管から取り上げられる」
剣を押しあてたまま、モラクス帝は淡々と続けます。
「その肉体も魂も、我ら帝国の血族に奉仕するために作られている。今、この我が貴様を一言労えば、その惨めな短き生で感じたこともないほどの安堵と快楽を感じ、涙して我の足に口づけるだろう」
それは、自分の精神が自分のものではなくなっていく恐怖でした。モラクス帝の言うことは間違いなく真実であることを、ラニは本能で悟っていました。自分が、そしてそれに連なる全ての人々が間違いなくこの目の前の帝の奴隷であり、今すぐにでも随喜の涙を流して仕えようとしていることを、今やラニはよく知っていました。
生きるための意思の力が、削られていきます。
「い、イヤだ……そんなの」
蚊の鳴くような声で、ラニは呻きました。
アッパーハンド:ラニ
アクション:心を強く持ち直し、平然とした態度を見せる
ダイスロール:3(MISS)
ラニは頭を上げることができません。
アッパーハンド:モラクス帝
アクションタイプ:6→アグレッシブ
アグレッシブアクション:7→力強く主張する
リソース:RESOLVE2→1
「そなたらは全て我の所有物である。帝国に隷属しその命を捨てるものである。ゆえに、我は当然にそなたに命じるのだ」
モラクス帝は傲然と続けます。
「帝国の先駆けとして、〈星の黒鉄〉をその身に帯び、魔の到来を阻止せよ。そのためにすべてを擲ち、機があらば迷わず死ね」
ラニはか細いうめき声を漏らしました。
アッパーハンド:ラニ
アクション:心を強く持ち、支配を跳ねのける
ダイスロール:10(HIT!)
エンデュランス:1→0
エンデュランスが0になったので、チャレンジが成功します。
ラニの手が〈隕鉄の短刀〉の柄に触れます。その時不意に頭の中の靄が晴れ、普段の思考が戻ってきました。
モラクス帝がラニに作成を命じたそれは、栄華を極めた旧王国の人々ですら決して手が届かない、至高のアーティファクトです。ラニはそれに触れることで、モラクス帝の絶対の支配に対抗する端緒を得ることができました。
ラニはきっ、と頭を振り立て、見上げます。服従の姿勢を見せていたラニに睨まれるのは完全に予想外のことだったようで、モラクス帝はわずかに動揺を滲ませました。
「私の先祖があなたの従僕だったとしたら……こんなことを言ってしまうのはかわいそうだって思わなくもないけど」
モラクス帝が眉間にしわを寄せ、無言のうちに続きを促します。ラニは立ち上がり、勝気に肩をそびやかしました。
「それはもう逆転してしまった。そういうことになるよね」
「バカなことを」
「あなたは私にお願いする立場。私には力がある。そういうことでしょう」
ラニは人差し指を突きつけます。
「私は人を助けられるなら、助けたい。戦う覚悟はある。私の力が役に立つなら、何だってやる。でも、奴隷にされるのは嫌だし、何のために戦っているのか教えられないのも嫌だよ」
「……」
緊張に満ちた沈黙の後、モラクス帝はゆっくりと嘆息しました。
「なるほど……そなたを従えることは出来ぬ。そういうことのようだな」
モラクス帝はラニの態度に、彼女を卑しい魔法生物の従僕の末裔として扱うのを諦めたようです。ラニの力を認め、使命を授けるなら、必要な情報も渡してくれるでしょう。
次回はモラクス帝とラニの対話、そしてリソースの回復を行うことになります。
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