【プレイログ】私は×××【塔と少女】

プレイログ

私はサーシャ

私はサーシャ。今から一人で、森へ行く。私の中の何かが、「塔へ行け」と急き立てるからだ。
あの塔に何があるんだろう。どうして塔へ行きたいんだろう。私の中にいるのは、何なんだろう?
幼い頃から考えて、考えて、考えて、考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて……それでも答えは出なかった。だから私は、塔へ行く。
畑仕事に精を出す両親の目を盗み、、私はランプだけを持って家を出た。塔は遠い。帰る頃には、夜になっているかもしれない。

「これしかないのに、勝手に持って行ってごめんね。帰ったら、たくさん謝るから……許して」

聞こえやしないのに、遠くで畑仕事をする二人に謝って、それから背を向ける。
森へ行かなくちゃ。塔へ行かなくちゃ。早く、早く、行かなくちゃ……。

進行度0→1

見られている……気がする。森に足を踏み入れた瞬間から、視線を感じた。
人がいるような気配はない。辛うじて、遠くでフクロウの鳴く声が聞こえるくらい。
一体誰が、何が、私を見ているんだろう?
すぐそこで、美味しそうな木の実を見つけられてよかった。そうでなきゃ、今頃不安で家に取って返してる。
ランプの油はまだまだある。さあ、行こう。

進行度1→4

獣道を見つけた。けれどその入り口に、妙なものが落ちていた。
獣の骨を組み合わせた、禍々しい雰囲気を放つ道具だった。まじない師のおばあさんが、似たような道具を持っていた気がする。これは何だったっけ。何かを封じ込めておくものだっけ。それとも、正反対のもの?
何だか気味が悪い。この道は、選ばないでおこう。

進行度4→9

木々の向こうに塔は見えてる。けれど、遠い。
急がなきゃ。早く、塔にたどり着かなくちゃ。
気持ちばかりが急く。ランプを抱きしめ、私は駆け出した。
駆け出した途端、何かを踏み砕いた。足がよろめき、どたりと転ぶ。
踏み砕いたのは、乾いた木の実の殻だった。
こんなものに足を取られるほど、私の今の体は脆弱だ。
まだ、早いだろうか。塔へ行くのは早かっただろうか。今ならばまだ、ただの子供として引き返せる。
……いや、行こう。私は行くのだ、あの塔へ。

進行度9→6

何ということか。いつの間にか私は塔に背を向けていた。この体は、まだあの村に未練があるのだろうか?
踵を返し塔へ向かおうとする私の前を、栗鼠が駆け抜けた。
キキッと甲高い声は私を馬鹿にしているようで、ひどく不快だった。

進行度6→10

ああ! 腹立たしい!
倒木が私の行く手を阻んでいる。そんなに私を塔へやりたくないというのか、あのババアめ。
苛立ちのあまり地団駄を踏むと、ぱきん、と乾いた音がした。何かを踏んだようだ。胡桃の殻でも落ちていたか。
足を上げる。踏み壊したのは、獣道で見た骨の呪具だった。ああまたこれか、と熱されていた頭が冷えていく。よくもまあ、これほど私の邪魔をしてくれたものだ。

「今となっては、こんなもの意味がないな」

ババアが仕掛けた呪い道具を、思い切り蹴飛ばす。骨の呪具は、塵となって風に消えた。

進行度10→11

たった一輪で咲いた赤い花が、私を見て喜びを表すように輝く。ああ、懐かしい。随分待たせてしまったな。
花の蜜を狙い寄ってくる虫を払いながら、赤い花弁を撫でてやる。花は恥じらうように茎を捩らせ、葉を震わせ笑った。愛い奴め。
いよいよ塔も目の前だ。さあ、あと少し。あと少しで私は――。

私は魔女

あの頃と何一つ変わりない塔が、主たる私を迎え入れた。重たげな音を響かせ、ドアが開く。当然のように私は塔の中へ入った。
中も、あの頃と変わらない。変わった点があるといえば、少々埃っぽくなった程度だ。このくらい、指の一振りで済む。

「……む。そうだったな。この体はまだ、“私”ではなかったな」

私の中で、私と異なる少女が「帰りたい」「帰して」「返して」と泣き喚く。
今更泣いたとて遅い。もうこの体は私のものだ。この森に足を踏み入れた時点で、お前は私に体を寄越す運命だったのだ。

「さて、さて、さて……小娘を私に統合する魔法は、どこに記しておいたかな」

埃を被った本棚から、目的の本を探す。本当は、どこにあるかしっかと覚えている。だが私の中の少女に、希望と絶望を味わわせてやりたかった。十数年この体に閉じ込められていた鬱憤を数分で済ませてやるのだから、感謝の一つもしてほしいものだ。

「ああ、楽しみだ。力が戻ったら、私が私に戻ったならば、あの村をどうしてやろうか」

「やめてよぅ」と赤子のように泣く少女の訴えは、魔女たる私の耳には、ひどく心地の良い音楽だった。

コメント

タイトルとURLをコピーしました