生きて死ぬだけ、それがリアル。 A dirge without music プレイログ

プレイログ

ゲームを始める前に

国内のTRPGプレイヤー間でしばしば起きる議論として、「リアリティ」に関わるものがあります。

2020年の夏、どうやら海外でも同じような議論が行われていたのでしょう。
itchで一つのゲームジャム(ゲーム制作者の企画のようなものだと思ってください)が催されます。
そのタイトルは「Fantasy Realism Jam」。主催者はSealed Library。ソロジャーナル用SRD「Wretched & Alone SRD」を制作したパブリッシャーです。

It’s come to our attention that some assholes out there are really devoted to ‘realism’ and a real shortage of stuff on the market for them play with. Poor little wubwubs.
たまにいるファンタジーにリアリティを求めるアホども。あいつらってマジで遊べるゲームないよね。かわいそ。(意訳)

「ファンタジーにリアリティを強要する層は遊べるゲームなんかないだろうから、そいつらが遊べるゲームを作ってやるよ」、という挑発的でおそらく皮肉を含んだコンセプトを持つイベントとして、Fantasy Realism Jamは開催されたようです。
嫌がらせを危惧する作者の作品は代理公開も受け付けていたということで、大分激しい議論が背景にあるのがうかがえます。

A dirge without music」は、このFantasy Realism Jamに投稿されたゲームです。マルチプレイヤー対応ですが、一人でも遊べます。
これは、ファンタジー世界の村のありふれた村人になって人生を送るゲームです。危険で、栄養状態も悪く、何もかもが不安定なファンタジー世界の農村で、村人はただ生活しているだけで実にあっさりと死にます。そして、ファンタジー世界の住民の大部分は、こうした一般的な村人のはずです……リアルなら。

タイトルはアメリカの詩人エドナ・ミレイの同名の詩から取ったものと思われます。直訳すると「音楽なき挽歌」。誰にでも訪れる死、それによる喪失、そしてそれに抗い続ける魂を謳っています。

ジャーナル

ジャーナルの開始

まず、主人公である村人の年齢を決めます。

村人の年齢:16+3/19歳

また、この村人は家族と家を持っています。

家族の数:2人

この二人は、歳をとった父と母ということにしましょう。
村人の名前はジェシー。働き者の女性です。

これから1ターンごとに1年が進んでいき、ジェシーはひとつずつ歳をとります。30歳まで生き延びれば、平和な人生を送れたということになります。

19歳

年鑑イベント:4…野生動物に襲われる。1d6を振り、1が出たら村人は死亡する。

1d6…4

村人イベント:8…過酷な労働に明け暮れて一年を終える。

村は獣に襲われ、多くの犠牲者が出ました。ジェシーは獣に襲われることはありませんでしたが、その無惨な現場はまざまざと目に焼き付けられました。
恐ろしい獣が出没していても、日々の仕事は待ってはくれません。ジェシーは鍬をかついで、今日も畑を耕します。

20歳

年鑑イベント:9…死と税金。家族が1人いなくなるか、家を破壊される。

年老いた父が徴兵に駆り出され、戦地で栄養失調になり死にました。

村人イベント:8…過酷な労働に明け暮れて一年を終える。

母はめっきり口数が少なくなり、遠くを見るような目をすることが多くなりました。村の豊かな土を耕しながら、ジェシーも考え込むことが増えました。

21歳

年鑑イベント:8…この年は平穏で、作物は育ち、牧歌的な至福の時を邪魔するものは何もない。

実りの秋を待てるなら、自分が不幸なことなんかないと思う。

村人イベント:4…凄まじい飢え。1d6を振って1が出た場合、家族を食べるか、死亡する。

1d6…5

実りはほとんど税金に取られました。家には食べるものがほとんどない時期もありました。しかし、最悪の事態は免れたようです。

22歳

年鑑イベント:9…死と税金。家族が1人いなくなるか、家を破壊される。

母は歳をとって耄碌したのか、かつて父を連れて行った役人に立てつき、呪いの言葉を喚き散らして、その場で槍で突き殺されてしまいました。
家にいるのは、ジェシー一人になりました。

村人イベント:4…凄まじい飢え。1d6を振って1が出た場合、家族を食べるか、死亡する。

1d6…1

そして、その孤独な家で死体となっているジェシーを、役人が見つけました。だまし取られて畑を失ったジェシーはしばらく野草で食いつないでいましたが、ついに体が動かなくなり、餓死したのです。

Down, down, down into the darkness of the grave
Gently they go, the beautiful, the tender, the kind;
Quietly they go, the intelligent, the witty, the brave.
I know.  But I do not approve.  And I am not resigned.

ジャーナルを終えて

なんか、プロレタリア文学みたいなゲームですね…
複数人プレイが可能なゲームなんですが、することは変わりません。「年鑑イベント」がそのターンの全員に適用されて、「村人イベント」は各自で振ります。別に助け合ったり、手を結んで何かに立ち向かったりはしません。

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